見出し画像

CAVA BOOKSの売上報告(1,024日分)


映画×本×カフェの複合施設として、出町座がスタートしたのは2017年12月28日のことでした。早いものでまもなく3周年を迎えようとしています。

画像1

当店(CAVA BOOKS)は、この出町座の1Fにある、ごくごく小さな本屋です。

画像2

ふと「ウチで一番売れている本は何なのだろう?」と思い、勢いにまかせて売上データをまとめてみました。
日々の売上は把握しているのですが、売れたものを全部集計するという作業はこれまであまりやってこなかったので、自分のお店をみつめなおすよい機会になりました。

というわけで、開店してからの売上(店休日を除く営業日=1,024日分)のデータを集計してみましたので、その情報を公開いたします。

データの集計方法

当店はPOSを導入していません。集計方法はいたってシンプルです。
①スリップを抜くorスリップのない商品は白スリップに何の本が売れたのかを記入する
②それをエクセルにまとめる
というアナログな方法で日々の売上を管理しています。一日の売上は微々たるものなので、これで十分というわけです。

なお、エクセル化に際しては、スリップのバーコードをスキャナで読み取り、「vslip version 0.7」で書誌データ化しています。

画像4

画像3

ただ、上記のような方法で売り上げを100%管理することは困難です。忙しくてスリップを抜き忘れたりすることもしばしばあります。

そういう商品がおそらく全体の3~5%くらいはあるのではないかという見込みです。

ともあれ、このような方法で集計した本、つまり開店から2020年10月20日までの営業日1,024日間で売れた本は全部で13,412冊でした。
ということは1日に換算すると約13冊ですか…。もう少し頑張りたいところです。

ちなみに、雑誌や古書(や映画パンフレット/ブロマイド)、雑貨の売上は上の数字に含まれていません。なので、本屋の実際の売上としてはもう少しあるという感じでしょうか。

商品別売上ランキング ベスト30

当店の最大の特徴はなんといっても「映画」です。
出町座で上映される映画作品に関連した本はやはりよく売れます。上映に関連していなくても、映画の本に関しては、おそらく他の本屋さんよりもよく売れているはずです。
「ここで売らないでどこで売る!」という覚悟で、映画関係の本は気合を入れて販売しています。

では映画以外の本についてはどうかといいますと。

当店には入り口を入ってすぐ右手にいわゆる平台があり、そこに並べる本が日々の売上の主力となっています(下の写真の右手にあるのがその平台)。

画像6ただ、非常に小さい棚なので、同じ商品をずっと並べておくことはできません。いや、できないことはないのですが、同じ本をずっと置いておくよりも、できれば違う本を見てもらいたいという想いがあり(せっかくいろんな面白い本がこの世には存在することですし)、ある程度売上が立った時点で(目安としては10~15冊)平台を外し、その商品は棚差しにしています。

なので、「この本を100冊売ったるで!」的なことをやろうと思えばできるのかもしれませんが、いまのところ当店ではそのようなやり方は採用していません。売上を集計してみると、売上が10~20冊の範囲にある商品がものすごく多いことに改めて気づくのですが、それは上記のような理由によるものです。

上位アイテムのランキングを見ていただく前に、ひとつお断りしておきたいことがあります。
当店では「毎月1冊(半年間)海外文学をお届けする選書サービス」である「サヴァ・ブッククラブ」という取り組みを行っており、会員は130名です。なので、毎月同じ商品が必ず130冊売れるということになります。
この商品群を売上ランキングに含めてもよいのですが、そうすると上位にそれらの商品が固まってしまい、あまり面白くないランキングになってしまうので、今回はあえてサヴァ・ブッククラブで選書した商品は除外しています。

前置きが長くなってしまいましたが、当店の売上上位ランキングベスト30を見ていただきましょう。

画像5

さて、一目見て気づくことは「映画関連」「京都関連」の商品が多いということでしょうか。

トップの『USムービー・ホットサンド』を筆頭に、『いつもひとりだった、京都での日々』『きみの鳥はうたえる』『この世界の片隅に』『ユリイカ 2018年9月号 総特集=濱口竜介』『小説嵐電』『夜空はいつでも最高密度の青色だ』『日日是好日』は、映画関連書籍、あるいは映画の原作となった作品です。

そして『京都の平熱』『きんじょ』『空と風と星と詩』『あんこの本』『手のひらの京』『暮らすように街を歩く、京都ガイド。』は広義の京都関連本です。

少し補足が必要な商品があるもしれません。
・『きんじょ』のいしいしんじさんは京都を代表する小説家。
・『空と風と星と詩』の尹東柱(ユン・ドンジュ)は戦中に同志社大学にいた詩人(同志社大学は出町座のご近所さん)。
・『あんこの本』は、出町名物の和菓子屋さん「出町ふたば」(ご近所さん)が登場。
こういう事情もあり、当店ではプッシュしている商品たちです。

