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イメージを具現化する「仮説思考力」

制作の場では、「イメージ」ということばがよく使われます。

しかし、この段階ではまだ「イメージ」は目に見えません。目に見えないものの良し悪しを判断するのは、とても難しいことです。

そこで大切なのが、「まず、イメージを具体化して見せる」こと。

制作の早い段階でイメージを具現化することは、クリエイティブの質を上げるために大きな意味があります。
今回は、イメージを最適なかたちにするために必要なことを、実体験をもとにまとめてみました。


イメージを具現化するために

①「今ある材料+仮説」で手を動かす

制作の際、最初から素材がすべて揃っていることは滅多にありません。だからといって、素材が揃うまで待つだけなのと、今ある材料をもとに仮説を立て、手を動かし始めるのとでは、クリエイティブの質に大きな差が生まれます。

早い段階でイメージを具現化すると、クライアントから、より具体的な意見をもらうことができます。服を選ぶとき、実物を見たほうが「好き」「なんか違う」と判断しやすいのと同じです。
イメージが目に見えるかたちになることで、「もっとこうしたほうがいいかも」「思っていたのと違うかも」という気づきも生まれます。そこからブラッシュアップを行うことで、最終的に、よりクライアントらしいクリエイティブをつくることができます。

また、仮説思考で手を動かすと、「このテイストにするのはこんなイラストが必要なのではないか」「こんなコンテンツが適しているのではないか」と、今後の作業を先に提案することができます。それにより、やり取りの工数を削減できるだけでなく、「このクリエイターは、いつも私たちに最適なことを考えて提案してくれる」と、クライアントからの信頼にもつながります。


②「クライアントのすべてがわかるわけではない」と念頭に置く

「相手のことは、完全にはわからない、そのことをわかったうえで、誠実に、わかろうとすること」。

クライアントと向き合うときは、この姿勢を大切にしています。

打ち合わせでわかるのは、クライアントのほんの一部分です。クライアントのことは、クライアント自身が一番よくわかっているはず。そのため「私たちはあなた方のことをすべて理解しています」と言うのは、すこしおこがましいような気がします。
かといって「わからない部分はわからない」と諦めてはいけません。私たちに伝えてくれた情報から、「私たちはあなた方をこのように解釈しました」と提示すること。それが、クライアントと誠実に向き合い、理解することだと思います。


③仮説違いを恐れない

どんなに考えて仮説を立てたとしても、「自分の解釈が違っていたらどうしよう…」と不安になるものです(私はめちゃくちゃなります)。

解釈の精度が高いに越したことはないですが、ひとまずのイメージを具体化することのゴールは、完全な解釈一致ではありません。イメージを目に見えるかたちで共有し、「どこが違っていて、どこが合っているか」をしっかり把握することです。

大切なのは、「かたちないものを具現化したことで、新たにわかることがある」という前提で、仮説を共有するのを恐れないこと。たとえその解釈が違っていたとしても、大きな前進になります。最初の仮説が違ったとしても、それをもとに新たな仮説を構築することで徐々に精度は上がっていきます。


④いろいろな知見をインプットする

とはいえ、最初に提示する仮説の精度も、できるだけ上げたいものです。
いきなり100点は出せなくても、最初に出す点数の底上げをしていくことはできます。そのためには、いろいろな視点や知見のインプットが必要です。

人は、自分の人生しか生きることができません。そして多くの場合、経験からものごとを判断してしまいます。「経験していないことは自分には理解できない」と諦めてしまうと、自分が経験した以外のことを適切に表現できなくなってしまいます。
でも、他の人生や経験を追体験することはできます。本や映画、絵画やデータなど…世界は、自分以外の人生であふれています。

自分が知らないことを追体験する姿勢を持つと、自分のなかに、自分以外のいろいろな視点が生まれます。すると、想像力の幅が広がり、より客観的に仮説を立てることができるようになります。

好きな小説や漫画を読んだり、映画やドラマを観たり、人の話を聞いたり…自分以外の人生をたくさん取り入れる時間も、仮説の精度を上げるために必要なことだと思います。

ちなみに、メンバーおすすめの芸術作品はこちら。


⑤初動を早くする

「仮説をたてる→かたちにする→共有する→フィードバックを受ける→仮説を立て直す」というサイクルを円滑にまわすには、初動が早いことが大切です。
仮説は常に検証と修正が求められます。そのため、初動が早ければ早いほど、PDCAを正確に回し、予算とスケジュール内にしっかり最適解にたどり着くことができます。

方向性のすりあわせに時間を取りすぎると、肝心なデザインやコンテンツづくり、実装に十分な時間を割けなくなってしまいます。「あれやこれや考えてばかりで手が動かない」よりも、「考えながら、手を動かしてみる」。初動の早さを意識することで、制作物の最終クオリティは上がっていきます。


⑥かたちにできる技術力

イメージを具現化するには、そのための技術力が必要です。具現化したいと思っても、技術力がなければイメージの域を出ません。手段は、デザインだったり、コピーだったり、実画面だったり…場合に応じて、さまざま選択肢が考えられます。

私は職種柄、イメージをことばで見せることが多いです。ヒアリングと事前調査から解釈したクライアントの姿を、いくつかのキャッチコピーで表したり、資料としてまとめて提示したり。実際にことばで見せることで、クライアントの「これは合ってる」「これは違う」という判断をできるだけ容易にし、言語化のサポートができると考えています。

また、コンテンツをつくる際も、一旦「たたきとなる文章」をつくってクライアントに共有するようにしています。突然、「こんなコンテンツをつくって」と言われても、例が何もないと完成形のイメージが沸かず、クライアントに負荷をかけてしまう可能性があるからです。
実際のコンテンツ完成イメージを見せることで、クライアントの心理的・物理的負担を減らしつつ、よりよいコンテンツをつくるお手伝いをしたいと思っています。

しかし、ことばだけでは伝わらない領域は、デザインや実画面で見せたほうがよく伝わります。デザイナーがつくったデザインや、エンジニアが実装した画面を見て初めて、気づけることがたくさんあります。

具現化するために必要な技術力を、日々磨くことが大切です。


本当に「クライアントに寄り添う」ということ

イメージの具現化には、絶対的な正解がありません。
イメージをかたちにするために大切なのは、ただ受け身になるだけではなく「どうすればクライアントにとっていいものができるか」を、能動的に考える姿勢です。それが、本当に「クライアントに寄り添う」ことなのではないかと思います。

「クライアントらしさ」を表現できる最適解を、提案できる存在でありたい。そのためにどうするべきかを考えながら、今日も、制作に励んでいます。



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