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250人に1人がオリンピアン!?まちづくり成功事例『カーリング』

以前、スポーツの3つの価値について書きましたが、このうちの「LOCAL(ローカル)」という価値を活かし、地域を活性化している『LOCO SOLARE』について注目してみました。ポイントを「応援と育成の好循環」「リーダーのバトン」の2つに分けています。

応援と育成の好循環

スポーツが持つ「LOCAL(ローカル)」という価値の最も重要な要素は、「スポーツという媒体が年齢・性別を超えて人をつなげることによる好循環」だと考えています。

スポーツを楽しむのに、年齢・性別は関係ありません。年齢や性別を超えてまち全体でスポーツを応援することで、スポーツ活動の体制・資金が厚くなり、当然にスポーツ選手/チームは強くなっていく。さらに、強くなったスポーツ選手/チームがより多くの住民を惹きつけ、広く深い地域住民のつながりをつくっていく。

この好循環がスポーツの「LOCAL(ローカル)」という価値です。

北海道北見市常呂町を本拠地とする『LOCO SOLARE』が街に与えた好循環は、こんな感じ。

・1980年、カナダの姉妹都市とのイベントで開催された講習会に常呂カーリング協会の初代会長となる小栗さんが参加したことをきっかけに常呂町でカーリング文化が始まる。
・1988年、日本初の屋内カーリング場(旧カーリングホール)が建設され、老若男女が一緒に楽しめるスポーツとしてまちに広がる。

👇<選手が育つ>

1998年、敦賀信人選手が長野五輪に出場以降、すべての冬季五輪に常呂町出身選手が出場(人口約5000人の街からオリンピアンを約20名輩出)

👇<応援者が増える>

・2006年、常呂町が他の市町と併合され北見市常呂町に。
・2010年、本橋麻里さんがLOCO SOLAREの前身であるLS北見を設立。
・2013年、旧カーリングホールがリニューアルし、国内最大の競技場数6シートを備えた専用屋内施設『アドヴィックス常呂カーリングホール』となる。

👇<選手が育つ>

2018年、LS北見が平昌オリンピックで銅メダルを獲得。
メンバー全員が常呂町出身者

👇<応援者が増える>

・同年、本橋麻里さんが代表となり、一般社団法人ロコ・ソラーレを設立。
・2020年、北見市に通年利用可能なカーリングホール建設予定(国の地方創生予算約6億円を獲得)

👇<選手が育つ>

割愛させて頂いた部分も多いですが、40年間、常呂町住民のカーリング愛があってこそ、「応援➡育成➡応援」という好循環が生まれ、スポーツの聖地になり得たのだと感じました。

リーダーのバトン

また、スポーツが地域資源として成長していくには、リーダーの存在が必要であり、長い期間にわたって地域に根差していくには、リーダーがそのバトンを受け継いでいくことも重要だと思います。

近年、この活動を先導している「マリリン」こと本橋麻里さんは、グローバル人財フォーラム2018にて国際アントレプレナー賞等を受賞するなど、この取り組みを通じてリーダーとしての才覚が認められています。

本橋さんのロコ・ソラーレの設立ストーリーなどは『0から1をつくる(講談社現代新書)』に纏められていますが、特に「露出が高く都市にあるスポーツでなければスポンサーがつかない」という常識を覆したことに感嘆しました。

特に、スポンサー集めに苦慮していた際に、皮膚科の先生が本橋さんに言った一言から、「都会ではできないこと」に気づいたストーリーにジーンときます。

(皮膚科の先生の一言)
「新しく(チーム)をつくるんだったら、地域に愛され地域を元気にするようなチーム。それになってくれるんだったら喜んで協力させてほしい。利益なんか別にいい。地元出身の選手が楽しんで挑戦してくれて、それで勝てばみんな嬉しい」

~中略~

仮に都会でのチーム結成だとしたら、「そこまで心を込めて応援してくれる方はいたのか」と考えてしまいます。正直自信ないです。損得抜きで地元のアスリートを応援してくれる。

その後、アルゴグラフィックス・藤澤CEO(北見出身)からも共感を得て、選手の海外遠征費などを賄える経営体制を創り上げました。

さらには、FacebookをはじめとしてSNSの活用や、オリジナルグッズ販売などの取り組みを通じて、マイナースポーツとしては異常なほどチームの知名度・露出度が高めることに成功しました。JリーグFacebookページでも投稿あたりのイイね数は1,000を超えればいいところですが、LOCO SOLAREは平均で1,000を超えています。フォロワー数はJリーグチームより圧倒的に少ないので、いかにSNS活用によってうまくコアなファンとつながっているかが分かります。

このように、近年では本橋さんがリーダーシップが目覚ましいですが、本橋さん同様、これまでも多くの常呂町の方々がリーダシップを発揮し、そのバトンを繋いできました。

いわずもがな、初代常呂カーリング協会会長・小栗さんのリーダーシップが常呂町のカーリング文化の始まりです。

本橋麻里さんも、もともとは小栗さんに誘われ、12歳からカーリングを始めています。 同じくロコ・ソラーレの吉田知那美選手と鈴木夕湖選手らが小学校で結成したチーム名の『ロビンズ』の名づけ親でもあるそうです。今の若い世代からも「小栗のおじさん」として愛され続けています。

そして、日本カーリング協会副会長・松平さんの存在も大きいと感じます。

1988年に旧カーリングホールができるまで、カーリングの設備はまったく整備されておらず、なんとプロパンガスに木の棒をつけてストーンにしていたそうです。松平さんは、まだ施設が整っていいないそのような時期に、カナダへ遠征し本場を学び、正式なカーリング文化を輸入しました。そのリーダーシップがあってこそ、日本において常呂町がカーリング文化を牽引し続けているのだと思います。

そして、そのような環境を活かし、1998年、敦賀信人選手が長野五輪の地で5位入賞を果たしました。

敦賀選手は今でも公益社団法人日本カーリング協会強化委員会副委員長を務め、名寄市立大学にてカーリングの講義を行い、次のカーリング選手の育成に携わっています。

このように、カーリング文化が常呂に根差す各ステージにおいて、リーダーシップを発揮した方々の存在があります。このように大切に繋がれたバトンがあるからこそ、40年に渡って、カーリングが常呂町を元気にし、また常呂町がカーリングを強くする、そんな好循環が生み出されたのだと思います。

そして、また元U22の選手などがそのバトンを受け取っていくのでしょう。

まとめ

北見市常呂町のLOCO SOLAREから、スポーツを活かしたまちづくりのヒントを得ようと思い、その取り組みを調べてみました。

そこには、一筋縄では到底真似できない、先人の情熱と、その情熱を紡ぐ住民のカーリング愛がありました。

今や、12万人の北見市のまちづくりの将来もに担う存在になったカーリング文化。北⾒市観光推進プロジェクトのほぼ全てのページに「カーリング」の文字が。

応援団がさらに増えたカーリング、LOCO SOLAREの今後の活動にも注目です!


気ままに更新をしています。マーケティング、フィンテック、スポーツビジネスあたりを勉強中で、関心があう方々と情報交換するためにnoteはじめました。サポートいただけると力がでます。どうぞよろしくお願い申し上げますm(_ _)m