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デザインで、会社をはじめた理由(わけ)

デザインで株式会社

「業界の役割分担」と「自分の存在価値」のズレ

私は美術大学で広義のデザインを学び、
広告会社で11年間仕事をしてきました。(2020年時点)

 広告会社特有のキャリアで、美術大学や専門学校を卒業した人は、広告制作におけるアートディレクター(以下AD)という役職を担います。これは、私自身も大学の頃から憧れた花形の職業でもありますし、ADとして活躍する業界の諸先輩方が大勢います。もちろん同世代や後輩も。

ADが職能的に求められるのは、
「ビジュアル言語による提案と解決」です。

 アウトプットするメディアが多様化したことによって、もはや表現の手法は問われないのですが、この役職である以上求められることは変わりません。ビジュアル言語による提案と解決とは、左脳的に組み立てられたものを、いかに右脳的に飛び越えていくか、という感じです。
この広告業界特有のADの仕事の型は、大抵3年〜5年現場で経験を積めばある程度身に付きます。そこから先は、その鋭度と精度を追求するタイプか、型破りに独自の純度を探究するタイプに、一旦枝分かれします。(個人的見解です)自分のことを振り返ると、ある時期までは完全に前者であるべきという固定観念に囚われていて、前者であろうとしていました。

ところが、ある2つの仕事をきっかけに、その考え方が大きく変わることになりました。
自分がこうでなければならないと決めていたことと、実際に自分が他者に提供していることにズレがあることに気付くことになるのでした。

「売れなかった失敗」と「失敗が許されない状況」

広告会社で脂が乗ってきた頃に(自分で言うな)、とあるご縁で石材店の社長さんから仕事のご相談を受けました。
「新しい霊園をオープンするから、その販促をお願いしたい。」
簡潔に言うとこんなご依頼でした。
実は、私の実家がお寺ということもあり、お墓というもの対する解像度が人よりも高かったので、市場特有の状況も踏まえてご提案したのは、他社の価格競争と均質化しない、お墓の本質的なブランディングでした。
本質的とは?という話になりそうですが、それは一旦隅に置いておいて、
そもそもお墓とはどういうもので、この霊園が購入検討者にどんな体験や価値を提供するのか。その内容と、具体的な施策をご提案しました。

結果、石材店の社長以下、墓地の土地を提供する都内の寺院も、提案内容を気に入ってくださり、ブランディングを軸にした販促広告で予算を使い切りました。
私の実績としても、お墓のブランディングというユニークな事例として、海外のクリエイティブアワードで評価される結果を得ました。
※その事例のイメージを貼っておきます。

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しかしながら、その新しい霊園のお墓が広告投資に見合う速度で売れることはありませんでした。(広告屋さん的には完全に失敗)
もしかしたら、価格訴求を軸に、殆どの予算をデジタルマーケティングに割いていたら、当初のクライアントの要望に応えられていたかもしれませんが、当時の私が考えた最善は、そうではなかったのです。

それから程なく、
今でこそ日本を代表するスタートアップ企業のコーポレートブランディングを数年間に渡り担当しました。その企業が、株式上場をする2〜3年前の時期でした。

その企業の、自分と同世代のCEOから当時依頼されたことは、
「CMで一定の認知は得られた。あとは社内を横串で貫くブランディングを実装するところまでやってほしい。」
というものでした。
こんなに明快かつ大変そうな課題をクライアントから直接提示されることは、役割分担が前提の業界で仕事をしていた自分にとってはセンセーショナルでした。

過程の細かい話はまた別の機会に改めるとして、乗るか反るかの状況で、僕戸惑いながらも乗ってみたのでした。

スタートアップ企業は、全てのことがシビアです。
当時50人にも満たない規模で世界を変えるビジョンを掲げ、投資家からの信頼を得ながら前進する集団に、一切余裕はありません。
私は当時その中に単身で身を置き、月25時間×12ヶ月という時間の中で、
CEOから提示された課題に向き合うことになりました。
通常、広告制作を行う案件の場合は、営業担当(以下AE)、クリエイティブディレクター(以下CD)、プランナー(以下PL)、コピーライター(CW)、そしてアートディレクター(AD)といった複数名のチームを組んで担当します。
新規案件を開拓するAEならまだしも、専門職的な役割のADが単身でクライアント企業に身を置くような働き方は、当時自分の周りでは聞いたことがない働き方でした。
毎週アップデートされる経営目線の課題を、限られた時間内で配分して、デザインでひとつずつクリアしていく経験は自分がそれまでの環境で使う必要がなかった筋肉が痙攣を起こしながら鍛えられていく感がありました。
課題と成果と評価の繰り返し。(契約最終日までこのサイクル)
非常にシンプルに「経営者の視点」というものを、身をもって学ぶ機会になりました。
そこで求められた「デザイン」は、ロゴや冊子やWEBといった物理的なデザイン製作物はもちろん含みますが、具体的すぎる課題を一度抽象化して再構成するデザインや、漠然としすぎた目的を実現するプロセスを編集するデザインなど、デザインでどう経営目線の課題に応えるかをデザインしていくことでした。

