発達障害者は増えているのか

2022年の文部科学省の調査で、発達障害の疑いがある小中学生は、8.8%に上ることがわかった。2002年の6.3%、2012年の6.5%から大幅な増加だ。しかし、ここに疑問がある。
「その数字は、本当に実態を反映しているのか?」
まず定義から確認しておこう。最新のDSM-5(精神疾患の国際的な判断基準)によると、学習障害(LD)、ADHD(注意欠陥多動障害)、自閉スペクトラム障害(ASD)の3つが発達障害に含まれる。これらは発達凸凹とも呼ばれ、特性の表れ方には大きな幅がある。

「発達障害者」と「定型発達者(いわゆる健常者)」ははっきりと区別ができるものではなく、その間にスペクトラム(グラデーション)があり、特性が極めて強い明らかな発達障害者から、ほぼ定型発達者と呼んでよい者までいる。

しかしDENNYはこの観点には懐疑的である。以下の図の方が実態に近いのではないだろうか。

社会が決めた枠の中におさまるのが定型

社会に適合的な人を円でくくり、その枠からはみ出した者たちが「発達障害者」と呼ばれる。円の縁に近いほど定型よりで、離れるほど「特性が強い」とみなされるが、円の縁からは同じ距離だとしても、右上と左下の人々の特性の出方は、大きく異なっている。この考え方は障害の「社会モデル」と呼ばれる考え方に近い。実際、『障害者基本法』による障害者の定義は「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。」となっている。このモデルで考えると、障害/定型の区別は、社会が決定していると言える。そして、(少なくともここ三十年の)現代日本では、「コミュ力」「ルールに従うこと」が過剰に求められることによって、この「定型」と判断される円のサイズが、どんどん小さくなっているのではなかろうか。だとすれば、発達障害者は当然増加する。「発達障害」という概念の普及も見逃せない。かつてなら「変わった人」で済まされていた人々が、診断を受けるようになり「発達障害者」(あるいはグレーゾーン)となる。これは自分の特性を理解することにも繋がるので、診断によって当人のQOLが上がることは多い(たとえば適切な支援に繋がれたり、服薬で特性のコントロールが容易になったり等)。もちろん「俺は障害者だったんだ!」というコンプレックスから、QOLを下げる結果になることもある。いずれにせよこれも、発達障害者の(見かけ上の)増加という結果をもたらす。ここまでは、発達障害者が「見かけ上」増加しているという話をしてきた。しかしDENNYは「実際に数として」増加しているとも考えている。発達障害者は、事故に遭いやすい傾向があると考えるからだ。事実DENNYも、特性で交通事故をはじめとする事故に遭ってきた。その中のどれかで、命を落としていてもおかしくはない。twitter等で噂に上る「子どもは(謎欲求で)死にに行く」

これらのケースの多くに、発達障害が隠れているのではなかろうか。そして、子どもの数が多く、今ほど親が子供一人一人に手をかけられなかった時代、彼らは大勢死亡していたと考えられる。
(追記)……と思ってたら、裏付けが取れてしまいました。

まとめよう。DENNYが考える「発達障害者が増加した」理由は3つ。
1.「定型」の基準が厳格になっている。
2.「発達障害」の概念が普及した。
3.発達障害者が子どものうちに死ななくなった。
つまり「見かけ上の増加」と「実数の増加」の両方が同時に起きているというのがDENNYの仮説である。


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