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「求められるディレクター」に必要な人間力

「ディレクターに必要な力とは何だろう」
ふと、最近考えました。

そもそも、ディレクション力とは何でしょうか。
英語の”direct”には、「指示する、指導する、監督する、管理する」などの意味があります。しかし、ディレクション力とは単に、統率力や指導力を指すものではありません。
ディレクターの仕事は、案件に関わる「人、時間、お金」を、みんなにとって一番いいかたちにコントロールすること。そのためには、統率力や指導力以外にも、洞察力、コミュニケーション能力、交渉力…など、いろいろな能力が必要になります。

ディレクション力というのは、幅広い能力によって形成されるもの。つまり、人間力であると思います。

エルは分業制ではなく、デザイナーもエンジニアもライターも、案件によってはディレクターの役割を担います。日々の仕事のなかで、ディレクション力の大切さを感じたり、先輩の背中から学んだりすることが多々あります。

かたちとして目に見えづらいけれど、とても大切な「ディレクション力」。
今回はエルで働いていて感じる、ディレクターに必要な「人間力」について書こうと思います。


目配り

ディレクターは、「全体に目を配る」ことが大切です。

案件がスタートする際は、予算やスケジュールなど、制作の前段階の認識を、クライアントとしっかり合わせます。クライアントによって、時間とお金をかけてもいいからじっくり作り込みたい場合も、限られた予算内でつくってほしい場合もあります。
そんな要望のひとつひとつを丁寧に聞き、予算的にも期間的にも、一番いい方法で進めていけるよう道筋を決める。理想と現実をしっかり見極めて、どんな方法であれば理想が現実的に叶うかを考える。案件にかかわる人、時間、お金、そのすべてのバランスを、互いに納得できるかたちに着地させることが大切です。

案件をスムーズに進めていくには、適切な進行管理が必要です。作業は順調に進んでいるか。予定までに間に合いそうか。クライアントと制作側、双方の認識は合っているか。そういった確認が丁寧だと、作業の進捗を常にみんなが把握している状態になります。その結果、「納期ギリギリになって間に合わない」などのリスクを減らすことができます。

案件を進める過程で、クライアントやメンバーの状況が変わることもあります。そんなときも、案件全体の優先順位は何かを考え、臨機応変な判断をすることが求められます。
人の時間も予算も、無限ではありません。制約のなかで、「いいものをつくりたい」という思いを叶えられるよう、現状を客観的に見て指示を出すのは、とても難易度の高いことです。だからこそそれができるディレクターは、みんなに求められる存在になれるのだと思います。


気配り

誰かから言われるのではなく、今自分がすべきことを考え、自分から気づいて行動すること。そんな「気配り」の姿勢も、ディレクターには必要です。

気配りは、いろんな場面で求められます。たとえば、制作物にフィードバックをするとき。
エルのディレクターは、フィードバックが丁寧です。細かいところまでチェックし、「どういう意図なのか」をしっかり確認してくれます。それだけではなく、「言い方」にも気配りの姿勢が見られます。

「こうしたほうがいいかもしれないね」
「自分はこう思ったんだけど、どう思う?」

と、断言ではない言い方をしてくれることが多いです。つまり、考える余白を残すフィードバック。このようにフィードバックしてもらえると、制作者は、もう一歩踏み込んで考えることができます。それが、よりいいアウトプットを生み出すことにつながっていきます。

デザインには、絶対的な正解がありません。しかし、「最適解」を見つけることはできます。
「断言や指示だけのフィードバック」ではなく、「いいアウトプットを引き出すためのフィードバック」ができるのは、「制作側はどんなアウトプットを求めているか」を考えているからです。そこには、「この人ならもっとブラッシュアップできる」という信頼も含まれています。そのことは制作者にも伝わるため、いいものをつくりたいという気持ちにエンジンがかかります。

チームだけでなく、クライアントへの気配りも大切です。クライアントは案件全体を通して、作業が今どこまで進んでいるか、自分たちはいつまでに何を用意すればいいかなど、気になることが多いはず。
だからこそディレクターが、適宜進捗を報告したり、必要な素材をまとめて依頼したり、ミーティングの場を設けたりすることで、不安を軽減することができます。現状がわかることは、クライアントにとっての安心につながります。

