去年の世界人形劇祭で一番良かったカンパニー Bakélite

一人か二人でやっている、フランスのとても小さな人形劇団(オブジェクトシアター)Bakélite(https://www.compagnie-bakelite.com/) は、去年のシャルルヴィルの世界人形劇祭で一番プロ同士からの評判が高かった(私調べ)。大きな会場で上演されるメイン・セレクションとしではなく、フェス内フェスである「Panique au Parc」というちょっと中心から歩いた所にある公園内での小公演だったが、毎回長蛇の列だった。

前回2019年の世界人形劇祭ですでに彼らの作品 "Envahisseurs"(インベーダー)が話題になっていた。今回、世界人形劇祭の会場でスロベニアやイスラエルやチェコの人形劇場ディレクターたちとすれ違う度に「あのカンパニー見た? 見に行った方がいいよ」とお勧めされるので、とにかく行ってみた。なにしろ公園の中に張られたテントでやっているだけなので、会場を探すにも一苦労だったが。演目の名前は、「スター・ショウ」。

オーソドックスなオブジェクト・シアターのスタイル(といってもオブジェクト・シアターの歴史はやっと半世紀ほどで国や劇団ごとにスタイルもバラバラだから「オーソドックス」というのは多分おかしいので「なんとなくよく見るスタイル」と言い換えておこう・・・)。ピッタリした白の水泳帽をかぶった一人の演者が、日常生活で私たちがよく見かけるありふれたオブジェクトのかずかずを、「宇宙飛行士」という特殊な職業の「過酷な訓練」に見立てる。例えば、手ではアルミ缶の中に小さな人形を入れてぶん回すというどちらかと言えば馬鹿っぽい小さい動作をしながら、顔ではアルミ缶の中の人形(=無重力訓練中の飛行士)の極限状態のつら〜い顔を表現する。ほかにも、トイレの詰まりをガポッと取るヤツを宇宙船内の操縦桿に見立てたり、笑える見立てがたくさんあった。

オブジェクトシアターの要の一つは、物そのものの振る舞いやたたずまいの面白さをどれだけ発見できるか、またそれをどれだけかけ離れた意外なものと結びつけて迫真の表現ができるかということにある。その点で25分間のこの小作品はバッチリだった。日用品と宇宙旅行という組み合わせはかなりお馴染みのもので、テーマやストーリーにはなんら新しさはなかったかも知れないが、無駄なく、オブジェクトシアターの面白さを外さず捉えた作品で、観客みんなもスタンディングオベーションだった(公園の中のテント内だったので、スタンディングすると頭がつっかえた。)

いまもレパートリーに入っている作品「スター・ショウ」のパンフレットはこちら。https://8d29c827-3d7f-4f57-ab07-f201b22b5f30.filesusr.com/ugd/d4b85f_afaf897269ba4998ba77dba8c6dc5449.pdf

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