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ビジネスにおけるジェンダーギャップのリアルな声を知ってほしい

こんにちは。XTalent株式会社の松栄です。先日、IVSさんのPRについてジェンダーに関する議論が起こりました。ジェンダー関連セクターで立ち上がったスタートアップの一端として、これを機に少しでも多くの方にこの分野に興味を持って欲しいと思い、今回noteを書きました。

※ IVSさんの件についてはTwitterで「IVS」と検索していただければ、経緯が垣間見られるかと思います。また、先日公開された江原さんのnote、アンリさんのstand.fmはとても丁寧に的を射るお話をしてくださっているのでそちらをご覧ください。

私からは、これをきっかけに今ビジネスの世界で起きているジェンダーの現状を知っていただきたいと考えています。(そのためIVSのPRの良し悪しについては書いていません。期待はずれの場合はすみません...)

前提:日本は共働き世帯が一般的になった

共働き世帯と専業主婦世帯の割合は逆転しはじめ、平成29年時点では、全体の約65%が共働き世帯になりました(男女共同参画白書 平成30年版)。ですが、まだ男性の長時間労働、家事育児を主に担うのは女性といった価値観が残り、共働きを前提とした働き方は一般化していません。

一方で、新卒採用での性差別が減り、仕事に楽しさややりがいを感じキャリアを伸ばしたいと考える女性はかなり増えてきています。

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夫の会社に「フリーライド」される妻たち

今の日本では、男性が育児家事のために夕方17時に帰ることが許されている環境は多くありません。そのため、女性が家事育児の多くを引き受け、仕事をセーブするしかない現状があります。セーブの仕方は、時短勤務にする場合も、非正規雇用になる場合もあります。

でも、女性本人が仕事をセーブしたいと思っているかは別の話です。私たちは日々、働くママのキャリア相談を受けますが「子どもに負担を強要せずに、もっと仕事にコミットしたい、キャリアを伸ばしたい。でも現実はできない。」という悩みをよく聞きます。

・新卒から頑張ってキャリアを積んできたのに、出産して時短になっただけで実質、戦力外にされてしまった(異動等も含む)。
・責任ある仕事、チャレンジングな仕事はフルタイムで残業ができる人に割り当てられるため、自分のキャリアを伸ばしたいのに叶わない。家事育児をメインで担うのは自分なので今フルタイムにはなれない。
・残業して頑張っている人が評価され、短時間で成果を出しても認めてもらえない。
・仕事をもっとしたくて、お迎えで早く帰る分、子どもを寝かした後に仕事やインプットをしていたら身体を壊した。
・フルタイム残業できる状態に戻るまでキャリアは停滞したまま歳をとっていく。でも子どもが何歳になったら夫婦ともに残業が可能になる? 将来が不安でたまらない。

彼女たちは、仕事に情熱を持ち、自分のキャリアを伸ばしたいと思っています。「週に1〜2回でも夫がお迎えに行って子どもの世話をしてくれるなら、自分ももっと違う働き方、キャリアの積み方ができるかもしれないのに...」と悲しそうに話す方もいらっしゃいます。

自社の男性社員の平日の子育て参加を認めないことは、その妻のキャリアを毀損していることでもあります。妻の会社にフリーライドしていることでもあります。共働きなのであれば、夫も妻も子育てのためにどちらも時間制約が生まれる状態がフェアなはずだからです(女性が家事育児を担うべきと思うならそれがジェンダーバイアスです)。

※ 補足
細かい条件や違いはありますがざっくり言うと、認可保育園に預けられる最大の時間は11時間です。片道1時間の通勤時間なら最大9時間の預かりです。18:30以降は保育料にプラスして延長料金がかかります。また、公立学童は18時までの場合も多いです。両親ともにフルタイム残業は難しいのです。

