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【勝手に和訳】Flight Of Icarus(IRON MAIDEN)

「イカロスの飛翔」。1983年発売のIRON MAIDEN4枚目のアルバム「Piece Of Mind(邦題:頭脳改革)」に収録されている曲です。ミドルテンポでメイデン独特の♪ダッタカダッタカ…が堪能できる1曲。

私は「イカロス」という主題には特別な思い入れがあるのだけれど、この曲は、もちろん好きだけど「イカロスもの」としてはイマイチでした。たぶん、ブルース・ディッキンソンが力強く歌い上げ過ぎているからなんだろうなあ…それが彼の魅力なんだけども、私にとって「イカロス」は悲哀の入ったものと刷り込まれているから。

イカロスというテーマ

私とイカロスの出会いは、NHK「みんなのうた」の「勇気一つを友にして」でした。後には音楽の教科書にも掲載されて広く知られているこの歌、1975年に放送されたのを直接聞いたのではなく、当時3歳くらいだった私に、おそらく急に寝かしつけか何かをすることになった父が歌って聞かせたのです。父が好きだったんでしょうね、きちんと歌詞を読み聞かせるがごとく…そして、私はわんわん泣きだした。情景がありありと見えたような覚えがある。事情はよくわからないけど、たったひとりで飛び立ったイカロスが地を離れ、海に出て高く高くおのれの勇気で力を振り絞って翼を動かし…ひとりで落ちて死ぬって!!うわーん!!! である。

わんわん泣きだした私に父はびっくりして、「お腹が痛いのか?どうしたどうした?」と慌てふためいたが、私が「イカロス…なんでやの…かわいそう…えぐえぐ」と言ったので、衝撃を受けたらしい。翌朝、他の家族に「ノゾミはおれが歌ってやった『勇気一つを友にして』を聞いて、大泣きやったんや。おれは歌ごころがあるんやなあ」と語っていた。そうやない、父よ。

それ以来、イカロスのことはずっと私の心に棲みついた。「勇気一つを友にして」を繰り返し聞いたのはもちろんのこと、子ども向けのギリシャ神話の本なども好んで読むようになったが、たいていはイカロスの勇気を讃えるものだったと思います。そりゃギリシャ神話の数々のえぐいエピソードは、子ども向けにはロマンティックに翻訳されるしかないよねえ。たしか中学生の頃に『ギリシャ神話小事典』(現代教養文庫)を読み、イカロスが罪人で牢獄から脱出するために翔んだと知って大ショックを受けた。この小事典が手元にも近隣の図書館にもないので証拠が提示できないのだけれど、勇気の話じゃないんかーい!と、とてもがっくりしたのでした。

イカロスがなぜ罪人になったかは複雑なエピソードが絡んでいるのだけれど、蝋の翼による飛翔には勇気を讃えるものと、奢って太陽(アポロン)に近づいて翼が熱で溶けることを忘れていた愚かさを教えるものと2通りあるんですね。私にとってのイカロスは上記の2通説と別に、たった独りで大地を離れて飛翔し、命を落とすという孤独さの印象がとても強いのです。なので、哀切のメロディーが合うと思っていたからIRON MAIDENの曲は、歌詞に哀切があるけれど、作品が強く讃える系なのでイマイチ響かなかったのかも。

Steve Overlandによる「Flight Of Icarus」

たまたまamazon prime musicを聞き流していたらSteve Overlandの「FM Radio Covered」をオススメされて、その中に「Flight Of Icarus」があったのです。あっこれだ!と思って。ブルースのあまりにも鼓舞系の歌い方で(それが彼の魅力ですけどね)消えていた哀切と孤独がある!スティーブ・オーバーランドは切なく歌い上げているので、私のイカロス像とぴたりとマッチしたのです。

勝手に和訳 「Flight Of Icarus」

大地を裂いて太陽があらわれる時、丘の上に老人の姿があった
曙光が大地にそそぎ 小鳥のさえずりが静寂を破る
狂した老人は怒りに燃える瞳でじっと見つめる

孤高の鷲のごとく 翔べる者はいるか
太陽に触れるほど 高く翔べる者はいるか

群衆の中からあらわれた若人は老人を見据え、翼をひろげて言い放った
父なる神の名において、私が翔んでみせようと

若人の瞳がぎらりと輝き 父に背く死出の旅へとその真白な翼をはばたいた

翔べ、孤高の鷲のごとく 高く高く翔んでいくがよい
翔べ、孤高の鷲のごとく 太陽に触れるまで高く翔ぶがよい

余談

①この曲のテンポと♪ダッタカダッタカ…は、身体をほぐすその場ジャンプにちょうどいいです(笑)。4分足らずですし、在宅勤務なので運動不足の人、身体がコチコチになっている人は1時間に1回、この曲で上半身をぶるんぶるんさせる感じでゆっくりその場ジャンプを。あるいは、上体ひねりも良さそう。

②トップの画像は、私が中学生の時に美術の授業で彫った「翼」です。その頃、何かで見たサモトラケのニケに惚れこんでいて、配られたいろんな形の石(ふつうの彫刻刀で彫れる程度の硬さのものだった)から、平べったいものを選んで翼にしようと思ったのです。しかし、図書室の図鑑やらを調べてもニケの翼が大きく載っているものがなく、泣く泣く美術の先生に「形がわかりません!」と言ったら、ささっと紙に見本を描いてくださった。最初、それは羽根だったので、「違います、翼。ばっさばっさするやつ」と言ったら「そら難しいな。ほんまやったら鳥をよく観察しなさいと言いたいけど…時間ないわな」とさらさらとラフを描いてくださった。

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それを元に彫り上げて、すごく気に入ってもう30年以上、どこに引っ越しても持ち続けてきたのだが、先日かたんと落として割ってしまった。なんたる不注意…!と嘆いたが、割れ目をよく見たら接着剤の跡が…前にも割ってるんじゃんw 今度は金継ぎで修正しようと思っています。蝋じゃないからな、修復するもん。

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