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【詩リーズ40】「離全症」

離全症


【概要】
動植物及び太古の人類は、そもそも各個体と全体を切り離して考える概念さえもなかった。
時代が下るにつれ、各々が自らの皮膚の内側のみを自己・自我と認知するようになる。永い人類史をかけてその傾向が顕著になってきたため、太古の人類と現代人である我々と、社会的生物としてどちらがより健全な道のりを歩んでいるのか知る術はない。
全体としての意識が強すぎれば、集団主義などによって大きな紛争を引き起こすが、三大現代疾患のひとつであるこの症状に主張やイデオロギーは見受けられず、集団主義のまるで逆であり、彼らが犯罪行動に手を染めたとしてその理由は極めて浮薄である。

意思の発露の困難、意味や正解などを早急に求める(自分なりの答えを見つけたとしても達成感を抱く例はごくごく稀である)、他者とのコミュニケーションの困難(以前はコミュニケーション障害とは、その技術や積極性の無さを表した。しかし現在では主に、相手の表情から感情を読み取ることさえも困難であることをいう。たとえば、相手が口を大きく開けている時にそれが笑っているのかひどく怒っているのかを読み取れない、など)、加えて発汗機能が著しく低下する症例も多いという[要出典]。

端的に言えば自我の範囲を狭め、自分のことしか考えられなくなるために自身の社会生活が困難になったり、それにより他者に著しい被害を及ぼす状態である。
近年世界中で急激に増加してきた深刻な社会問題である。

【原因】
特定の原因を突き止めることは難しいが、罹患者は主に「五感を使っていない」「物語に触れていない」「感情を動かさない」の3つの傾向が特に顕著であるといわれる。
なかでもとりわけ視覚の影響は大きく、視界に入れるほとんどの情報がスマホ、PCなどのディスプレイによるものであった場合に現実感の消失はより加速する。
他には、動画鑑賞時の再生速度が2倍3倍と速まるほど、離全症になりやすいという相関関係も見られる。また、いわゆる「ながら○○」が多い人にもその傾向は強く見られる。
無論のことながら、本人は分かったつもりになっているが実のところまるで分かっていない「既知感無理解症候群」を併発しやすい。

【症状】
数多くあるが、結局のところ「生老病死を負の出来事であると錯覚する」ということに集約される。
離全症状が重篤であるほど、より前者(死だけでなく病を、病だけでなく老を、老だけでなく生を)の事柄でさえも不幸な出来事と思いこむ。これに例外は見られない。

【治療】
特効の治療法はないが、「感謝」、「創作活動」、「損得に関係のない事柄に熱中する」等の行為は快復症例が多く見られるようである。
他にも、自身や他者の「生老病死」にまみえる経験が、図らずも症状を快方に向かわせた事例も少なくない。




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