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『ゲームはラブレター』:【ゲームデザイン】をモデル化してみた

どうも、浮雲です。

ここしばらく、ゲームデザイナー/プランナー志望の方の企画書を見る機会が増えたのですが。
その中で、多くの人が苦労してそうだなぁと感じるのは主にこの2点です。

①コンセプト
②ターゲットユーザー

【ターゲットユーザー】については、個人的にもそれまでユーザーだったのにいきなり「売る側の視点で考えろ」というのがそもそもハードル高いと感じるので、無理もないかなと。

とはいえこれは「どこから企画のタネを見つけてくるか」によって解決できる部分でもあると考えています。
その一つの手段としての【マーケットイン】というアプローチについては、前回のnoteにまとめてみたので良ければご一読ください。

そこで今回は、同じく苦労する方が多い【コンセプト】についてかみ砕こうと……したんですが。

わかったようでわからない【コンセプト】という概念を、学生さんたちにも理解しやすいように「もうちょっと身近なモチーフでモデル化してみよう」といろいろ整理してたんですが。
それよりも先に、【コンセプト】を含めた【ゲームデザイン】の全体像をモデル化したほうが良さそうだと方針転換しました。

そこで今回は、私が企画を考える際に心がけている『企画書はラブレター』というコピーを軸に、【ゲームデザイン】ついてモデル化しつつ、私が普段どういう意識で取り組んでいるかを話していきたいと思います。

※そもそも今どき【ラブレター】て……というのは、この際スルーしてくださいね!

■この記事のターゲット
・ゲーム業界志望の学生/1~2年目の若手企画者
・ゲームデザイナー/プランナーの仕事の全体像を把握したい方
・企画を考える際のアプローチの仕方に悩んでいる方

『企画書はラブレター』

ところで、私が大切にしている『企画書はラブレター』というコピーですが、元テレ東プロデューサーである佐久間宣行さんのラジオ番組でのコーナータイトルにもなってるので、耳にしたことのある方もいらっしゃるかと思います。

私自身の記憶では、たしか放送作家・プロデューサーのおちまさとさんが言っていたのを聞いたのが、初めてだった覚えがあります。
そしてそのときに「たしかにその通りだ!」と強く感じたことで、私にとって企画を考える際のひとつの指針になりました。

なお、有名なコピーライターである眞木準さんも『広告はラブレター』という意識を持たれていたのを知り、より深く自分の中に刻み込まれました。
眞木準さんの『ひとつ上のアイディア。』『ひとつ上のプレゼン。』は事例が多くとても勉強になる良い本でした。また、『広告はラブレター』については以下のblogが当時の熱量も感じられてなかなか面白いのかったので、興味持った方はこちらもぜひ。

ではなぜ私が、『企画書はラブレター』というコピーにそこまで深く共感したのか?

それは【ラブレター】という比喩によって、

自分の気持ち(企画)】には、それを伝えたい相手がいる

・その相手に
どうすれば自分の気持ち(企画)】を伝えられるか、内容だけじゃなく、相手のこともめちゃくちゃ考える必要がある

・【自分の
気持ち(企画)】をどう表すかだけじゃなく、それを伝えるときの伝え方や、伝える際のシチュエーションもめちゃくちゃ考える

などといった、「企画を考えて、それを誰かに届けるために大切なこと」を自然と意識できるようになったからです。

そこで次に、この【ラブレター】というモチーフを使って【ゲーム制作】という仕事をイメージしやすくなるようにモデル化してみたいと思います。
名付けて、『ゲームはラブレター』モデル(そのまんまですね)。

『ゲームはラブレター』モデル

まずは、【ゲーム制作】というビジネスをシンプルにモデル化してみます。

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うん、これ以上なくシンプル。

ただ、意外と意識から抜けがちなんじゃないかと思うのが、ゲームは作って終わりなわけではなく、作ったものをユーザーに届けて遊んでもらうまでが仕事だということです。

なので、ゲームの企画を考えるときは常に「面白いゲームを作るぞ!」ではなく、「ユーザーに遊んでもらうために面白いゲームを作るぞ!」の意識でやることが大切だと考えています。

この感覚をイメージとして捉えやすくしようという試みが、今回の『ゲームはラブレター』モデルです。
そこで、先程の図から【ゲームをつくる】の部分を置き換えてみます。

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【ゲーム】で表されていた部分が、【ラブレター】と【郵便屋さん】の2つのイメージにわかれました。これはそれぞれ、以下を表しています。

