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DeNAのAI×デジタルマーケティングの挑戦(後編)

こんにちは。DeNA のモリシーです。前編では、DeNAのデジタルマーケティングチームのAIチームとの取り組みの様子や、具体的な事例「自動生成テキスト広告」について聞いてきました。今回はもう1つの事例「AIを用いたTwitter広告のターゲティング」についてお話をうかがってきました!

Twitter広告のターゲティングキーワードをAIが考案

モリシー「まず、「AIを用いたTwitter広告のターゲティング」の取り組みの背景について教えていただけますか?」

西山「はい。これまでアプリプロモーションでは広告識別子を使って正確なターゲティングを行う、というのが非常に効果的だったのですが、ここ数年の法規制の強化やApple/Googleの個人情報への対応により徐々にそれができなくなってきています。そこで、広告識別子に頼らず、広告媒体の1stPartyDataを活用することが、今後のターゲティングにおいて重要になってくると考えていました。」

①デジタル広告業界における法規制の強化
EU圏におけるGDPRの施行(2018年)
・USにおけるCCPAの施行(2020年)
・日本における改正個人情報保護法の施行(2022年)
②法規制に呼応するApple/Googleの対応
iOS端末で、広告識別子取得の際にユーザー同意が必須に(2021年)
・Googleが広告識別子の将来的な廃止を発表(2022年)

モリシー「なるほど、そのような背景があるということですね。では、具体的にTwitter広告のターゲティングにAIをどのように活用しているのでしょうか?」

西山「まず、Twitter広告の主要なターゲティング手法としてキーワードターゲティングという手法があります。こういった一般的なTwitterのターゲティング方法では、サービス名や競合サービス名、サービスと関連するユーザーが呟きそうなキーワードを設定する必要があります。そのため、キーワードを手動で探すという担当者の手間が必要となる点や、本当に関連度が高いのかどうかの検証ができない点、また、キーワードの選定過程の属人性が高く、サービスを横断した再現性を担保できない点などのいくつかの課題がありました。」

モリシー「そうした課題を解決するために、AIの力を活用したのですね!」

西山「はい。TwitterのキーワードターゲティングのキーワードをAIに考えてもらいました。具体的には、プロモーションしたい弊社のサービスに関連するツイートを大量に収集し、一般的なツイートに比べて多く出現する単語をみつけてキーワードターゲティングに活用しました。以下のように一般的なツイートに比べてどれくらい出現しやすいかをスコアリングすることで、特にサービスと相性の良いユーザにターゲティングでき、従来のターゲティングに比べて広告の反応(CTVR)が向上しました。」

サービス特有で出現回数の高いキーワードを特定し、スコアリング

モリシー「それはすごいですね!定性的な判断で選定していたキーワードがこのように数値として判断できるのは心強いです!」

西山「ただ、このやり方だと対象ユーザが限定的になってしまって広告配信対象が狭まり、広告の反応は良いものの、配信量が担保できなかったという問題も発生してしまいました。このため、関連度を維持しつつ、広告配信対象を拡大させる必要性がでてきました。」

Twitterユーザの性格や心理傾向を反映させて効率改善

モリシー「関連度を維持しつつ対象を拡大...難しそうですが、これもAIで実現できたのでしょうか?」

西山「はい、サービスに合う人の性格や心理傾向をキーワードに反映させることができないかという仮説から、「キーワードからユーザー属性を推測した最適化」に取り組みました。具体的な手法としては、最近話題のChatGPT系のディープラーニングのモデルを使用し、数万件のランダムサンプルされたツイートから各ツイートのポジティブ・ネガティブ度を推論し、そこから単語レベルのポジティブ度・ネガティブ度を算出しリスト化しました。
そして、サービス名称を含むツイートで同時に出現するポジティブ/ネガティブな単語をツイートしているユーザにターゲティングすることで、サービスと相性の良いキーワードに加えて、ポジティブ/ネガティブというユーザの心理傾向を反映させることにチャレンジしました。サービスによって、ポジティブ単語が効果的なサービスもあれば、ネガティブ単語が効果的なサービスもあったのは非常に面白い発見でした。」

ChatGPT系のモデルを活用し、単語レベルでポジティブ度・ネガティブ度を算出したリスト

モリシー「それは面白いですね!」

西山「また、その拡張版として、性格診断の結果を活用することで、ポジティブ/ネガティブの二種類だけでなく複数のユーザ属性に分類するアプローチも試みました。具体的には、MBTI性格診断という人を16種類の人格に分類する性格診断方法があるのですが、Twitter上ではこの診断結果を共有するのが流行っていることを活用しました。サービス名称をツイートしているユーザがどの性格診断結果だったのかを特定することができるので、相性の良い性格の人が多くツイートしている単語を使ってキーワードターゲティングすることで、サービスに相性のよい性格診断結果のユーザへのターゲティングを実現しました。サービスAはINTPという性格の人と相性が良いので、INTPの人が多くつぶやいている単語を使ってキーワードターゲティングする、という具合です。」

MBTI性格診断を活用した、性格ごとの頻出キーワード

モリシー「なるほどMBTI性格診断での人格分類によって、ツイートの頻出キーワードも分類できるなんて面白いですね!ちなみにモリシーはENFPなのですが、この結果どおりのキーワードよく使ってますw。口癖は性格を表すといいますし、この手法は期待できそうです。実際にこの手法を導入した結果、どのような効果があったのでしょうか?」

西山「これらの心理傾向を色々条件を変えて検証していくことで、配信量・獲得効率ともに安定しました!このようにして、配信量・獲得効率ともに良いターゲティングを自動で生成できるため、担当者のコストが大幅に削減されました。また、サービスに依存しないロジックであるため再現性が高く、ゲーム、ライブ配信を始め複数の事業に応用できる点も非常に大きな効果だと思います。AIの力によって、サイコグラフィックスなターゲティングを実現できるようになりました!」

モリシー「DeNAは様々な事業展開をしているので、サービスに依存しない再現性ある手法は嬉しいですね!最後に、西山さんが考える今後のデジタルマーケティングの展望を教えてください。」

西山「DeNAマーケティングでは常に最先端の技術を駆使して、市場をリードすることを目指しています。今後も、AIを活用したデジタルマーケティングに注力し、従来の常識にとらわれない斬新な手法を開発していきたいです。前回、今回の記事でお話しした通り、AIの力によってWHO(誰に=ターゲティング)とWHAT(何を=クリエイティブ)の精度を上げることができるようになりました。AIの力を借りることで、人や媒体の設定の幅を広げ、より多くの顧客層にアプローチできるようになると期待しています。個人情報の保護にも十分な配慮を払いながら、常に新しいことに挑戦し、高度なテクノロジーを理解し活用していきたいです!」

モリシー「西山さん、今日はありがとうございました!」

インタビューは以上になります。
AIを駆使した最先端のデジタルマーケティングに挑戦する、西山さんの強い情熱が伝わってきました。最先端のテクノロジーの話はワクワクしますね!

次回以降もDeNAのマーケターたちのチャレンジ事例をどんどん紹介していきたいと思ってますので、是非楽しみにしててください!