ヒソカの行動原理

冨樫義博さんの連載漫画『HUNTER×HUNTER』にヒソカという男性キャラクターがいる。

闘いを好むバトルマニアとされているが、強敵との戦いを求めているはずの彼が、「なぜキメラアント編で闘いに参加しなかったのか?」、という疑問がしばしばファンの間で議論になっているようだ。
作中で、ニュースを見ていなくて知らなかったから、という説明はあるのだが、納得できないということだ。

これについては、彼の「バトルマニア」という設定について、少し掘り下げてみる必要があると思う。
彼が何を求めて戦いに臨んでいるのか、という部分だ。

私が思うに、彼が望んでいるのは闘いそのものではなく、他者の強い関心を自分に向けさせることだ。

一番分かりやすいのはマチという女性との関係だろう。
最初のうちは食事に誘ってみたり、わざと負傷して治療を依頼するなどのアプローチを試みている。
しかし、彼女は一向になびかず、結局は彼女が敬愛する男性を殺すことで、彼女の憎悪を得ることを決断する。

レオリオとの対峙も象徴的だ。
ヒソカはハンター試験中の闘いでヒソカ的に見込みのありそうな3人に迫る。
勝てないと見るや逃げに徹した武道家風の男は殺してしまうが、「やられっぱなしではガマンできない」と気勢を上げたレオリオは一撃でKOし、追撃はしない。
それどころか、気絶したレオリオの巨体を背負い、わざわざ安全地帯まで送り届けてさえいる。
ヒソカはレオリオのリベンジを期待しているのだ。
(反撃に転じたレオリオを見て、援護にかけつけたゴンとクラピカも「合格」ということだろう。)

このように考えると、グリード・アイランド編での振舞いも納得しやすい。
いつもは斜に構えているヒソカだが、ドッジボールでは珍しく燃えている。
ゴンに頼られたことがうれしくて、張り切ってしまったと思われる。

同じくグリード・アイランド編で「恋愛都市アイアイ」を拠点にしていたことも注目したい。
初めて訪れたゴンたちに、キャストの少女たちへの対応を次々とアドバイスしている。
このことから、ヒソカがアイアイでの恋愛SLG攻略にいそしんでいたことが伺われる。

選挙編では、イルミの「殺すよ」に対し「冗談だよぉ」と応じているが、すぐ後にイルミの弟を殺す算段もしている。
前者はもともとキルアを逃がすための挑発だったということもあるが、突発的な戦闘は歓迎しないが、強く恨まれることは歓迎する、というヒソカの性格をよく表している。

また、念能力は使用者の人間性を強く反映するとされているが、ヒソカのメインウェポンは「伸縮自在の愛」だ。
「愛」で二者を繋ぎ合わせ、引き寄せあうことに特化した能力にも、彼の願望が強く反映されている。

これらの事例から、ヒソカが真に求めるものは他者の強い関心を得ることであり、闘いはその手段に過ぎない、と考えられる。

それならば闘いの相手は人間でなければならず、獣では意味がない。
害獣関連のニュースに関心がなく、ノーチェックだったというのは十分に考えられる話であり、特に矛盾はないと思われる。


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