①ラブレター:ターゲットユーザーにどういうゲームをつくるか
②郵便屋さん:つくったゲームをターゲットユーザーにどう届けるか

②については、個人流通を除けばゲーム開発者が直接行わない場合が大半です。ですが、ここを無視してゲームデザインすることはできないので、ゲームデザインとユーザーを繋ぐものとして独立させています。

さらに言えば、それによって繋がっているユーザーも同様に無視できないものなので、【ゲームデザイン】を行う際に考えないといけない範囲はこのようになります。

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これで、私の考える【ゲームデザイン】の範囲が視覚化できましたので、あとはそれぞれもう少しブレイクダウンしていきます。

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相手に届けるラブレター:ゲーム本体
 └封筒:プレイする前に得る情報
  └封筒の形状:コンセプト
  └封筒の外装:モチーフ
  └封筒の装飾:ウリ、フック
 └手紙:プレイすることで得る情報
  └手紙の内容:テーマ
  └手紙の書式:ゲームシステム/メカニクス
ラブレターを届ける手段:プロモーション
ラブレターを届ける相手:ターゲットユーザー

※まず最初に、誰にラブレターを渡すのかを決めるために「マーケティングリサーチ」を行う場合が多いですが、ここでは割愛

いかがでしょうか。
【ラブレター】というものに、ゲームの企画を考えるときに必要なほぼすべての要素が詰まっていることが分かってもらえたのではないかと思います。
またそれを考えるためには、【ターゲットユーザー】の存在が外せないことも視覚的に理解できたのではないでしょうか。

もし、どうしても【ラブレター=ゲーム本体】だけに目が行きがちだというひとは、試しに以下のシチュエーションをイメージしてみてください。

①誰にラブレターを渡すのか
そもそも、ラブレターを書き終えてから「さて、誰に渡そうか」と考える人はいません(いないよね?)。伝えたい相手がいるからこそ、想いを込めてラブレターを書くわけです。
ゲームも同じことで、「作ったゲームを誰かに遊んでほしい」と思うのであれば、はじめからその誰かをしっかりと定めておかないことには、できあがったものを届けようがありません。

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②どんなラブレターを書くのか
いざラブレターを書くとなったら、どういうことを考えながら書きますか?
たとえどんな見栄えの良いラブレターを書いても、それが独りよがりになっていて、受け取ってくれた相手に気持ちが伝わらないと意味がないですよね。
なので、

「どうやったら相手にこの気持ちが伝わるのか」
「どう伝えたら相手が自分に興味を持ってくれるのか」


ということを考えながら書くはずです。
これは、ゲームデザインを行う際にも忘れてはいけないことです。

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③どうやってラブレターを渡すのか?
そうやって気持ちの籠もったラブレターが書けたとしても、それで終わりではありません。
書いたラブレターを、相手に届けないと意味がないからです。
そうなると、次に考えるのは「どうやって渡せば一番気持ちが伝わるか」になります。

手渡しなのか、ポストに投函するのか。

呼び出すなら夜景のキレイなレストランがいいのか、夕陽が美しい海辺のカフェにすべきなのか。


これも、自分がどうしたいかという独りよがりに決めるのではなく「相手がどういうものを好むのか」を踏まえて決めないと、上手くいくはずもありませんよね。

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いかがでしょうか?
こんな風にイメージで掴むことができたら、ゲームの企画を考えるときに「ターゲットユーザーの設定が重要」といわれる理由も理解できるのではないでしょうか。

特に、ゲーム業界を志す学生さんにとっては、ゲームは遊ぶものであって、商品という認識を持つことは難しいと思うので、作りたいゲームは思いついたとしても、それを誰に売ればいいのかを考えるのはなかなかハードルが高いと思います。

だからこそ、冒頭でも触れたように【マーケットイン】というアプローチを用いて、あらかじめユーザーニーズのある場所を見つけて、そこに向けたゲームを企画するというのも、ひとつの効果的な手段になるわけです。

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以上、【ラブレター】というモチーフを使って、【ゲームデザイン】を(かなりざっくりと)モデル化してみました。

これが正解というよりは、自分にとって馴染みがない、うまく理解できないものであっても、身近なものに置き換えたりすることでスッと理解できるようになったりするということを感じていただければ、これに限らず様々なことを吸収するのに役立つのではと思います。

それでは、また。

※何か質問や聞いてみたいテーマがあれば、以下の質問箱からどうぞ!


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