特筆すべき商品があるとすれば、翻訳同人誌の『BABELZINE』と『翻訳文学紀行』でしょうか。取り扱いをはじめたのはここ最近のことなのですが、非常に人気の商品となっています。
こちらは、店主の大好物である海外文学案件ですので、映画本と同様、とりわけ力が入っています。
なお、オンラインショップでも販売中です(『翻訳文学紀行』はvol.2のみ在庫あり)

『少女のスカートはよくゆれる』『どうにかなりそう』の2点がランクインしている漫画家の岡藤真依さんは、京都にも縁の深い方で、出町座でも過去何度か原画展を開催したことがあります。
CAVA BOOKSの本棚にも岡藤さんの書下ろしイラストが飾ってあるので、ご来店の際にはぜひご確認ください。

最後に多和田葉子さんの『献灯使』こっそりとランクインしていますが、これは映画とも京都とも関係がなく、単に店主が好きな作品だということで…。

出版社別売上ランキング ベスト30

さて、今度は出版社別に見てみましょう。
あくまで冊数ベースのランキングなので、その点ご注意ください。金額でも出せるのですが、ちょっと生々しくなるので…。

画像7

第1位は大方の予想通り(?)筑摩書房でした。唯一の1,000冊オーバーです。ただ、筑摩書房は、最近スリップがない商品が増えているので、正確にカウントできているか怪しいところです。実際は、もう少し売れていると思います。売上のほとんどは文庫です。冊数が多いのはそのあたりにも理由がありそうです。

そして第2位が河出書房新社。単行本・文庫まんべんなく売れているので、金額で見るとおそらく河出書房新社がトップになるはずです。『別冊文藝』で映画監督特集があったり、映画原作も多いので、出町座が一番お世話になっている出版社といっても過言ではありません。売上にはカウントしていないですが、雑誌『文藝』も出るたびによく売れています。

商品調達のしやすさという点でも、筑摩書房、河出書房新社はとても重宝しています。新刊でも取次の倉庫に在庫があるので、新刊委託配本をしていない当店のようなお店でもきっちりと品ぞろえができます。

さて、続いては映画本が強い当店ならではの出版社として、フィルムアート社と青土社が登場します。
出町座では映画関係のトークイベントを頻繁に開催しており、そこでゲストの著書を売るということがあります。フィルムアート社はそういうところでの売上が非常に多い出版社です。

青土社の売上の多くは『ユリイカ』です。ご存じの通り『ユリイカ』は非常にタイムリーな特集が多く、映画の新作に合わせてその映画監督の特集号を刊行してくれることが多いので、映画館の本屋にとってこれほどありがたいことはありません。『ユリイカ』も雑誌扱いでスリップがないので、売上の把握が不完全な可能性は非常に高いです。あらためて細かく明細を見てみたのですが、実際はこの数字+50冊くらいは売れているはずです。それくらい売れます。

約3年間の売上を集計してみて思ったことは、わりと普通の出版社が上位に来ているな、ということです。大手出版社の講談社、KADOKAWA、新潮社、文藝春秋が上位にランクインしています。買切り版元として名高い岩波書店も上位に入っていました。早川書房が第8位なのは、店主の外国文学への愛情が出てしまった結果でしょう…。

とはいえ紀伊國屋書店のランキングと比較してみると少し違うところもあります。ダイヤモンド社や日経BP、PHP研究所などのビジネス系出版社は当店ではランク外になっています(そもそもビジネス書を置いていない=今後も置く予定はない)ので。

あと、具体的には名前を挙げませんが、ここ数年「これはどうなんだろう」と思ってしまう(そういえば最近もありましたね)出版社(人)があったりして、そういう出版社の商品はやはり仕入れも躊躇してしまうものです。

まとめ

開店から約3年間の売上をまとめるというやや乱暴な作業をしましたが、1年ごとの売上明細を見比べると、3年前と今ではずいぶんと違うな、という印象です。

開店当初は取次との契約をしておらず出版社との直接取引だけで商品を調達していたので、出版社の偏りが顕著に出ています。開店から約1年半後に、大手取次である日販と取引を開始することで、商品調達の自由度が増し、売上も一気に増えました。

在庫3,000冊にも満たないとても小さな本屋ですが、それでもこうして3年間続けることができたのは(売上も徐々にですが増えてきています)、ひとえに出町座に来てくださるお客様のおかげです。ありがとうございます。もちろん出版社や取次さんにも。

本屋としてやりたいことはまだまだたくさんあるのですが、あせらずじっくりと前に進んでいきたいと思います。

さて、長文になってしまいましたが、ここまでお付き合いありがとうございました。今後とも出町座とCAVA BOOKSをどうぞよろしくお願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?