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TONEX ONE ~手のひらサイズアンプをざっくり紹介~

これです

楽器業界、もう色々出し切ったんじゃないかと思った矢先に「こんな機材が出るのか……!」と毎年のようにびっくりしているが、TONEX ONEは個人的にはここ数年間でも上位に入るくらいのインパクトがあった。

先日TONEX ONEを購入し、約1週間ほどいじったので感想を書いていきたい。

TONEX ONE とは?

TONEX ONEは2024年4月24日にIK Multimedia社から発表されたギター/ベース向けの機材だ。
タイトルにも書いた通り手のひらに収まるサイズでありながら、実機のアンプをモデリングしたデータが複数収録されている。

ただ、有名メーカーのアンプをシミュレートしたアンプをミニエフェクターサイズに収めたもの、ユーザーが所有するアンプやエフェクターをユーザー自身の手でモデリングする技術」等……手のひらサイズもモデリングもそれ単体では似たような機材はいくつもあった。

そしてなにより、IK Multimedia社も「TONEX」というPCソフトで上記のモデリング技術を展開している。
TONEX ONEはTONEX(ソフト)内のモデリングデータをPC無しで使えるようにハードに移したものだ(ちなみにTONEX ONEの4倍くらいの大きさのハード「TONEX PEDAL」が2023年に発売されている)。

言ってしまえば既存技術の掛け合わせになるが、これが意外と「こんなのがあったら良いのにな」というユーザーのツボを刺激したと思っている。

小型のアンプシミュレータはアンプモデルが固定のものが多く「2つの歪みアンプを使い分けたんだよな」と思ったときには2個買わないといけないし、モデリング、キャプチャ技術を持った既存の機材はエフェクターボードに収めるとなると難儀しそうな大きさの筐体が多い。

ミニサイズで~リアルなアンプに近い音がして~色々なアンプモデルに切り替えられて……今までの機材を1つにまとめた、何とも欲張りで夢のような話を実現してしまったのが「TONEX ONE」だ。

箱~本体の外見

これがTONEX ONEの箱と中身

定規で隠したところにはシリアルNo.

・本体
・使用ソフトインストール手順が書かれた厚紙(シリアルNo.付き)
・USB-C to C ケーブル(端から端で690mmくらい)

始めるのに必要な最小限のものを梱包したシンプルセット。
経費削減か環境配慮か、包装自体も段ボール要素多めのすっきりデザインだ。

本体サイズを手持ちのエフェクターと比較してみた。

左からPitchblack XS、Flashback Mini Delay、TONEX ONE、DC-3

公式サイトではTONEX ONEは幅48 x 奥行き94 x 高さ53 mmなのだが、一番サイズが近かったのが tc electronic の Flashback Mini Delay(幅48 x 奥行き93 x 高さ48 mm )。
量りが無いので体感になってしまうがTONEX ONEの方が少し軽い。

本体右手にINPUT ジャック、左にOUTPUT ジャック(ただしモノラルではなくステレオ対応している)、後ろに9VDC 2.1mmプラグまではよくあるエフェクターだが前面のUSB-C端子が特徴的。
ここにケーブルを差してPCと繋ぐわけだがここから給電もできるしモバイルバッテリーからの給電でも動く。

モバイルバッテリーは CIO の SMARTCOBY Pro PLUG

PCと繋ぐエフェクターというとDCジャックでの給電+USB端子でPCと接続するものが多く配線が煩雑になったが、これならPCの近くにTONEX ONEだけ置いて付属のケーブルを差して編集も可能だ。

電源ついでに書くと消費電流が120mAなのも個人的に嬉しいポイント。
昨今のデジタル機材は消費電流もスペックに応じて上がっており300mA、や500mA必要なものも珍しくない。
そうなると専用の給電アダプターだったり大容量対応したパワーサプライが必要になるが、それらを使わずに済むのは配線の削減になり、別で大容量デジタル機材を使いたい時に助かる。

ちなみに「スマホを繋いでも動くし音もTONEXから出てくる」という情報をXで得たが未確認。
情報元の画像がAndroidスマホを繋いでいたのに対し、びわ所有のiPhone13では接続しても認識すらしなかったからだ。
その辺はスマホ側の問題になるので気にはならない。

上部にはON/OFFスイッチ、ALTスイッチ、黒いノブ、透明ノブが3つあり給電すると上画像のようにALTスイッチと透明ノブが光る。

本体の操作感

結果から書くと、見た目以上には色々なことができると感じた。

例えば電源ONしたデフォルト状態では黒いノブでプリセットのボリューム、透明ノブではベース、ミドル、トレブルを操作できるが

ALTボタンON → 黒いノブでゲイン、透明ノブでゲート、コンプ、リバーブのレベル調整
ON/OFFスイッチ、ALTスイッチ同時押し → 透明ノブで本体保存されてるプリセットの選択
ALTボタン6秒長押し → 黒いノブでマスターボリューム、透明ノブでTONEX ONEのモード選択、キャビネットON/OFF、インプットレベルの調整

などなど……。

他にもあるが画像付きの説明書を読んだ方が理解が速いので詳細な機能を知りたい人は公式サイトからマニュアルをダウンロードしよう(説明放棄)。
後半に日本語解説が入ってる。

