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分類その7「冒険小説」

戦後の日本で、まだ推理小説というジャンルが未分化だった頃、これらの読み物を「冒険小説」と言ったりもした。
実際、小栗虫太郎「人外魔境」のようなインディ・ジョーンズばりの探検隊ものを書いていたりするので、それらと混同される事も多いのである。ここでいう「冒険小説」はもっと広義である。
小栗作品は「新伝奇小説」などと呼ばれた事もあるが、所謂「伝奇小説」というジャンルは、古くは中国の怪談の類であり、現代で言うとファンタジー小説にあたるだろう。
戦後の日本に於いて「伝奇小説」と言うと角田喜久雄を想起するが、名探偵もの海洋冒険ものも書いていたりして、様々な作風が見られる。つまりこれはこの時世に外国文学が傾れ込んで来た影響も多大にあると考えられる。系譜で言えば、半村良氏から山田正紀氏に至る「伝奇ロマン」という括りを「冒険小説」と呼ぶ事が一般的だろう。

では私がこの「ミステリ分類考」で指し示す「冒険小説」とは一体何かというと、有体に言えば、「分類不能な推理小説」の事である(笑)。
例えばポオの「黄金虫」を暗号小説と呼ぶ事もあるが、同時にトレジャーハンターものであるとも言えるのであって、冒険小説である。
当然、わかりやすい冒険や探検が存在しなくても、「机上の冒険」というものも存在するわけであって、そうなると範囲は滅茶苦茶に広くなる。
では果たして、村上春樹氏の「羊をめぐる冒険」は冒険小説であるか否かという話になるが、これは違う。
はじめに断った筈だ。分類不能な「推理小説」と。余談になるが、私は特に好きでもないのに村上春樹氏の作品を数冊読む機会があり、勝手に「やおい小説」に分類している。BLという意味ではない。元来「やおい」は「山がない」「オチがない」「意味がない」の略である。
村上春樹氏のファンの方、ごめんなさい。純文学を理解できず推理小説しか読めない情緒未発達なアスペ?サイコパス?の言葉としてご海容いただきたい。

推理小説ならどんなものでも「冒険小説」と言えるが、本格でもサスペンスでもないものに限られる。なぜなら、超常現象や未来世界など、SFやファンタジーの領域に入って行くと、それは最早推理小説ではない。フェアなスポーツまで言うと行き過ぎだが、推理小説は読者に思考の枠組みとして安定的な世界観を提供するべきであり、何でもアリになってはいけない。
ひとつ何かをとり上げようとして、何でも構わない事に気づいたのだが、本格推理小説と間違えて買ったこの作品を上げておく。


2023.3.22


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