日本歯科大学2023年度化学の過去問解説(有機)第5回
こんにちは私立歯学部専門予備校のデンアカです。今日は日本歯科大学2023年度一般入試の化学の問題を取り上げます。有機化学からの出題です。
第5回として(2)のi)を解説します。
問題文
必要があれば、次の原子量および値を使うこと。
H 1.00
C 12.0
N 14.0
O 16.0
S 32.0
標準状態における気体のモル体積 22.4 L/mol
アボガドロ定数: NA=6.00×1023N_A = 6.00 \times 10^{23}NA=6.00×1023/mol
I 次の文を読み、(1)と(2)の問いに答えよ。
希硫酸中で天然のタンパク質を加水分解すると、その構成単位であるアミノ酸が得られる。アミノ酸は1つの分子内に酸性の ① 基と塩基性の ② 基とをもつ化合物である。アミノ酸のうち同一の炭素原子に ① 基と ② 基とがともに結合しているアミノ酸は ③ とよばれ、その一般式は RCH(NH₂)COOH で表される。
天然のタンパク質を構成するアミノ酸は約 ④ 種類であり、これらのうち動物が体内で合成できないか、合成できても十分量でなく、食物から摂取する必要があるアミノ酸を ⑤ という。ヒト（成人）の ⑤ は、 ⑥ 種類といわれている。
天然のタンパク質を加水分解したときに得られるアミノ酸には、R が水素 H である ⑦ CH₂(NH₂)COOH を除いて、すべてに(a) 不斉炭素原子があり、 ⑧ 異性体が存在する。天然のタンパク質を構成しているアミノ酸は、そのほとんどが ⑨ 体である。
水に溶解させたアミノ酸は、その分子内に存在する ① 基から電離した ⑩ イオンが ② 基に結合し、分子内に正と負の両電荷をもつ ⑪ イオンになることがある。このため、(b)アミノ酸の水溶液では、陽イオン、 ⑪ イオン、陰イオンが平衡状態にあり、水溶液の pH に応じて、それらの濃度が変化する。また、水溶液中のアミノ酸は、それぞれ特定の pH において、正の電荷と負の電荷がつりあい、全体として電荷が0になる。このときの水溶液の pH の値を、そのアミノ酸の ⑫ といい、 ⑦ ではその⑫ の値は 6 である。
アミノ酸が結合するときに生じる ⑬ 結合を特にペプチド結合といい、2分子のアミノ酸がペプチド結合によって結合するとジペプチド、3分子のアミノ酸が結合すると(c)トリペプチド、多数のアミノ酸が縮合重合すると ⑭ となる。
タンパク質は ⑭ を基本とした複雑な立体構造をもつ生体内の高分子化合物である。タンパク質は、加水分解したときにアミノ酸のみを生じる ⑮ タンパク質と、アミノ酸とともにそれ以外の成分として糖類、核酸、脂質、色素、リン酸などを生じる ⑯ タンパク質に分類される。生物体内で起こる複雑な化学反応の触媒として作用するアミラーゼなどの ⑰ もタンパク質を主成分とする高分子化合物である。
(1) 前回までに解説したため略
(2) 文中の (a)～(c) に関する、次の i)～iii) の問いに答えよ。
i) 文中の (a) について、分子内に不斉炭素原子をもたない化合物を、次の解答群から二つ選び、記号ア～カを解答欄に記せ。
ア. グリセリン (1,2,3-プロパントリオール)
イ. セルロース
ウ. 乳酸
エ. ヘモグロビン
オ. リノール酸
カ. RNA (リボ核酸)
ii) 文中の(b) について、⑦ が溶解している水溶液の pH を pH = 1.0、pH = 6.0、pH = 11.0 にそれぞれ調製した。それぞれの水溶液中に最も高濃度で存在する ⑦ の化学式の組み合わせとして最も適切なものを、次の解答群から一つ選び、記号ア～エを解答欄に記せ。
iii) 文中の下線部 (c) である化合物 X 6.50 g を完全に加水分解すると 3.75 g の ⑦ とある質量の化合物 Y との 2 種類のアミノ酸の混合物が得られた。このとき生じた化合物 Y の分子量として最も近いものを、次の解答群から一つ選び、記号ア～クを解答欄に記せ。
今回は(2)のi)を解説します。
考えてみましょう。
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問題: 文中の下線部 (a) について、分子内に不斉炭素原子をもたない化合物を選ぶ問題です。
解答
不斉炭素原子とは、4つの異なる原子や基が結びついている炭素原子のことです。不斉炭素を持たない分子を選ぶため、まず各化合物の構造を確認します。
ア. グリセリン (1,2,3-プロパントリオール)
グリセリンは、3つの炭素原子に水酸基 (-OH) が結合しています。中心の炭素に同じ基が2つ以上結合しているため、不斉炭素を持たない化合物です。イ. セルロース
セルロースは、グルコースが結合した長い鎖状の分子ですが、各単位のグルコースには不斉炭素が含まれています。ウ. 乳酸
乳酸は、3つの炭素原子のうち1つが不斉炭素を持っているため、不斉炭素を持つ化合物です。エ. ヘモグロビン
ヘモグロビンは非常に複雑なタンパク質で、多くの不斉炭素を含むアミノ酸で構成されています。したがって、不斉炭素を含む化合物です。オ. リノール酸
リノール酸は脂肪酸で、二重結合を持っていますが、構造の中には不斉炭素原子はありません。したがって、不斉炭素を持たない化合物です。カ. RNA (リボ核酸)
RNAの構造は、リボースという糖が含まれており、このリボースは不斉炭素を含むため、不斉炭素を持つ化合物です。
正解
ア. グリセリン
オ. リノール酸
不斉炭素の解説
不斉炭素とは？
「不斉炭素」という名前は、その炭素原子が「対称ではない」という意味を持っていることから来ています。具体的には、不斉炭素原子は4つの異なる原子や基が結合している炭素原子のことを指し、このために対称性がないのです。
なぜ「不斉」という名前なのか？
「不」: 「ない」という意味で、対称性がないことを表しています。
「斉」: 「対称」や「同じように並んでいる」という意味です。ここでは「対称的でない」を表すために使われています。
つまり、「不斉炭素」は対称でない炭素という意味で、「4つの異なる原子や基が結合しているために、左右対称にならない炭素原子」ということになります。
不斉炭素の例
鏡像対称だが重ね合わせることはできない
例を挙げると…
例えば、乳酸の分子には不斉炭素があります。
乳酸の構造を見てみると、1つの炭素に次の4つの異なる基が結合しています：
-OH (ヒドロキシ基)
-CH₃ (メチル基)
-COOH (カルボキシ基)
H (水素)
この炭素は4つの異なる基を持っているので、対称性がないのです。これが「不斉炭素」と呼ばれる理由です。
初心者として覚えておくべきは、「不斉炭素」は左右対称でない構造を作り出す炭素ということです。これに基づいて、分子の構造を見てどの化合物が不斉炭素を持つかを判断できるようになります。
なぜ不斉炭素が重要なの？
不斉炭素を持つ分子は、鏡像異性体という特別な性質を持つことがあります。これは、鏡に映したような左右反転した2つの分子が存在し、それらはお互いに重ね合わせることができない、ということです。これにより、生物学的な活性や物理的性質が変わることがあるため、特に医薬品や化学反応において非常に重要な概念です。
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