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クリケットで3億人の聖地を目指すまち(栃木県佐野市)

【まちnote #29】栃木県佐野市

関東七名城のひとつに数えられる唐沢山城が有名な、人口約12万人のまち、佐野市。

戦国時代最強の武将・上杉謙信も落とせなかったと言われる山城は、壮大な高石垣に囲まれ、江戸まで見渡せる高台に築城されており、その風貌と景観が全国の城マニアを魅了しています。

そんな佐野市は、クリケットで国際ハブ都市を目指す取り組み「佐野クリケットチャレンジ!!!」を2018年から力を入れています。唐沢山城のように、クリケット界においても、日本の、ひいては世界の山頂を目指す佐野市をメモします。

※ちなみにスポーツとしてのクリケットのポテンシャルについては、こちらの記事に纏めていますので、ご興味があれば一読ください。競技人口は3億人、競技ファンは10億人超とも言われており、なんと世界には年棒30億円の選手も存在する、超メジャースポーツです(日本ではまだベンチャースポーツという扱いですが)。

クリケット普及の立役者

佐野クリケットチャレンジ!!!」が始まったのは2018年と比較的最近の動きではありますが、佐野市とクリケットのつながりが強くなったきっかけは、10年以上前に遡ります。

2008年、日本クリケット協会が佐野市を重点拠点として定め、佐野市に拠点を置いたことをきっかけに、2011年の「クリケットのまち佐野」サポータークラブ設立、2014年の佐野市による「クリケットのまち」というビジョンの制定、等につながっていきます。2016年には、「佐野市国際クリケット場」の設置が決定し、アジアカップ等の国際試合も誘致できるような環境が整いました。

このような、佐野市のクリケット普及を長年支えてきたのが、日本クリケット協会の事務局長である宮地直樹氏。宮地氏は、クリケット日本代表として活躍した後、協会でクリケットの普及活動を続けており、2008年からは市内の小学校でクリケット教室を開く等、長年に渡って佐野市のクリケット文化を育んでいらっしゃいます。

この宮地氏のクリケットを軸とした活動は、クリケットの本場スコットランドの議会からも表彰される程、世界的にも注目されているようです。

スコットランド議会による表彰にも繋がった、クリケットを活かした被災地支援を紹介する記事の中で、宮地氏はこのような発言をしています。

日本ではクリケットのつながりって本当に狭いですが、世界においてはそのネットワークは広さと深さを兼ね備えているんですよ。
(宮地氏)

スコットランド人と日本人のハーフであり、LSE卒でもある超国際派の宮地氏だからこそクリケットのポテンシャルに対する実感が強く、その実感が長年に渡る佐野市の活動に繋がっているのだろうと感じます。

佐野クリケットチャレンジ!!!

宮地氏の活動や、佐野市のコミットメントを背景にクリケット文化が普及してきた中で、それをさらに加速させる活動として「佐野クリケットチャレンジ!!!」が2018年7月にスタートし、まちをあげて「佐野=クリケットの街」というブランディングを強めようとしています。

本プロジェクトにおいては、様々なイベント・活動が行われていますが、その中心には、2018年にオープンした佐野市国際クリケット場(以下、SICG)があります。

SICGは国際規格を満たす国内では稀有な充実した施設であり、そこで練習できる環境を求めて、佐野市へ移住してクリケットの腕を磨く覚悟をした選手もいるほどです。

また、このSICGは、U19男子ワールドカップ東アジア太平洋予選の開催地にも選ばれるほど、国際的にも評価される場所になっています(※残念ながら、新型コロナの影響で大会は中止になりましたが…)。

SICGを軸にして、競技そのもの以外でも、クリケットを盛り上げる様々な活動が行われています。

例えば、地域とクリケッターの交流アンテナショップである「クリケットチャレンジ!!!ハウス」という取り組み。

地域住民やSICGを訪れるクリケット関係者向けのコミュニティースペースとしてカフェを併設。セレクトショップではクリケットグッズや佐野のお土産物を展示販売するそうです。

この拠点を通じて、佐野ファンがクリケットファンになったり、クリケットファンが佐野ファンになったりという、スルー・ザ・コミュニティー(ファンの熱量が、コミュニティを通じて知人や家族に伝播していくこと)が起きていくきっかけになるのではないかと感じました。

また、SICGを地域住民に公園として使ってもらうという面白い活動もあります。クリケットという競技に対してだけでなく、その施設や場所に対して愛着をもってもらうことができる、とても素敵な施策だなぁと感じました。

今後の挑戦

佐野市や宮地氏の挑戦は止まりません。

2021年にはクリケット協会の新事務所がオープンされ、そこに併設されたティールームでは、イギリスの伝統や文化も発信していくそうです。

「クリケットによるまちづくり」は、ベンチャースポーツ(≒マイナースポーツ)を軸にした地域活性化の活動として、これからさらに注目を浴びる活動になっていくのだと思います。

そして、まちづくりの文脈だけでなく、佐野市出身のトッププレイヤーが生まれる流れができると、将来的にはプロリーグ化、グローバルな移籍市場の発達など、スポーツビジネス領域でも注目を浴びる取り組みになるのだろうと感じます。既にそのポテンシャルを信じ、トッププレイヤーを目指す若い年代が増えています。

クリケットの山頂へ挑戦する機運を肌で感じながら、上杉謙信を跳ね返した城壁を眺め、美味しい佐野ラーメンを探すまち歩き、楽しいそうです。

はーいってみたいな。

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