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高校生の「飲酒」

青森山田高校サッカー部の寮内で「飲酒問題」が発覚していた。その詳細を3月3日発売の「週刊新潮」が詳報するらしい。事の起こりは昨年2月、寮の冷蔵庫からビールやチューハイが見つかり、関係の生徒が停学処分を受けていた。それを監督が他言無用即ち隠蔽を指示したというもの。サッカー部員が取材に応じその怒りの丈を語っている、ようなのだ。

この監督は、相手のスローインの妨害やフィールドでの態度の悪さが何かと話題の指導者。その人となりをつぶさに知るわけではないが、部員に不満が鬱積していたのであれば監督へのある種の意趣返しもあるかと勘繰りたくなる。そもそも、その道の名指導者であることは優れた教育者であることに直結しない。それより、事件が起きたのは1年前、停学という処分もすでに下されている。今さらながらの「表面化」だ。リークしたのが部員であれば、取材側との金銭の授受も考えられる。いずれにせよ、あとは事に当たった大人の問題だ。

「大人になるまで待てない」事が高校時代にはありすぎる。もちろんそれをコントロールするのが教育であり、本人の心がけなのだが。こと飲酒に関しては、高校卒業まで一滴も口にしたことがない人はどの位いるのだろう。今回の「事件」(上述の通り処分はすでに下っているので主役は「飲酒」ではなく「オトナの振る舞い」にある)ではないが、70年代の高校生とお酒の思い出というと・・・。

高校2年の文化祭が終わり、近くのウエスタンスタイルのバーで打ち上げをしようという事になった。ステージでユーミンなどを演りキャンプファイヤーを囲んでの後夜祭で先輩の女生徒から「よかったわよ」などと声を掛けられいい気分になっている。17歳の小僧は確かコークハイなどを飲んでいたと思う。ほろ酔いで外に出ると、待ち構えていたのは数人の体育教師。事前にその店で打ち上げがあることを察知していたらしい(その中には後に陸上界で名指導者として歴史に名を残した人もいた)。「知っていて事前に止めないのは教師のやる事じゃない」と憤慨して、提出させられた反省文は白紙で出した。「何書けばいいんだか」と腕組みしている息子に「反省していなければ白紙で出したら」という母親もなかなかのものだが。因みに学校長訓告(だったか?)というさもない処分だけがそっと下された。

母親は外でフラフラ飲み歩くのなら、たまに家で少し飲む位はいいんじゃないかという人だったので、試験のあとなど数回友人と部屋で飲んだことがある。ある日調子に乗り過ぎて友人が部屋のカーペットに盛大に吐いた。へべれけの友人を家まで送り届けたあと、母親に平謝りすると「酒にも飲み方がある事がわかったでしょう」と懇々と諭された。高校教師だった父親もこうした狼藉には比較的寛容で「高校生とはそういう年頃、自分たちもそうだった。そうしていろいろな事を憶える」というタイプだった。

高校3年時の担任の先生は、卒業式のあと近くの蕎麦屋の離れを借り切ってポケットマネーで「秘密の宴会」を開いた。幾許かのアルコール類が供され、生徒と最後の時間をもった。卒業式後とは言えまだ在校生、当然学校側の耳に入りしかるべき処分をされたらしい。この事について父親は日記に「先を越された。自分もやりたかった」という内容を記している。おいおい。

いかにものどかな時代の酒の話。大動脈解離で生死を彷徨ってからこのかたすっかり飲まなくなった。もともと強くはなかったのだが、いくら飲んでも酔わない人への憧れは今もある。身長よりもそっちが欲しかった。


見出しのイラストは「kuro」さんの作品をお借りしました。





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