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小説「火の山」連載に当たって

 「火の山」の連載を開始します。

 「告白! 私はアスペルガーーーかも」とも連動していますので、もしよければ、こちらも併読してください。

 「火の山」の着想は今から四十数年前の三浪時代です。大学在学中に執筆と挫折を繰り返しました。それほど私にとっては大切な物語であり、また言語化が困難な作品でした。在学中に一応完成したのですが、それを知り合いの人たちに読んでもらったところ、一部の人が絶賛した以外、大半の感想は訳けが分からないといったものでした。それほど感覚的な小説だったのです。

 その後、予備校の講師となって、受験生に論理を教えてきました。毎年数百の入試問題を論理的に解き、頭の中で論理的に説明し、大勢の人たちに論理的に説明する内に、私自身の表現力が次第に変わっていきました。その結果、多くの一般書や学習参考書を執筆し、数多くのロングセラーを出してきました。しかし、私の胸中にはいつも「火の山」がありました。ある日、突然私の中に火がついたのです。2006年のことです。私は「火の山」を数週間で一気呵成に書き上げてしまったのです。今では分かるのですが、この感覚的、幻想的な作品を完成するには、論理の力が必要不可欠だったのです。

 知人から「盲導犬クイールの一生」で大ベストセラーの石黒健吾さんを紹介してもらいました。彼は丁度海外に出張する直前だったので、退屈紛れに飛行機の中で「火の山」を一気に読んでしまったそうです。面白くてやめられなかった、そこで、この本をプロデュースさせて欲しいとのことでした。話はトントン拍子に進みました。

 彼は当時講談社の編集部長で、数々の文学雑誌の編集長を歴任したY氏に「火の山」を橋渡ししてくださいました。Y氏も一息に読み終えたらしく、これを講談社で書き下ろし作品として出版させて欲しいとのことでした。初めての作品をいきなり書き下ろして出版することは異例のことなのです。Y氏は数々の芥川賞の受賞作品の水準を超えている、との評価をくださいました、ここに来て初めて、「火の山」が人に理解される作品にまでなったと、感動したことを覚えています。

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 私はこの作品がベストセラーになるか、芥川賞、直木賞を受賞することを期待したのですが、結果としてはどちらも期待はずれでした。講談社の営業は「カリスマ講師の初の書き下ろし作品」として、大々的に売り出したいとのことでしたが、Y氏は「この作品に変な色を付けたくない」とすべてを断ったそうです。また講談社ではすでに「火の山」というタイトルの作品を刊行しているので、題名を変えて欲しいとのことでした。そこで、ヒロインの名前「水月(みづき)」とタイトルを変えたのです。

 「水月」は一部の本屋の片隅にひっそりと置かれました。そして、誰にも知られないうちに、書店から姿を消していきました。Y氏はその時は売れなくても、いずれ評価される時が来る。もし、続編を執筆するなら、三冊まで無条件で出版するとまで言って下さいました。このY氏のご厚意は本当にありがたかったのですが、やはり私の死後売れたところで、あまり嬉しくはありません。

 noteで執筆を開始するに当たって、改めに「水月」を読み返したところ、まだまだ未熟なところが散見されました。しかも、「水月」は三部作の大長編になる予定だったのです。そこで、この機に「水月」のタイトルを、本来の「火の山」に戻し、まったく新しい作品として、執筆し直すことにしました。

 中有の世界を舞台とした、まだ誰も書いたことのない魂の遍歴であり、大恋愛小説であり、死後の世界が克明に分かる、私なりの「神曲」であり、罪と罰の物語であり、先がまったく読めない奇想天外な物語です。どうぞご一読を。

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