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菅プロ対談⑤ 日常の中の分類とは

「新しいデザインの教科書」とは、多摩美術大学統合デザイン学科菅俊一プロジェクトによる、課題成果展です。私たちは、デザインという考え方の本質について改めて向き合い、7つのテーマから"作りながら学べる"課題を考案しました。
本展示は、2020年8月16日20:00にて終了しました。
多くの方のご来場および、課題へのチャレンジありがとうございました。

noteでは5回に渡って、それぞれの学生がどのように課題に取り組んでいったのかについて、話しています。第5回は、進行役の布瀬と、「分類」というテーマでそれぞれ課題を制作した川本・竹縄によるトークです。


問題設計の難しさ

布瀬:二人はこの課題を聞いて最初どのように進めていきました?

竹縄:最初は課題を出すことを特に意識せずに、単純に自分の興味のあるテーマを選んだかな…。選んでからも先生に薦められた本とかを読んで、テーマに対する知識を付けていく感じでした。

川本:私も初めは課題のことを考えずに、一番興味があってもっと深く探求してみたい!と思ったテーマを選びました。普段からscrapboxに見たものだったり体験したことを分類して記録しているので、そのこともあって分類を選んだかな。

布瀬:2人とも元々「分類」というテーマ自体に興味があったんだね!リサーチを経て、課題を作るフェーズに入った時どう考えていきました?

川本:まずは世の中で既に分類されているものを大量にリサーチすることから始めました。今まで意識して見ていなかった日常の中での分類も意識して探してみると、いろんなところで分類されていて...。そのフェーズは今思うと楽しかったなと思います。

画像4川本分類リサーチ

竹縄:僕も身の回りの物事のリサーチから始めました。それから書籍や、先生のアドバイスなどからかなり自由に課題設計していきました。ただ、分類は普段から誰しもが経験していることだから、いざ課題にしようとすると、新しく分類する対象を設定するのはなかなか難しいなと思いました。対象が自由過ぎても、限定的すぎてもあまり学びは得られない気がして…。

川本:そうですね、私も課題を考える上で、どこまでこちらで指定するかは悩んだところです。全体を振り返ってみると、かなり自由度が高く、その中で自分で方向性を決めていったなと思います。リサーチの後には書籍を読んだりして、「分類は何のためにするのか」を考え、その後に今回の課題につなげるためにデザインにおける分類とは何かを考えました。

布瀬:確かに自由度の設定は自分も考えた箇所でした。課題をやった結果得られるものを抑えつつも、作品の幅も出せるよう設計するのが結構難しかった。1から課題を作ってみて、改めて課題を制作してる教授たちの凄さを体感しました。

竹縄:一年生の時のインターフェースの課題で、分類をテーマにしている?課題があって、それはかなり参考になりました。けれどそれを知った上で新しい課題を設計するのが少し難しかった。

川本:あぁ、確かに。もう既に教授陣が分類とは何かを提示してくれていて、それも復習した上で、自分たちなりにもう一度再定義することのハードルの高さを感じていました。あのインターフェースの課題って、結構生徒側に集めるものも、分類の仕方も委ねられている自由度の高い課題だったけれど、自分で対象をみる解像度を操作していたのかもしれない。


分類の気づき

布瀬:そして制作した課題をゼミメンバーにやってもらい、出来上がった作品を見てどうでしたか?

川本:私の場合は課題的に目に見えるアウトプットされたものよりも、メンバーがやってみて「容器の中身を想像した」など感じたことを聞いて、プロセス中に発見があって面白いなと感じました。課題を作る側が考えていなかったことを、考えながら課題をやっていてくれたり、出てくる回答が予想外のものもあり、発見がありました。

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竹縄:課題の回答から、自分の家の中で分類されているものはかなり恣意的なものばかりで、それを分析して新しい分け方を見つけるのは大変だなと思いました。「よく使う」とか「好み」とかで僕らは周りのものを分類していて、それを客観的な視点で分けようとするのは難しいんだな、と。課題設定としてはあまり良くなかったかもしれませんが、分類に対しての学びは得られたと思っています。

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布瀬:2つの課題とも作品を考えていく中で新たな発見があったのが面白かったですよね。自分は竹縄君の課題を取り組んでたんですけど、家に中にある基準で分類されたものが思った以上に少ないってことに結構驚きました。日常生活で「分ける」っていう事はしているけれど「分類」はしていないという。

川本:あーそうそう!私も竹縄くんの課題をやった時、家の中で分類されているものって少ないんだなと、、、。分類されていた食器棚の分類でも、効率的でもなければ、最適な分類とも言えない、かなり恣意的な分類でしたね。

竹縄:元々の分ける基準はみんなかなり曖昧だったよね。もっと分ける対象を(家の中だけでなく)幅広くすればよかったのかな?とか、分けやすくするための対象の集め方を考えられたらよかったなと、反省しました。


展示の反響

布瀬:また今回はオンラインで展示を公開していますが、実際に公開してからの反響などを見てみてどうですか?

川本:いろんな人が興味を持ってやってくれていて、嬉しいですね!課題設定がうまくいっているものに関しては、やはり出てくるアウトプットも面白いものばかりで見ていて楽しいし学びになります!ありがたいですね。

竹縄:今まで同じ学科の学生としか同じ課題を取り組むことが無かったので、全く違う視点の作品を見ることができて刺激になりました。どれくらいの人が取り組んでくれるか不安もありましたが、想像以上の反響に驚きました。
普段の展示より多くの方に見られているし、あまりSNSに作品を載せないので、自分の作ったものを自分の名前で世の中に公開する怖さを改めて実感しました。

布瀬:本当に想像以上の多くの方に課題を取り組んでいただけてて驚きましたよね。作品ではなく課題を公開すること自体が新しかったと思うし、作ったものをSNSに挙げる仕組みも反響の大きさに繋がっているのじゃないかな。

川本:本当に。普段私は自分の作品をsnsにあげないのですが、今回の課題を発信してみて、学外の方や繋がることのなかった人の気づきや感想も知ることができ、snsも使い方によってはすごく役に立つものだなと思いました。


川本真梨子(かわもとまりこ)
多摩美術大学統合デザイン学科所属
竹縄正規(たけなわまさのり)
多摩美術大学統合デザイン学科所属
https://vimeo.com/user97299345
布瀬雄太(ふせゆうた)
菅プロジェクトの元で思考技術を学びながらジャンルに捉われず様々な手法を用いて制作している。



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