大手企業の内定から遠ざかる3つの誤解 #デザイン系就活 01

このシリーズは、採用側の事実とインハウスデザイナーとしての経験に基づき、「デザイン系就活で内定を勝ち取る」テクニックを具体的に解説するものです。

現在のデザイン教育界には、昔ながらの間違った常識や非効率なノウハウであふれています。かく言う私も、就活時代は何も知らずに空回りして辛い思いを経験しました。そして数年後、採用側になってから気づいたのです。え?俺らこんな感じで見られてたの? それ知ってれば受かってたんじゃ...と。


記念すべき第一回目は、「大手企業への内定から遠ざかる3つの誤解」です。


大手企業のデザイン系採用とは

本題に入る前に、大手企業について説明します。ここでいう大手企業とは、従業員五千人越えクラスの、CMで見たことのあるような日本の有名企業を指します。俗に言う大企業ですね。私たちのオカンでも名前を知ってるような会社のことです。

大手企業の多くは、社内に様々な分野のデザイナーを抱えています。インハウスデザイナーと呼ばれるやつです。例えば総合家電メーカーであれば、いろんな分野のデザイナーがいたりします。

<例:総合家電メーカー系のデザインセンターにいる人々>
・プロダクトデザイン系
製品のハードウェアをデザインする。製品の形だけじゃなく、色や処理の指示・量産品のチェックまで外観に関わることは全部やる。大手乗り物メーカーだと、絵を描く人・色や素材を決める人などさらに細かく分業している。
・ビジュアルデザイン系
製品のロゴや表記、パッケージ、自社の名刺やら広告やらWEBサイトやら展示会ブースやら、会社のグラフィックに関わることなら何でもする。UIやCG、動画に関わる人もいる。
・ユーザーインターフェースデザイン系
製品に組み込まれている画面や、アプリなどをデザインする。アイコンのデザインなど絵を描く人もいれば、ボタンのレイアウトや画面遷移の計画など初期段階の開発に関わる人もいる。
・ユーザーエクスペリエンス・ユニバーサールデザイン
製品の使い勝手や満足度を評価する。ユーザーテストを行って問題点を抽出し、デザイナーや開発者と改善していく。近年はUI 部門がUXを名乗る企業も多い。
・リサーチ系
デザイントレンドや最新技術をリサーチする。近年のデザイン思考ブームもあり、社内ワークショップを取り仕切ったり、ユーザーへのヒアリング調査も行う。
・モデリング系(乗り物系会社)
プロダクトデザイナーが描いたスケッチを立体へと具体化していく。粘土を手で削る人、3Dデータを作る人に別れる。基本的には大手乗り物メーカーに在籍する。
・デジタルデザイン系
与えられた要件からCGを作る。製品や空間の静止画や動画、サウンドに到るまで販促物を作製し、企業のプロモーションに関わる。近年は外注に頼らず専属のクリエーターを抱える企業が増えている。
・その他推進系
デザインセンターでデザイナーの様々なフォローを行う。採用やインターンシップなどの人事、意匠権や特許取得の知財フォロー、デザイン賞応募のフォローなど。

ご覧の通り、案外モノを作る系のデザイナー以外にもいろんなお仕事があります。
会社によって職種は異なりますが、新卒で入社できるチャンスは思ったよりたくさんあったりします。


大手内定までのざっくりした流れ

企業によっては異なりますが、通常は以下のような流れで採用されます。

①エントリー:近年は企業WEBサイトから入力
②一次選考:履歴書、ポートフォリオ(作品や活動のまとめ)、その他書類を提出
③二次選考:面接、実技試験など。※冬季インターンシップという名前の最終試験
④内定:二次選考直後に内々定、ある時期に人事面接やって正式内定

ポートフォリオや実技試験など、入社前からスキルやセンスが求められるのが一般的な就活とは大きく異なるところです。インハウスデザイナーを志す人は、この辺りなんとなくご存知かと思います。

まずここで伝えたいのは、大手企業の新卒入社試験は結構フェアだということです。裏ワザ的な入社方法が新卒ではほぼない。コネや紹介による不公平な採用がバレると、大企業としての評判を落とすことになるから普通はしないんです。きちんと計画された採用プロセスに沿って行われると思ってもらってよいです。

「いやそれ普通じゃん」って思うかもしれませんが、ITベンチャーや小規模の事務所だといろんなルートで採用されます。これは採用担当=社長だったりするので、その人がいいと思えば採用なのです。「このコンペ獲りました」「このWEBサイト作りました」みたいな実績を直接アピールできれば結構ありえる話です。
こういうドラマチックなプロセスで入社しちゃう先輩の伝説が残ってるせいで、独自のアクションで応募してくる学生がたまにいます。熱意は理解できるんですが、残念ながら大手企業においてはだいたい無駄な努力で終わります。募集期間外に送られてきたポートフォリオは、返送するか廃棄します。中身を見ずに。そういうルールなんですごめんなさい。