結婚前からキャリアの不安を抱える女性たち

今の事業を始めて、就活生を含む20代の独身女性の悩みを聞く機会もとても増えました。

「将来結婚して出産したいのですが、出産しても社会で働き続けられるようにするには、今から何をしておくといいですか?」

「今の会社には、出産しても活躍し続けている女性がいません。コアな仕事から外され、毎日謝りながら退社する姿を見ていてとても苦しいです。」

「今の会社の管理職以上は男性ばかりです。私のキャリアアップを歓迎されている気がしません。私がここで頑張る意味はあるのでしょうか?」

これがリアルな20代女性の声です。

男性から「男性が上に上がれる気がしない」「(妻が)出産したらもう働けないかもしれない」といった声はほぼ聞きません。そこに『見えない差』があります。

能力が高ければ上がれるとは限らない。女性を引き上げる存在が必要

経営層など一定以上のキャリアを築いた女性に話を聞くと、よく聞く別の声があります。

「周りの男性はそれなりの成果で役職が上がっていった。自分が同じ成果を出しても役職は上がらず、誰も何も言えないくらい圧倒的な成果を出してやっと上に上がった。でもそれは絶対社内では言わない。本人たちは差別している意識がなく、難癖をつけられたと感じるから。」

また別の視点から、ポーラの及川社長も先日、日経さん主催の「ジェンダーギャップ会議」でお話されていました。成果を出している女性社員がいても、管理職候補のリストを出してもらうと無意識に男性社員しか上がってこない。まず女性を候補のテーブルに乗せることが必要と。(※ 記事では以下にもありました。)

また、ハーバード・ビジネス・レビューでも、上に上がるには女性には引き上げてくれる人の存在が必要と書かれています。

組織のトップに到達している女性があまりにも少ない、その大きな理由は、彼女たちがCスイートへのチャンスを得るための必須条件である高難度の仕事を得られていないことです。多くの場合、このようなステップストーンとなる仕事を得るためには強力なスポンサーを必要としますが、それを保証してくれないことが原因です。
女性が出世するために必要なスポンサーシップを確実に得ることは、ほとんどの組織にとって難しいことが証明されています。

今、多くの企業の経営層や管理職層は男性が占めています。それはつまり、リーダーを想像すると男性を思い浮かべやすい状態にあることでもあります。「次のリーダーは誰か」と考えた時に、女性を無意識に排除してしまっていないかを考える必要があります。

また、ビジネスの慣習として、飲みの席で仕事の内情が共有される、タバコ部屋で仕事の話が行われる、飲みなどを含め長時間一緒にいる同性後輩を可愛がり仕事の機会も与えやすい、等があります。こういった慣習は性別で情報格差を生み、仕事の機会にも差を生み出します

この行為が、女性のモチベーションを下げていることを知ってほしいなと思います。

男性が悪いのではなく「アンコンシャス・バイアス」が課題

こういうお話をすると「男性が悪い!」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。でもそれも違うと考えています。

これは、今まで生きてきた中で無意識に刷り込まれた考え方であり、慣習です。悪意を持って行っているわけではなく、自分自身が気づいていないものの見方の偏り、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)です。

また、今の世の中に苦しんでいる男性もいます。「男性は定年までフルタイム」「男性が稼がなければ」というプレッシャー、子育てにコミットしたいがその働き方が許されない苦しさなど、様々なものがあります。

「男性vs女性」にせず、また「こうあるべき」を性別で分けたり1つに決めてしまったりせず、それぞれが楽しく幸せに生きられる道をともに探していくことが大切ではないでしょうか。

「誰が悪い」ではなく、協力して変えていこう

正直、ビジネスの現場で起きるジェンダーの問題は多く、複雑で、解決が難しいです。お話したときによくあるのは、国が悪い、企業が悪い、個人の問題、などと誰かを指差して批判することや、「国が先に始めるべきだ」といった『どこから先に』話がされることです。

ですが、問題は複雑に絡み合っていて、誰かを悪者にしても変わりません。大切なことは、みんなが力を合わせることです。

それぞれができることを一つずつ。そうすることで全体が変わっていくのではないかと思います。

このnoteを読んでくださった方お一人お一人に、これをきっかけに少しでも考えいただけると嬉しいです。

そして変えていきましょう。多くの人が、自分の生きたい人生への選択肢を持てる世界に。




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