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内集団と外集団(身内びいきの習性)行動経済学とデザイン:31

誰もが世界は平和であってほしいのと思うのに、争いが絶えない世の中。それは内集団と外集団の習性が強く起因していそうです。

しらずしらず

しらずしらず
レナード・ムロディナウ(著)、水谷淳(訳)
ダイヤモンド社 2013.12

この本の第8章が今回のテーマに該当します「なぜマックユーザーとウィンドウズユーザーは互いにいがみ合うのか?」です。

あなたはどっち派ですか?...おそらく割とすぐに答えは出たはずです。そして自分とは違う派の欠点を瞬時にたくさん思い描くでしょう。自分はフラットな立場だという人、そんな多くないはずです。

すぐに敵をつくる

1961年に、今では倫理上問題がある実験が行われました。少年グループを2つに分けると相手グループを攻撃し合う行動に出ることを観察できた、という実験です。

サマーキャンプを舞台に、はじめは相手のチームを知らせず、自チーム内で旗をつくったり規範を持つなど取り組んでいました。その後、相手チームの存在に知り競技をすることになります。すると、負けたチームが相手の旗を下ろして火をつけ、それに気づいた相手チームが喧嘩を始めたり、ロッジをおそったりなど、争いがエスカレートする結果となりました。

内集団と外集団01

これはひどいな、と思ったかもしれません。でも、自分自身を振り返ってみても、小学校のクラス別、部活での他校との試合、会社の中での別部門との関わりなど、少なからず思い当たるフシがあります。

こういったことが起こる背景は、大昔の食料や水など資源を奪い合い生き延びてきたことが起因とされています。こういった状況から、複数の人が交わると

自分たち VS 彼ら

の構図が出来上がってしまうということです。

人は無意識にカテゴリする

対立する『自分たち vs 彼ら』を科学者はこのように言います。

・内集団:自分が属していると感じるグループ
・外集団:自分が含まれていないグループ

外か内の分け方についても興味深い実験結果があります。アメリカでは数学に対して下のように思う人が多いようです。(偏見だと思うけど)

・アジア人は数学が得意
・女性は数学が苦手

そこで、両方を満たすアジア系アメリカ人女性に算数のテストを受けさせましたが、テストの前にアンケートを配りました。その内容は、片方のグループはアジアのルーツを意識させるもの、もう片方は女性を意識させるものでした。するとテストの結果は、

・アジアを強く意識したグループ:成績がよかった
・女性を強く意識したグループ:成績がよくなかった

となったそうです。この結果が意味するのは2つ。1つは自分が無意識のうちに内集団の所属を自覚すること、2つ目はそう思い込むことで能力にも影響を及ぼすことです。

内集団と外集団02

・・・・・

では、ここから内集団と外集団それぞれに対して、どういった働きかけができるのかをまとめてみます。

応用1. 内集団←●

人は内集団に対しては甘くなります。印象評価では同じ職業の人の方を高く評価したり、スミスさんはスミスさんと結婚する割合が他の苗字の人よりも多くなるそうです。スポーツの採点や審判などで応援している方が優勢に見えてしまうのも同様です。

なので、もし自分と相手の関係がわからない場合、相手に何かの共通項を提示すると自分を内集団のカテゴリに認識してくれて、評価が高くなることにつながります。

「私もこれ好きなんです」と話しかける店員や、自己紹介枠に趣味を書いている人は、内集団への喚起をしているといえます。デジタルサービスでは内集団に組み込めると評価も高まるし、人にオススメするNPSの向上にもつながると考えられます。

応用2. ●→外集団

逆に、外集団へのカテゴリに対しては、おおざっぱな特徴でしか捉えなくなる傾向があります。例えば、日本は日本人に対しては多様な人格を想像するけど、海外の人に対しては人格を国=人で決めつがちです。

この考えからの応用例が2つあります。

1つは、悪い例に内集団の人格を用いないことです。内集団が悪いことをしていると、注意喚起の内容でも自分もやっていいんだと誤認識するそうで、実際に逆効果だった広告もあったので、この場合は外集団にします。

2つめは、内集団の中でもさらに新しい分類をすることで、残された内集団の満足度を高めることです。例えば会員クラスを細かく設定することで、その中で上位クラスの層は、自分たちはより選ばれし者という優越感を与えることができます。

ただし、これら2つはどちらも、仲間はずれ・差別・偏見を助長し、場全体が対立や不穏な空気を生み出す負の面の方が明らかに強いので、基本的には避けるべきと考えます。

応用3. 内集団+外集団

このように、内集団と外集団の活用は取扱注意な内容ですが、最後に1つ、いいニュースがあります。

内集団と外集団に分かれていても、お互いが協力し合わないと助からない環境をつくると、集団間での敵対関係はなくなります。これまで脅威と認識していた相手がとつぜん頼もしい存在に切り替わる瞬間です。

この時、これまでの内集団と外集団が1つの内集団になり、新たな敵の外集団を生み出しています。わかりやすい例はインデペンデンス・デイのような宇宙人と戦う映画や、ドラゴンボールなどの前作までのラスボスが今作では一緒になって戦うアニメです。ポイントは仮想敵をつくることです。

3つを図にするとこのようになります。

内集団と外集団03

最後に. オリジナリティがあるものの特権

冒頭に紹介した「なぜマックユーザーとウィンドウズユーザーは互いにいがみ合うのか?」について、最後に考察をまとめてみます。

ご存知のとおりappleはこれまで外集団のwindowsを度々けなして(CMしかりジョブズのスピーチしかり)、内集団のMacユーザーにファン醸成をしていました。決して健全な方法ではないかも知れませんが、意外にも全体としては割と好意的に受け止められているように見えます。

なぜか。それはappleは自ら新しい試みを開拓している存在だからです。オリジナリティを追求している存在だからこそ、内集団として外集団に攻勢をかけることができる、と考えます。

対して、2番手3番手の後発サービスを打ち出す会社には、こういったアプローチはできません。(ちなみに僕は一時期surfaceを好んで使ってたのでwindowsが2番手だとは思っていませんよ)

内集団の優位性を活用するためには、オリジナリティとクリエイティブを大事にすること。最後にデザインにつながるまとめができました。

デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。