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BOZO MEKO RECORDSと「Flash It To The Beat」

【BOZO MEKO RECORDS】。いまだに正式な呼び名もその名の由来すらもわからない。でも、今も中古レコード店に行けば目にすることの多いレコードだ。しかし、このレコードは音質が悪い、極めてローファイ。はじめて聴いたときは、聴いちゃいけないものを聴いたような気がして引き込まれたのを覚えている。のちにわかるのだが、この音源はカセット・テープ・マスター(!)で、当時のブロック・パーティーかライヴ会場でライン録りしたものらしい。

こういう街角だけで流通していたブートレッグ・レコードは当時山ほどリリースされていたが、この【BOZO MEKO RECORDS】は、80年にリリースされ、のちにヒップ・ホップと呼ばれる音楽の種となって世界中にばら撒かれていった。

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【Side A】は10分にも及ぶオールド・スクール・クラシックスであるGrandmaster Flash & The Furious 5Flash It To The Beat」。79年にブロンクス・リヴァーで行われたライヴのライン録り?(おそらく普通にラジカセかなんかでスピーカーから直接録音したのではないかと推測される)。音が歪まくっているドラム・マシンのビートに乗せて歌ありコーラスありラップありでお届けするラップ・ジャム・セッション。こんな音質なれど、冒頭のカウント・ダウンはサンプリング・ネタの定番だし、ビートはDj Premierが「You Know My Steez」、Showbiz&A.G.が「Soul Clap」、The Beastie Boysが「Alright Hear This」、DJ Shadowが「The Number Song」で使用した。多くのヒップホップDJやアーティストがこのレコードを手本にしてきたことがわかる。82年には〈Sugar Hill Records〉から再録音されタイトルを「Flash To The Beat」としてオフィシャル・リリースされた。

79年にブロンクス・リヴァーで行われたライヴのフル・ヴァージョン。レコード化されたのは2分すぎから。

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【Side B】は、クレジットこそないが Afrika BambaataaAfrika IslamJazzy Jayによるラジカセ(?)を使ったテープ・エディットによるカット・アップ作品だ(この3年後に、ターテーブル・メガミックス・クラシックス「Death Mix」をリリースすることになる)。James BrownA Get Up,Get Into It,Get Involved」、MohawksChamp」そしてThe Dyke & The BlazersLet A Woman Be A Woman」を使用、いづれものちに発売されるヒップ・ホップの聖典『Ultimate Breaks & Beats』に収録されたものばかりだ。ターンテーブリストのRob Swiftや〈Stones Throw〉主宰のPeanut Buter Wolfらが同名の作品を発表している。

オリジナル・プレスは、ライト・ブルーとブルー・レーベル。リ・プレスがグリーン(82年)とレッド(02年!)・レーベル(グレイとホワイトもある)。こういうブートレッグ・レコードが02年に再発されることも驚きだが、08年に7インチ化されたことにはもっと驚かされた。

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