また、この手のモード切替でノブやスイッチの機能が変わる機材で注意したいのが「切替を間違えて別のパラメータを変えてしまった」というやつ。TONEX ONEはオートセーブ機能が付いているので特に気をつけたい(オートセーブ自体は便利であるが)。

サウンド

個人の好みとモデリングデータによって変わるので難しいが、びわが弾いた限りでは気になる点はなかった。

びわがTONEX ONEを買った理由の一つが「今持っているマルチプロセッサで作ったアンプサウンドが少し軽さを感じるから」というのがある。
現状、別のエフェクトモデルを前後がけした音を基準にしておりそれはそれで良いのだが、補正しないで済むのならその方が良い。

その点、TONEX ONE 1個挟んでオーディオインターフェースに接続しても不満の無い音がしているので素直に買ってよかったと思っている。

ただ前述のとおり「モデリングデータによって変わる」。
TONEXシリーズの売りの一つとして「ToneNETというシステムを使って世界中のユーザー間でモデリングしたアンプデータを共有できる」というのがある。
要は自分でアンプのモデリングを作れなくても誰かが収録したデータを使って実機をモデリングした音が再現でき、現にびわもどこかの誰かが収録したデータをほぼそのまま使っている。

びわがメインで使わせてもらってるモデリングデータ
PRSのArchonアンプにMesa 4×12キャビ、57マイク

TONEX ONEを購入すると「TONEX SE」というソフトを使用する権利が付いておりIK Multimedia社が収録した20種類のアンプサウンドを使えるのだが人によっては物足りないだろう(びわもその1人)。
上位ソフトの「TONEX MAX」ならアンプが100種類に増えるが当然お金がかかる(SEからMAXへのグレードアップができるかは不明)。

その点、ToneNETでのデータ共有はSEでもMAXでもできるので欲しいアンプモデルがあればToneNETを探してくる方が良いと思うが、何の機材をどういうセッティングでモデリングしたかはユーザー次第なので同じアンプ、キャビ、マイクでも差が出てくるところは注意。

気をつける点

散々褒めちぎった後だが、てこずった点やマルチプロセッサとは違う考え方が必要だと思った点もあったので書く。

ソフト関連の操作に慣れがいる

「TONEX ONEはTONEX(ソフト)内のモデリングデータをPC無しで使えるようにハードに移したものだ」と最初の方に書いた通り、基本的なデータ管理、編集はTONEX(TONEX SEやMAX)で行うのだが操作に少々てこずった。

・TONEX SE 自体はユーザー登録した後にインストールIK Product ManagerというIKサービスの管理ソフト(?)からダウンロード、インストールする
・TONEX SE についてはマニュアルが基本英語なので操作方法を半分勘で習得した
・TONEX ONEのOUT信号をオーディオインターフェースとUSB-C両方から出力して音がダブってめちゃくちゃになった(オーディオセッティング見直した)
・TONEX SE と ToneNET のリンクが上手くいかなかった(ログアウトして入り直したらいけた)

などなど……。

TONEX SEを立ち上げて最初に出てくるこれがオーディオセッティング
モニターするうえで超重要だが、使用環境によっても変わると思う

ハードの方に注目しすぎててソフトの方が疎かになっていたが、実際はソフトの方が何倍も重要だと気付いた出来事だった。

イコライザーの効きはアンプと違う

「アンプの実機をモデリングした」という表現を何度か使ってきたが厳密にいうと「収録時のアンプサウンドをモデリングした」が近いのかもしれない。
というのも、TONEX ONE にも TONEX SE にもイコライザーが付いているがそれはあくまで「TONEXソフト上のイコライザー」でありアンプのイコライザーのような挙動をしないからだ。
実機で例えるとアンプのツマミを全て固定した状態で前後に別で繋いだイコライザーを操作している感覚だ。

ソフト上であればイコライザーの周波数やリバーブの詳細等もいじれる

TONEXのイコライザーは通常のイコライザーと同様、変更した帯域周辺のブースト/カットがあるだけで全体の音色や印象としては大きく変化しないが、アンプのイコライザーはアンプの種類によっても効き具合が変わるし、ツマミの位置によっては別の帯域や歪みの効き具合も変わる。
最近のマルチプロセッサのアンプモデルもどちらかと言えば実機のイコライザーの効き具合を再現している印象だ。

なので「アンプのローがもっと欲しい!」とベースを最大まで上げても「ベースだけそのまま上がったなぁ……」というある意味当たり前の結果だが、実機やアンプシミュレーターを念頭に置いていた人にとっては残念な結果になることもある。

サウンドの傾向をイコライザーで大きく変えるのは難しいので、見直すのであればデータ自体を別のものにする方が良いだろう。
また、モデリングデータはアンプヘッドとキャビネット部分を分けて設定できるのでキャビネットを差し替えるのもアリかもしれない。

終わり

色々書いたがTONEX ONEは買ってめちゃくちゃ良かったし、「2024年に買ったものランキング」を開催しても上位5位には入るんじゃないかと今は思ってる。
なにより「えっ!? こんな機材出たの!?」とテクノロジーに心躍らせ、発売早々ワクワクしながら買った機材は本当に久しぶりだった。
びわもまだ1週間程度しか触っていないので色々なアンプデータを、なんなら歪みエフェクターやコンプレッサー等もモデリング、シェアできるのでアレコレ試して遊んで、ギターを弾ければと思う。

アレコレ試したくて結局色々繋いでいる図

よければ次回も読んでもらえると嬉しい。

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