という訳で大手企業志望の方は、企業側が提示する採用プロセスに従ってエントリーすることをオススメします。



「大手企業への内定から遠ざかる3つの誤解」

さて本題に入りましょう。これから書くことが全て真実だとは言いませんが、大手企業就活で内定を勝ち取りたいのであれば参考としてご覧ください。

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①作品が良ければ受かる

作品が良いに越したことはありませんが、大手企業の採用試験においてはそれだけでは不十分です。特にポートフォリオ審査において、作品=最終デザインのクオリティは、採点項目の半分くらいにしか関係ありません。審査員はいくつかある採点項目に沿って採点するので、作品=最終デザインが満点でも、その他の項目で得点できなければ落選する場合も全然あります。コンペや自主制作が多い学生にありがちなのですが、最終成果物だけたくさん載せても、一部の採点項目でしか得点できません。自分の武器をアピールすることはとても大事ですが、同時に様々なスキルをアピールすることも忘れてはいけないのです。
じゃあどうすりゃいいんだ?というと、デザインプロセスのページを効果的に見せることで様々な採点項目から得点することができますもちろん、ただプロセスを載せるだけでは不十分なので別途詳しく解説します。採点項目にどんな項目があるかも含めて。乞うご期待。

②ポートフォリオを“完成”させる

ポートフォリオというと一冊の本のような形態をイメージするかと思いますが、実は企業によって提出形式が結構異なります。「A3横の片面印刷を3枚」「PDFでWEBサイトにアップロード」とか。そういった未確定な提出ルールに柔軟に対応できるよう作っておいた方が無難です。「飛び出す絵本」みたいなマニアックなレイアウトありきだと後々自分の首を絞めることになっちゃうかも ということです。
そもそも、完璧主義は死にます。最初から正解を目指すと提出に間に合いません。とにかく作業量が多いし、先生や先輩のアドバイスを聞いて改善していくため、作り始めると結局変わっていくものなんです。
ポートフォリオに完成はないので、まずはラフに一通り作って、ちょっとずつ改善していくくらいの意識で取り組んだ方が得です。

③誰でもエントリーできる

自由応募であれば誰でもエントリーできますが、実は大手企業のデザイナー職は自由応募がそんなに多くありません。実績のある大学にしか募集をかけない企業が多いです。スキルや実績がどれだけある人でも、募集が来ない大学に在籍している時点でスタートラインにすら立てないんです。
これは、自由応募にすると応募数が多くなって採用側の負担が増えてしまうことが理由のようです。不公平だとは思いますが、これはデザイン職に限った話ではなく、一般職でも露骨な学歴フィルターや顔採用はあります。メーカーの理系採用とか半分以上推薦採用だったりするので、それよりはよっぽどマシです。
どうしても新卒で大手企業に入りたい方は、有名大学に編入するか、有名大学の大学院に進学できると良いのですが、それでもエントリーできないケースすらあります。それは「エントリーできるのは大学から一人」という学校推薦って呼ばれるやつです。同じ大学に自分よりも優秀な志望者がいれば受けられません。教授の推薦状が必要なので、大学の先生と仲が悪いと書いてくれないこともあります。

そんな訳で誤解③は、叶わぬ夢のために頑張るのは時間の無駄という話でした。厳しいようですがこれが現実です。その年の採用活動が終わった後に、募集をかけていない大学の学生から「今年の採用はいつ始まりますか?」という問い合わせが来ることもありますが...ごめんなさい。受けたい企業は、先生や先輩に相談しておくと「ごめんそもそも無理」みたいなことが事前に分かるかもしれません。
人生一度きりなので、何やるのもあなたの自由です。それでも私は、少しでもチャンスがある会社にエントリーしていくことが重要だと思ってます。落ちると分かっている会社に労力をかけるよりも、可能性のある会社の対策に時間を割いた方が得です。就活の時期って、マジで時間ないですから。

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以上、「大手企業への内定から遠ざかる3つの誤解」でした。
もう一度言いますが、全て真実だとは言いません。でも、知っているのと知らないのとは、随分と確立が変わってきます。ルールを理解し、有効な手段で勝負して行けば、道は必ず開けます。


こんな感じで、しばらくはデザイン系就活シリーズを書いていこうかと思います。
次回は採用側の事情を予定していますので、お楽しみに。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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