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【本業はせんべい屋?】ローカルな風情溢れる銚子電鉄

 2020年12月、千葉県を走るローカル線、銚子電鉄に乗車しました。

■関東最東端を走るローカル線

(画像:Wikipedia / Google Earth
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8A%9A%E5%AD%90%E9%9B%BB%E6%B0%97%E9%89%84%E9%81%93%E7%B7%9A)

 銚子電鉄は、千葉県銚子市の銚子~外川間を結ぶ6.4kmの小さなローカル線です。沿線には「日本一早い初日の出」が見える場所として有名な犬吠埼があるほか、開業した大正時代に造られた駅舎や車庫が今も残っており、本物のレトロな雰囲気が魅力です。

■収入は鉄道以外が8割

 旅行者目線では魅力だらけの銚子電鉄ですが、収支は赤字が続いています。その理由は、沿線の人口減少などもありますが、そもそも列車のスピードが遅すぎること。駅間が短く車両も古いため、表定速度はなんと20km/h。以前、『乗りものチャンネル』さんのYouTubeの企画で「自転車よりも遅い」という衝撃的な事実が明らかになりました(笑)

【電車vs自転車】銚子電鉄でガチ対決やってきた!|乗りものチャンネル - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=QrIrANihOX0

 そんな銚子電鉄の収入の柱はなんと「煎餅」。醤油の生産がさかんな銚子市では、醤油をふんだんに使った「ぬれ煎餅」を作るメーカーが複数あり、1995年に当時の役員のアイディアで「うちでも作ろう」となったのがきっかけとのこと。今では銚子を代表する銘菓の一つにまでなっています。

(画像:銚子電鉄のぬれ煎餅オンラインショップ http://chodenshop.com/)

 また、経営状況がまずいことを自虐ネタにした「まずい棒」を発売し、ネットで話題になりました。そのほか駅で販売するたい焼きや揚げ餅など、食品製造を幅広く展開しており、鉄道以外の収入が全体の8割にものぼるそう。もはや鉄道会社ではなく「食品製造」の会社となっています(笑)

銚子電鉄「まずい棒」公式サイト
https://choden-mazuibou.com/

■乗車記

 いろいろとユニークな銚子電鉄。学生時代、東京にいるうちに乗りに行くつもりが、銚子が意外と遠くなかなか腰が上がらず…。結局東京を離れて約4年後の去年、機会があり乗ることができました。

 特急しおさい号で銚子に向かいます。

 2時間弱で銚子に到着。普通列車だと3時間弱くらいで行けます。

 JRの2・3番線ホームの端に銚子電鉄の駅があります。

 ホーム上に待合室兼駅舎のような建物があります。2016年から各駅に愛称がつけられており、銚子駅は「絶対にあきらめない」。何だかいきなり自虐感が漂っています…(笑)

 犬吠駅が最寄りの「犬吠埼」は日本一早い初日の出が見える場所。そのため、毎年元日にはJR・銚子電鉄が早朝に初日の出専用列車を走らせています。2021年はコロナの影響で減便されていました。

 列車に乗ります。京王電鉄から譲り受けた2000形電車。

 「金太郎ホーム号」の文字。車両にも命名権が与えられているようです。

  記念乗車券や鉄道サウンドなど、いろいろなグッズを販売して収入を獲得しているようです。

 行きは犬吠駅で下車。沿線では犬吠駅がもっとも大きな駅。

 駅の中の売店。ぬれ煎餅をはじめ多彩なグッズが売られています。

  駅の前は広々としており、イベントなどもできそうな雰囲気。

 駅横の踏切からホームを見た図。

 駅から歩いて犬吠埼灯台に寄りました。

 犬吠埼から終点の外川駅まで歩いて移動。

 外川駅。簡素ながら、歴史あるたたずまいです。地元のお弁当屋さんによるお惣菜販売もされていました。

 駅舎の中の様子。大漁旗をカバーにしたベンチが良いですね。

 窓口や運賃表も時代を感じます。首都圏近郊の路線とは思えません。

 駅横には2010年まで走っていたデハ800形電車が展示されており、車内に入れます(訪問時は感染拡大防止のため見学できませんでした)。

 列車が到着しました。銚子まで戻ります。

 外川駅の愛称は「ありがとう」。

 最後に途中駅をいくつか紹介。こちらは君ヶ浜駅。数年前までネコの名誉駅長がいたとのことですが、写真に写っているネコは…?

 海鹿島駅。関東最東端の駅とのこと。

 笠上黒生(かさがみくろはえ)駅。愛称は「髪毛黒生(かみのけくろはえ)」で、頭皮ケア商品メーカーが命名したとのこと(笑)
 変わった名前の駅ですが駅員がおり、入場券やグッズも買えるそうです。

■株主の爆弾提案が話題に

 自虐ネタや副業でたびたび注目を集めている銚子電鉄ですが、2021年6月30日に行われた株主総会でのやり取りが最近また話題になりました。それが、ある株主の「鉄道を廃止し、副業(食品製造販売)を本業にすべきではないか」という発言です。現在の銚子電鉄は、鉄道事業の赤字を国や自治体からの補助金で埋め合わせ、副業の食品・グッズ販売で黒字を目指す状況。合理的に考えれば至極まっとうな提案です。

銚子電鉄、株主が総会で廃線進言 煎餅販売を「本業に」:朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASP6Z6WYRP6ZUDCB00K.html

 ですが個人的には、銚子電鉄は鉄道を営んでいるからこそある種のブランド力があって、そのおかげで煎餅やグッズを買う人が現れているのだと思うし、ひいては地域の観光素材となっていると思います。株主総会で社長が答えていた通り、鉄道をやめれば副業の売り上げも大きく落ち込むことになるでしょう。公共交通機関という位置づけにとどまらず、地域全体で銚子電鉄の果たすべき役割を考え、支えていくことが必要なのではないかと思います。

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