今、自分は何をすべきか。そんな「気配り」の姿勢を持つことで、案件に関わる全員にとっていいことが生まれます。


心配り

相手の立場になって、相手を想い、助けたり配慮したりする姿勢。そんな「心配り」の精神も、ディレクターには大切です。進行がスムーズになるだけではなく、チームの雰囲気がとてもよくなります。

今困っていることはないか、互いの意思疎通はしっかりできているか。そういう細やかな配慮をしてもらえることは、案件に関わる人にとってとてもありがたいものです。「困っているけれど言えなくて、後々になって困る」という状況をなくすことができます。
私が入社したばかりだったとき、ディレクターが「困っていることがあったら気軽に言って」という空気をつくってくれていました。それが、初めてのことだらけの自分にとってとてもありがたかったことを覚えています。空気は見えないけれど、「伝わる」ものなのだなと感じました。

心配りは、チーム全体に伝わります。すると、みんなが「自分の作業だけではなく、全体のスケジュールもしっかり意識しよう」と思えるようになります。たとえばデザイナーだったら、いつまでにどれくらい形になっていれば、コーダーに負荷をかけずにいられるかを考えたり。他のメンバーの状況を見て、スケジュールを調整したり。「自分一人で作っているわけではなく、チームで作っている」という意識を全員が持っているのが、「いいチーム」です。

心配りは、近くの人から近くの人へ伝わっていきます。ディレクターの心配りが、全体のパフォーマンスを上げていくことにつながるのです。


ディレクション力向上雑談会

エルでは毎週金曜日に、「ディレクション力向上雑談会」という取り組みを行っています。
ディレクターに必要な「人間力」を高めるために、自分でテーマを取り上げ、「今の自分には何が足りないか」「これからどうしていくべきか」を考える。そんな機会をつくることが目的です。

メンバーが週替りで一つテーマを挙げ、自分なりの結論や具体例、提言などを用意し、他のメンバーに共有します。そのテーマについて、みんなで雑談しながら意見交換。その過程で解決策が見いだせたら、実践に移していく、という流れです。

最近挙がったテーマ
・「褒めて伸ばす」を考える
・継続できる勉強会の開催方法
・エルのグッズをつくるアイデアブレスト
・社内プロジェクトの進め方
etc…

毎朝行っている一日一力は、日々のなかで気づいたネタやナレッジ共有の場。それに対してこの雑談会は、自分が行っていることや抱えている課題、やってみたいことを、「チームとしてどう生かしていけるか、実践できるか」という視点で、よりじっくり考える時間です。

「こんなことをやってみたいけど、そのためには誰の、どんな協力が必要なのか」
「時間と予算はどれくらい用意できるか」
「それをすることで、みんなにとってどんな利益があるのか」

課題を見つけ、どうするべきかを考え、具体的な施策に落とし込む。そのためにはどれくらいの時間とお金がかかって、誰のどんな力が必要かを考える。常に、その視点で考える習慣をつけることが大切です。そうすることで、ディレクターに必要な、人、時間、お金をコントロールする能力が、自然と身についていきます。


求められるディレクター

「いいディレクター」とはどんな人物か、それを定義するのはとても難しいことです。関わる人や案件の種類によって、求められているディレクター像も異なります。「これをやれば立派なディレクターになれる」という正解もありません。

しかし、「いいディレクター」がいると、チームのパフォーマンスが格段に上がります。

冒頭で、ディレクターに必要なのは「人間力」であると述べました。「人間力」とは、「人間力をつけるぞ」と一朝一夕で身につけるものではなく、日々の積み重ねのなかで、少しずつ身につけていくものなのかもしれません。
今自分はみんなのために何をすべきかを、常に率先して考えること。その意識があれば、自ずと「目配り」「気配り」「心配り」ができるようになり、必然的に「人間力」が高まっていくのではないでしょうか。そしてそんなディレクターはきっと、みんなから求められる存在になるのではないでしょうか。

今日も、メンバーの背中を見ながら学ぶ日々です。がんばります。

デザインスタジオ・エルは「超えるをつくる」を合言葉に「らしさ」をデザインするWeb制作会社です。

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