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心の中で生き続ける人

このnoteの中で、大勢の方と繋がりがある人が亡くなったという記事を見掛け、その方と交流のある方々が悲しみのメッセージを寄せられていたのをあちこちで拝見しました。

今から一年半前にわたしも同じような出来事があったのを思い出したのでここで記事にしようと思います。


その人とは今から七年前、写真投稿サイトで知り合いました。

そこはDIYやハンドメイド作品、インテリアや庭などを投稿して交流するサイトで、わたしがSNSを始めたきっかけになったサイトでもあります。

その人はインテリアもさることながら自宅の庭がとても素敵で、たくさんのフォロワーさんがいました。

長年かけて作り上げたその庭は、シンボルツリーの見事なミモザの木があり、玄関へのカーブを描いたアプローチ沿いには季節の花が咲き乱れ、家の外壁にはつる性植物の葉が影を落とし、その様子はどの季節もわたし達をうっとりさせる風景でした。

わたしが投稿をはじめた間もない頃、その人から我が家の庭にコメントをもらい、そこから交流が始まりました。

住む地域が違うので、同じ植物を育てていても花の咲く時期に少しのずれがあったりして、その人の庭の花が咲き始めた頃我が家はまだ蕾が出初めたりと、植物を通してたくさんのやり取りをしていました。

そしてSNS一年目のわたしは、画面を通して共通の趣味で繋がっている安心感と楽しいやり取りにのめり込み、毎日の投稿でも苦にならず、すっかり暮らしの一部になっているほど没頭していました。

そんなある時、その人の庭には初夏を告げる青いアガパンサスが白いフェンスに沿って一斉に咲き、青と白のコントラストが美しい景色が玄関前に広がっていました。

わたしが思わずコメントをすると、その人は「この花、すごく増えるから株分けしてあげるよ」と言ってくれたのですが、当時の我が家の庭は他の植物で覆い尽くされ植える場所が見当たらず、泣く泣く断ったのです。

それから毎年、その青いアガパンサスが咲く季節の投稿を楽しみにして、我が家にもいつかお迎えする事を話し数年が経ちました。

その頃になると当時頻繁にコメントしあっていた人たちが少しずつ辞めていったり投稿回数が減っていき、最近見ないなー、という事が当たり前になり、少しさみしさを感じることもありました。


わたし自身も転職して労働時間が長くなり、投稿やコメントのやり取りも少なくなっていた頃のことです。

もうひとつの投稿サイト、インスタグラムの中で、初めのサイトと両方で仲良くしている海外在住の子が、ある日ストーリー上で綺麗に咲いたバラの写真に添えたメッセージに、アガパンサスの庭の彼女の名前がある事に気が付きました。

わたしは久しぶりの名前に嬉しくなってすぐさまDMを送りました。
「○○ちゃん元気にしてるかな?」
するとその子は
「○○ちゃん、あちらでも素敵なお部屋とお庭作っているよね…きっと。」

わたしはその言葉を何回も読みなおし、そして恐る恐る文字を入力しました。
「え?あちらって??まさか???」


彼女からの返信が来る画面をじっと見ながら、心の準備をしているわたしがそこには居ました。

そして届いたメッセージは…

その前の年に病に倒れ、既にこの世にはいないという事実でした。
 

数分の覚悟はしたものの、わたしは頭の中が真っ白になりしばらく何も考えられなくなりました。

会ったことは無いとはいえ、SNSで繋がっていたその四年間には数え切れないほどのやり取りで親交を深めていたのは間違いありません。

彼女の素敵な部屋には古いウエディングフォトがあり、アメリカを旅したエピソードや好きな音楽の話、可愛いお孫さんの作品や手作りのリースなど、その人柄と愛に溢れた暮らしがそこにはありました。



彼女が亡くなる前の年に、わたしがアガパンサスを欲しがっている事を知っていた実家の母が、行きつけの店で苗を買い届けてくれていました。
翌年にポットから地植えにし、一輪だけ咲いた花はまさかの白。

そういえばその彼女が、白も植えてあるはずなのに全然咲かないのよ、と他の人とのコメントにあったのを思い出しました。




現在我が家の庭は、この先を考え手の掛からないようリガーデンの真っ最中なのですが、一年半前に決めた事があります。

それは、わたしの中で彼女の存在を感じる花、アガパンサスのスペースを作ること。

彼女の庭には到底敵いませんが、いつかあのきれいなアガパンサスが咲く風景をわたしの手で作り上げようと決めたのです。

「生姜みたいに横にどんどん広がるから2~3年ごとに間引いてる」と言っていたので、少し余裕を持って今後の植栽計画を立てているところです。

そして白は弱いらしいので、今年こそ青いアガパンサスを探し、りんごの木を伐採して更地になった場所を整えたあとに植えようと、頭の中では既に準備万端です。

数年後、我が家の庭に列をなし咲くアガパンサスを遠い空から見に来てくれることを願って。


2018年の投稿画像をここに使わせてもらうよ

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