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ファミレス・イン・ホモ・サピエンス

今まさに丁度この時間(2024/1/24/17:22)ファミレスで文字を書いている。横、くたびれたカーテン。隙間から西日が入ってくる、眩しい。終わりを告げるために赤く赤く染まるさまはまるで死のようで、寂しい。眩しいし、寂しい。正面の席には高校生のアベックが。"始まり"のメタファーかと思った。4人掛けの席の片側に荷物を追いやり2人は並ぶ。俺は1人だってのに。学制服に身を包み、2人は並んでドリンクバーを取りに行く。着席してもうっすら互いを見つめ合う。何か話しているのだろうか。おいおい何話してんだよ、ちょっと聞かせてよ、いやほんとちょっとでいいから、この時期ってことはそろそろ進学笑?まだ進級かな笑?どうなん笑?
なぁ、目見ろよ。
てな具合の狂人仕草も若人の恋愛模様も、現代では娯楽の一つとして昇華し消化されてゆく。僕が見聞きし記したことは、読者の唾液でまみれている。ネットに転がる文字情報は流動食のように抵抗無くスルスルと喉を通るものだ。薄めに薄められた言葉の毒は私たちの身体に免疫を形成し、そして心を麻痺させる。ワインに泥水を一滴垂らせばそれは泥水だ、知らず知らずの内にこころの内側は藻まみれである。もう誰も思考に耐えられないのかもしれない。人1人の人生がコンテンツになり得る社会、内側の思考を外に向けた言語的腹躍りが最もネットでウケる時代に、大切に思考を手元に留めておく殊勝な態度はもう転がってないのではないかとさえ思っていた、少なくとも私は愚か側だからだ。今も丁寧に腹の毛を剃り、へのへのもへじを描いている。そんな最中横目にしたこのアベックは、スマホを持たず、イヤホンも着けず、2人だけの孤独を楽しみ、人目を憚らずチュッなんて下卑た雰囲気もなく、浮かべるアルカイックスマイルには慈愛と互いの愛する人だけを宿らせている。うわここに居るじゃん殊勝な態度の人間が。きっと人類にホモサピエンスなんて名付けたやつは鏡なんてみたこと無くて、ファミレスでこんな感じのカップルを見て名付けたんだろうな。ホモサピエンスと最初に名付けた知らん人、そしてそれをネタにする俺。我々の渾身の腹躍りはきっとアベックの前ではスベってます。
悔しい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
眩しくて寂しくて、悔しい!!!!!!!!!!
やるべき作業を全てほっぽりだして駄文を書き記し数十分、空は1日に終わりを告げ終え暗くなり、カップルは帰った。もう眩しくないけど、ただただ寂しくて悔しい。
はぁ、ドリンクバーでジュース混ぜよっと。

PS
わざわざワインに泥水を混ぜなくてもコーラにオレンジジュースを混ぜると簡単に泥水になります。

心の藻が育つ味



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