はじめてのウイルス第2章 「除菌」ってなに?
何事においても「インプット」と「アウトプット」は両方ないといけないと思っていますが、現在芝居でのアウトプットがなくバランスが悪いなと思っている代わりにウイルスのインプットとアウトプットがものすごく順調な矢部亮です。
最近ついた二つ名は「講習の人」です。
あ、あと「石と戦う男」です(尿管結石と格闘中)
さて、以前このnoteに書いた「はじめてのウイルス第1章」から月日が経ちまして、次何を書こうか迷っていたのですが、講習での質問や疑問などが多い順に答えていこうと思います。
でもこうやって改めて書こうとすると、根本の説明にたどり着くんですね。やっぱりアウトプット大事。
はじめてのウイルス第2章 「除菌」ってなに?
このご時世、やたらと目にするようになった「除菌」という言葉。
ドラッグストアに行けば除菌グッズコーナーで今まで見たことない製品の数々が並んでいます。
ざっくりですが皆さんのイメージは
「菌を殺す」「菌を少なくする」
といったところでしょうか。はい、正解です。
となると次に出てくる疑問は2つ。
①「殺菌」とはどう違うの?
②どの程度少なくしたら「除菌」なの?
です。
ではまず①から。
「殺菌」とは文字通り菌を殺すことです。なので、菌に効くかどうかが大事になっていきます。
それに対し除菌は菌を少なくするのが目的なので、殺す以外に「洗浄する」「ろ過する」「洗い流す」なども除菌になります。
で、殺菌という言葉は薬事法で使える製品が限られており、普通のグッズは殺菌という言葉が使えません。
なので、多くの製品に「除菌」という言葉が使われているのは
方法が広く、また法律に引っかからないから
なのです。
では次の②。どの位減れば「除菌」になるか。これなのですが、
具体的に何%減れば除菌というのはありません。
極論ですが、1億→9999万9999になっても除菌です。
なので、大事になっていくのが
除去率です。
ここで講習会で出すクイズを1つ。
微生物が1億付着しているまな板を、4つの洗い方で洗いました。
①水 ②中性洗剤 ③次亜塩素酸ナトリウム ④中性洗剤で洗浄後次亜塩素酸ナトリウムで消毒
その後まな板の微生物を数えると次のような結果になりました。
A-1200万 B-6万5千 C-600 D-50
どの洗い方がどの結果になると思いますか?
①→A と ④→D はなんとなくわかると思います。ここの正解率はほぼ100%です。
問題は残りの2つ。多い回答は
②→B ③→C
です。が、正解は
②→C ③→B
です。つまり、
中性洗剤の方が次亜塩素酸ナトリウムよりも除菌効果が高いです。
何故か。
これは除菌の定義にある、菌を殺さなくとも洗い流して減らせばよいに繋がります。
人間の手が触れる場所はウイルス・微生物と共に様々な汚れが付着します。これによってウイルスはガードされています。
殺菌効果のある成分が届かないのです。
なら汚れごと洗い流してしまえ、というのが最も除菌の効率が良いのです。前の章でお話した「アルコールよりも石けんの方が効果が高い」というのはそういう理屈です。
新型コロナウイルスに対し効果があるかどうかで論争になった次亜塩素酸水。
結論は「効果がある」という形に収まりましたが、事実その通り殺菌効果はあります。
ただし、洗浄効果はありません。
次亜塩素酸水の殺菌効果は
ウイルスの周りの汚れを取って綺麗にし、ウイルスが何にも守られていないむき出しの状態であること。
そこに対し、一定の濃度以上の次亜塩素酸水を使用して初めて効果があります。ご使用の際はご注意ください。
逆に言えばただの中性洗剤は洗浄効果はあれど殺菌効果はありません。が、いなくなってしまえばそれでよいのです。
一つ余談。
以前とあるニュースで
「除菌剤と謳っていた製品の中身がただの水だった!詐欺だ!」
というのがあったのですが、
あれ、定義上はセーフなんです。
だって水でも菌は減るから。
もちろん倫理的にはアウト。
ちなみにアメリカの清掃業界では消毒剤という意味の「サニタイザー
(Sanitizer)」という言葉があるのですが、これは明確な定義があって、対象菌を99.99%除去出来て初めてこの言葉が使えます。
が、日本ではそういうものが無いのです。
こういうこともあって、悪気のあるなしに関わらず、そんなに効果が高くない除菌グッズはたくさんあります。
皆様、購入する際はちょっとだけご注意を。
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