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[奇談綴り]気づかないはずの

ある日、件の視える友人と、いつものようにアホな話で盛り上がっていた。
この日は「怖い話を仕入れたから教えるよ!」と意気揚々とかかってきた電話が始まりで、友人の言う怖い話は私には恐ろしすぎるので「あまり怖くない話なら聞く」「いやだ、怖い話をさせろ」という、お決まりのやり取りをしていたのだった。

その中で、ふと『怖い場所の話』になった。
東京は至るところ心霊スポットと言っても過言ではないが、その中でもなお恐ろしいスポットというのが存在するらしい。
最初は有名な心霊スポットの話だと思っていたが、友人の言う怖い場所は、少し違うらしい。

「一般にはあまり知られてないけど、ちゃんとした職業の人が封じたり収めたりしている場所があるんだ。
そういう所は、普通の人が気づかないように処理がしてあるの。
幽霊を見たとかのぼんやりした話じゃなくて、具体的に色々恐ろしいことがあって、それでそういう処理がされた場所なんだよ。」

「実はね、そっちの家のそばにもあるんだ! 気づかないと思うけどね…ふふふ。」

勝ち誇ったような笑い声がちょっとムカつく。
友人によると、そういう所には、ヒッソリと「なんで?!」と思うようなモノがあるらしい。
それなのに気づかれないのがポイントなのだとか。

近所にあると言われたら気にしないわけにはいかない。そんな恐ろしい場所にはできるだけ近寄りたくないし。
悔し紛れにいくつか挙げた場所は的外れだったらしい。

「でもね、気づかないほうがいいよ!
実はそこさ、押さえきれてなくって、今でも少し影響あるんだよね。
気にしちゃうと着いてきちゃうからさ、知らないほうがいいよ!」

いや待って? なにそれめちゃくちゃ怖い!
近所ってどこだ…知らないでウロウロするの怖すぎるでしょ!

その時、ふと思い出した。
確かにありえない場所にありえないモノがあった。しかもそこは、ちょっとした曰くがあるエリアでもある。
事件とかそういう事ではなく、土地に由来する曰くだ。

友人に場所を伝えると驚かれた。
「えっ?! なんで知ってるの?
あれは普通の人は気が付かないように、今でも毎年処理されてる場所だよ!
サスガだけど、絶対見に行ったりしないでね!」

えっ…毎年…現役でヤバイの?!
見に行ってはいないけど、通りかかった時に気がついて戻って三度見ぐらいしちゃってるよ!

「うわぁ…。なんで気がついちゃうの?
いや、今おかしなことがないなら大丈夫だよ。でも、ゼロ感っていうのが嘘みたいにいろいろやらかすよね…。
ホントにわからないの?」

わからないからこそ怪談が楽しめるんですよ?
知ってたらそんなに何度も見なかったのに…そもそも通らなかったのに!
最初から教えといて!!!

「教えたら見に行っちゃうと思ってさ。
ホントに危ないから、ちゃんと避けてね? 確認に行ったらダメだよ?」

というわけで、珍しくこちらが宥められる形で話を終えた。
その『ありえないモノ』のある場所は本当にごく普通の街角なのだが、そういえば少し変なことがある。
大きな幹線道路の大通りと商店街の集中する細い通りが平行している場所なのだが、その大通り側を通る人が極端に少ないのだ。
そして、モノは大通り側にある。

商店街と大通りは細い道路でいくつもつながっていて、ゴチャっとしていない分大通りのほうが歩きやすいのだが、なぜかみな商店街を通る。
引っ越してから気になっていた事なのだが、今回の話を聞いてもしかして、と思った。
つまり、無意識に異常を感じて避けているのではないかと。
あれだけの数の人間が無意識に避けているとしたら、なるほどヤバい。

気づかなければ問題ないとはいえ、気づいてしまったからには怖くて近寄りたくない。
友人の話がどこまで本当かはわからないが、モノ自体もかなり『住宅街には通常ない』系統のモノなので、今でもそこは通らないようにしている。

友人によると、同様のモノは形を変えてあちこちにあるそうなので、もし気づいても気にしないことをお勧めする。

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