この経験を通じて、それまで自分が考えていた「デザインで、できること」のレンジが大幅に拡がったと同時に、デザインで向き合う課題や相手(前提)が変わることで、こんなにも結果が変わるということを学びました。
そして、デザインでCD(クリエイティブディレクション)を行うことの社会的意義を自分なりに見出していくことで、間接的にデザインという職能そのものの価値を高められるのではないかと考えるようになりました。
いま思うとこの時から、広告業界特有のADという役割の殼がポロポロと剥がれ始めたのかもしれません。

商流という、見えない壁。

それからの私は、同じ広告会社に身を置きながらも以前と全く違う感覚で仕事に向き合うようになりました。
自分が仕事をする上で、自分がその立場でることが、関わる人たちにとって最善なのかを自問自答しながらデザインをするようになりました。
同時に、商流という見えない壁を意識するようにもなりました。

これも広告クリエイティブ業界特有のことですが、スタッフのクレジットを記載したリストを案件ごとにまとめます。
広告会社にアカウントがある仕事で私がADとしている以上、最終アウトプットのデザイン製作作業は、製作会社およびフリーランスへ外注する方が業務効率上正しく、自ずと私はディレクター(AD)になります。仮に私がデザインをしていたとしても、ディレクターとして立ち回る方が構造上正しいのです。
そして、これも業界特有の構造ですが、製作作業に携わったデザイナー(以下D)は、スタッフリストの下流に記載することしかできないのです。通常、CD→AD→D(その他割愛)の順番で記載します。
これでは、広義のデザインの価値をこれ以上可視化することができません。
私がデザインというものに固執している嫌いはありますが、これは業界の商流がつくり上げた、なかなか変えられないヒエラルキーだと思います。
だからこそ、大企業に属さない世の中のインディペンデント系デザイナーの方々は、独自の顧客も開拓し、役割を限定しない仕事への向き合いの中で、デザインという職能そのものの社会的価値を高めようと奮闘されているのだと、合点がいきました。

広告会社にいる状態の私が、いくらデザインの可能性を唱えたり、デザインという職能自体を応援すると言っても、その役割のままでいてはどんなに綺麗ごとを言っても説得力がないなと、当時は半ば諦めていました。
もちろん、広告会社の中でデザインの価値を啓蒙する役割を担っいる諸先輩方も大勢いらっしゃって、当然、それぞれに尊敬しています。
ただ、私はその役割ではなかったというだけのことです。
そのことに気付くきっかけをくれた仕事とクライアントには、とても感謝しています。

同じ目線で、向き合う意味。

デザインで株式会社は、私が広告会社にいた頃から何度も共に仕事をしてきた信頼できるパートナーとはじめました。
ひょっとしたら当時は、彼らから見た私は、仕事という実がなる木だから水をもらえていたかもしれないし、私もそれをいいことに、一向に大きな熟した実をつけないじれったい木だったかもしれません(笑)
でも、今は違います。
まだまだ太い幹もなければ枝もないく、一体どんな実がなる木になるかもわからないところから、改めてデザインで互いに向き合うことで、それぞれが無意識に演じていた役割を脱ぎ捨てて、同じ目線でシビアに、自分達がデザインでできることを語り合えるようになったことにとても意味があると思っています。
同じ目線に立ってデザインでフィードバックし合える関係性が、どんな結果を生んでいくのか。それを可視化していくのはこれからだと思っています。

そして、精神論的な部分では、美術大学で学んだ「広義のデザインという概念によって形成された大きな器」の内側の生態系で自分が生かされている以上、デザインで社会に貢献していく姿勢を目に見える形にする必要があると思ったのでした。

以上が、「デザイン」で会社をはじめた理由です。

2回目の投稿、割と長くなってしまいましたが、、
毎回分量はまちまちになると思います。何かのお役に立ちましたら、今後投稿していく記事も読んで頂けると嬉しいです( ^∀^)D:

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