そのまま

自分がどれだけそのままでいられるか、
他者をどれだけそのままで受け入れられるか、
は、難しいお題である。

先ずは自分について。

「そのまま」とは、「あるがまま」という意味で使っているけれど、
心には顕在意識と、潜在意識と、いわゆる超意識などの段階があるので
(認識しやすい粗い知覚と、普段は認識できない潜在的な知覚と、更に微妙な根元的な知覚、とでもいうのだろうか?)、
「そのまま」も、顕在意識が感じるそのままと、
潜在意識が感じるそのままと、
超意識が感じるそのままと、それぞれ別である可能性がある。

もちろん、顕在・潜在・超の三つの意識が同じように感じているのが最適な状態だろうが、自分自身にウソをつくことが多い現代人にはあまり多くはないだろう。

すると、例えば顕在意識で「皆とすっごく仲良くしたい」と宣言したとしても、

以前の上手くいかなかった人間関係から、潜在意識が『皆に嫌われたらどうしよう。きっと皆僕が嫌いなんだ。』なんて思っていたら、

更に超意識では『皆同じなんだから、仲良くても仲良くなくても同じだよ。』なんて感じていたら、

「そのまま」「あるがまま」がどれなのかよく分からない。

特に今の日本は、自分に素直であることすら難しいのではないかと想像している。
インド人は比較的好き放題やってるように見えるので、筆者も楽に生きているけれど、
日本の社会は発達し過ぎて、「こうあるべき」という視点が強いように思う。

日本人は根が素直で従順なので、
自分の中で『こうしたい』『こうありたい』と思っても、
周囲の意見や同調圧力で『そんなこと考えちゃいけないんだ』と自分の考えの方を否定して、「あるがまま」を認識できないことも多いだろう。

「『あるがまま』が我儘だったら悪である。」
と思う人もいるかもしれないが、
心自体のもっとも原始的な働きを感じてみれば、そんなことはないと解る。
「知覚している」というだけの状態では、良いも悪いも無いからだ。

知覚は鏡みたいなものだ。
先ずくもりのない鏡のような状態にして、その後で愛情や感謝のような明るい思考に通じれば、明るくて幸せな気持ちになれる。
反対もまたしかり。

ニュートラルな状態に戻す為には、心の中に染みついているものを顕在化して、それが間違った拠所に依っていると知って、無くさければならない。
その時には、一時的に悪く感じられる側面が出てきても、途中経過だと知って流すことだ。それに注意を向けてしまうと、抜けられるループも抜けられなくなる。

先ず、外からの既成概念をわきにおいて、
自分自身がどう感じているかを正直に認めて、表現することが、自然に楽に生きていく第一歩だろうと思う。

少しぐらい悪い子だって良いのだ。

最近ことに思うのは、他者のあるがままを受け入れるには、先ず自分に正直に生きていなければならない、ということである。

自分が感じることに制限をかけて、
「こうしなきゃいけない」と思って我慢していると、
その判断が、他者にも自動的に働いてしまう。
「私が我慢してるんだからあなたも」
というものである。

もう一つややこしいもので、
「相手が自分を批判しないようにするために、自分が敢えて我慢をしていることを見せる」というのがある。
これは段階を踏み過ぎて、ややこしくなり過ぎ。
自分も相手に合わせて作ってしまっているし、
相手についても、自分の期待する対応をする相手のイメージを作り上げてしまっているので、「ありのまま」から三千里も離れた相手を求めてしまうことも、あり得る。
もちろん、期待に添わない相手は「大っ嫌い」と受け入れられなくなる。

相手をそのままで受け入れるとは、相手がどんな様子でも、そのまま受用することだ。
良い所も悪い所も(良い悪いも自分の判断がかってにしていることだけれど)、「それで良いんだよ」と拒絶しないこと。

自分が他者に対する場合を考えれば、相手がそうしてくれることが、一番心地良い。

自分の良い所も悪い所も「それで良いよ」とそのままに受け入れて、
相手の良い所も悪い所も「それで良いよ」とそのままに受け入れる。

『自分に対しても他人に対しても、同じようにすれば良いんだ』と思えば、
少し簡単になったような気がしないかな?



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