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いま吹き替えの声優さんに求められていること。

先日告知したZOOMでの演技の個人レッスン、お陰さまで大盛況です。
今この自宅待機の状況下で、やはりみなさん芝居したいんですよねー。わかるわ。

今年に入ってからボクが外国映画の日本語吹き替えのディレクションをやるようになった関係で、レッスンの参加者に声優さんが増えてきました。
声優さんってアニメ好きの若い人が多いのかなとか思ってたんですが(偏見!w)、いやいや、年齢層も経歴もバラエティに富んでいて、人間的に面白い方が多いんですねー。クリエイティブに対する貪欲さ・新しいノウハウを吸収しようとする積極性はもしかしたら俳優さんよりパワフルかも。

そんな声優さんたちを演出したりレッスンをしていてボクが驚いたことが一つあります。
声優としての技術の習得にはもちろん余念がない声優さんたちなのですが、意外にも彼らが「画面上の外国の俳優さんたちがやっている演技」についてよく知らない、という点です。

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ボクは外画吹き替えの声優さんって、俳優さん以上に「世界の最先端の演技法」について知っている必要があると思っています。
理由は単純明快・・・それは今年とか去年とかの最新の外国映画の「世界の最先端の演技法」で演じられている人物に声をあてるのが、彼ら声優の主な仕事だからです。

最新の外国映画の画面上にいる俳優さんたちは、だいたい最新の演技法をつかって役を演じています。ボクが「2010年代の演技」とか「コミュニケーション演技」と呼んでいる演技法です。
画面上の俳優さんと息を合わせて、意識を合わせて演じることが声優さんの仕事の重要なポイントであるのならば、画面上の俳優さんが「なにを、どのように表現しようとしているのか」そして「どのような方法でそれをやっているのか」を知っておいて、声優さんも同じアプローチで声をつけたほうが、全然画面上の人物とのシンクロ率が上がります。

なので最近の画面上の俳優がもはや、単純に「キャラ」を演じようとしていたり、単純に「定番の感情表現」を演じようとしたりしていないことを、声優さんたちは知る必要があると思います。
つまり最新の映画の人物に声をあてるときに、「キャラを演じる」だけでは、「定番の感情表現を演じる」だけでは、人物が薄っぺらく見えてしまうんです。

ボクがこれを言うと声優さんたちはビックリしたような顔をします。なぜなら彼らは「キャラを演じる」「定番の感情を演じる」ことを重要だ!と声優養成所などで教わってきたからです。

そうなんです。たしかに60〜70年代は「感情を演じる」ことこそが重要でしたし、80〜90年代は「キャラを演じる」ことが映画の演技の世界においても最重要なことでした。

でも洋画に詳しい方ならわかると思うのですが、2000年前後からその辺りの事情は変わってきて、今は2020年。外面上の俳優さんたちが演じているのはもはや「感情」でも「キャラ」でもなく、もっと有機的で複雑な「人と人がどうコミュニケーションするか」という人間模様なのです。

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最新の映画・・・例えば去年の『アベンジャーズ/エンドゲーム』みたいなキャラクター全開!に見える映画でも、俳優たちが実際に演じているのは単純にキャラでも、感情でもありません。彼らが必死になって演じているのは「人間模様」です。

人と人がどのようにコミュニケーションして、どのようにお互いに心を動かし合うのか、どのように感情の落とし所を探してゆくのか・・・に観客はドキドキしているわけです。

昔のヒーロー物みたいにワイルドな奴は映画の最初から最後までワイルドだったり、キザな奴が映画の最初から最後までキザだったり、セクシーな奴が映画の最初から最後までセクシーだったり・・・そんなことに『アベンジャーズ/エンドゲーム』はなっていませんよね。どの人物も大きく揺れ動いています。そこにはむしろ演技の一貫性は希薄で、状況や相手によって大きく反応や行動が変わるような芝居をしています。それが「今」の演技法です。
つまり昔の「キャラを決めて、それを演じる」みたいな演技法では演じていないのです。であれば声優さんももう昔の「キャラを決めて、それを演じる」みたいな方法で声を出してはいけないですよね。

養成所で教えてもらえるのは古い技術ばかりです。
もちろん最先端で活躍している声優の方々は画面上の最新の演技にマッチした喋りをなさっているのですが、でもそれはその声優さんたちが独自に気づいて、研究して、磨いていってるようです。

つまり声優の世界では「新人声優さんが古い喋りをしていて、ベテランの声優さんの方が最新の喋りをマスターしている」という逆転現象が起きているように見えるのですよねー。

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外国映画で「いかにも日本語吹き替え」という独特の感じで声優さんが声をあてている時ってよくあるじゃないですか。 あれって80年代の映画にあてる分にはバッチリなんですが、2010年代の映画にはマッチしないことがよくあります。いや、マッチしないどころかむしろ作品を台無しにしてしまっている時があったりします。

・・・と、この件についても描こうと思ったんですが、字数がつきたので、また次回☆ あ、なるべく早く書きます(笑)
あ、気になる方はトム・クルーズ主演の『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』という映画を次回のブログを読む前に観ておいてもらえると、より楽しめるかと思いますw。
それでは!また次回!続編でお会いしましょう!

小林でび <でびノート☆彡>

追伸:
ZOOMでの演技の個人レッスン、5月31日まで期間延長しました。
声優さん・俳優さん、この機会にぜひ。
       詳細コチラ ↓

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