MLBにおける球速の防御率への意外な影響

こんにちは!磁場です。今回はMLB関連のデータ分析の記事です。Baseball Savant というサイトには、過去およそ10年分、投球ごとの球速やロケーション、変化量や打席の結果など、非常に多くのデータが公開されています。せっかくなので何か分析をしようと思い立って、各年度のチーム防御率と球速を比較してみることにしました。

過去10年の平均球速の推移

皆様ご存じと思いますが、ここ最近のMLBでは球速の上昇が著しいです。↓の画像は推移のグラフです(retrieved from FanGraphs)。

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ファストボールの球速だとだいたい1mphの伸びがあるのですが、雑に全球種を平均してみても同じくらいの伸び幅があるようですね。ファストボールの伸び幅のほうが大きいため、全球種が底上げされたというわけではないようです。チームごとの線も引いていますが、4mphくらい差があるのは意外でした。

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球速と成績

ファストボールの球速は、早くなるほど防御率が良化するという傾向があります。↓は2015年のデータですが、わかりやすいですね(retrieved from Doran, 2015)。左のあたりが、遅いほど良いように見えるのは、おそらく生存バイアスではないでしょうか。

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ここからが面白いのですが、チームレベルで見ると、ファストボールの平均球速とチーム防御率には相関がありません(有意水準5%で非有意、過去10年)。

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一方で、チーム内でのファストボールの球速の分散(ばらつきの大きさ)は、防御率と負の相関、つまりチーム内でのファストボールの球速がばらつくほど防御率が良い、という結果が出ています(相関係数-.16で1%有意)。

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つまり、ファストボールの球速が多様な投手を揃えることで、チーム防御率が良化する可能性が示唆されています。

まあ、もちろん他の説明も可能だとは思います。球速の速い投手は純粋に防御率を良化させ、遅い投手は好成績でなければ使われないため分散の向上に貢献する、というぐあいです。

ただ、そうとも言い切れない面白いデータがあるので、それについて次回に考察したいと思います。


磁場でした。

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