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続・夫婦で小さな塾「Dear Hope」を開いた話  ~いま、ここで、考える力~

 こんにちは。教育家夫婦が開いた小さな塾「Dear Hope」です。
 いつも記事をお読みいただき、ありがとうございます。

 この記事は、副塾長(夫)が書いています。

 今回は、夫婦で小さな塾「Dear Hope」を開いた話の続編として、指導方針、つまり塾生たちに指導を行う上で私たちが大切にしていることをご紹介したいと思います。

「本わかり」を大切にした指導を行っている

 私たちは、塾生に対する教科指導(授業や家庭学習の管理・アドバイス)において、「本わかり」を大切にした指導を行っています。
 「本わかり」とは、塾長が東大時代にお世話になった南風原(はえばら)先生によるお言葉です。先生は、教育学部長を経て東大の副学長にまでなられました。その副学長に在任されていたとき、先生は「東大入試のあり方」について、インタビューで次のようにお答えになっていました。

(南風原) 高校の各教科で習う内容を「本わかり」、つまり本当に深く理解すれば解けるように、難しい用語は出題しないなど、高校教育に配慮しながら作問をし、そして時間をかけて採点をしています。

──「本わかり」とはどのようなものですか。

(南風原) 本質的な理解を示します。「要するに何なのか」ということを自問して答えられることです。
 東大の入試問題は、高校の各教科で習う内容を「本わかり」、つまり本当に深く理解すれば解けるように、難しい用語は出題しないなど、高校教育に配慮しながら作問し、そして時間をかけて採点しています。「本わかり」とは、本質的な理解を示します。「要するに何なのか」ということを自問して答えられることです

──東大の一般入試でも「本わかり」を問うているのですね。

(南風原) 東大のアドミッションポリシーに、入試の基本方針として「知識を詰め込むことよりも、持っている知識を関連づけて解を導く能力の高さを重視」するとあります。これは、高校の学習を「本わかり」するように取り組んでいれば解ける、ということです。加えて、(15年に就任した)五神真総長は、「自ら原理に立ち戻って考える力」「考え続ける忍耐力」「自ら新しいアイディアや発想を生む力」の3つの基礎力を鍛えることを求めています。これらは、高校での学びにも通じることだと思います。
高校生新聞 ONLINE(2016. 06. 10付)より抜粋

 勉強するときに、「結局それはどういうことなのか」と掘り下げ自分のものにしていく過程は、とても大切だと考えています。私たち自身、まさにこの「本わかり」の状態を基準に自ら学習を進めてきたことから、先生のお言葉に接して我が意を得た思いでした。

「本わかり」は応用力を高めてくれる

 さまざまな知識や公式をただ暗記したり、やみくもに裏技的なテクニックに走ったりしてしまうと、応用力が身につかず、合格につながらないことがあります。本人は一生懸命勉強しているつもりなのに、です。
 なぜそのようなことが起こるかというと、表面的な暗記では、いま目の前にある問題が、覚えた知識や公式、テクニックが使える問題だと気づけないからです。東大をはじめ、出題能力の高い大学の入試問題の「難しさ」の要因は、まさにここにあるのです。

 教科書に書いてある公式や定理について、それらの成り立ちを深く理解しても、そのこと自体が入試で問われることはほとんどありません。しかし、そのような深い理解は、難しい問題をいくつかの比較的平易な問題の組み合わせに「解体」する手助けになったり、より考えやすいモデルに「変換」するためのヒントを提供してくれたりするのです。

 私は、日ごろから東大をはじめとする難関大の入試問題に接していますが(主に数学を扱っています)、教科書を深く理解し、そこに書いてある知識を適切に組み合わせることができれば、十分に合格点がとれるのです。言い換えれば、東大が求めていることは、まさにアドミッションポリシーのとおり、誰よりも細かい知識を知っていることではなく、誰でも目にするような知識を自在に応用できることなのです。

 実際に、今年Dear Hopeから東大に合格された生徒さんは、合格体験記に次のように記してくれました。

 最初は、基本的なことを深く勉強するということは、応用問題を解かないことなのかと不安になったことがありました。しかし結局、本質的な理解を積み重ね、それらを組み合わせていくことによって、応用問題が難しい問題ではなく、簡単なパーツの組み合わせなんだと気が付くことができました。

 もちろんこのことは、東大入試にばかり当てはまることではありません。良質な問題を出題する大学の入試では、すべからく、学習内容を「本わかり」していることが大きな効果を発揮します。

 繰り返すようですが、難しい試験に臨むからといって、難しい過去問や難しい問題ばかりを解かなければならないわけではありません。まず、目の前の教科書などで易しいと思って読み飛ばしていた部分について、「本当に自分は理解しているのだろうか」、「他人に説明できるのだろうか」と意識しながら、その問題や教科書の一文に向き合って欲しいと考えています。このようなプロセスを通じて得た深い理解は、難しい問題を解くための土台を固めてくれます。この結果、入試でも安定して合格点を得点できるはずです。

 同時に、深く理解することによって、宇宙の法則を垣間見たり、さまざまな発見を行ってくれた過去の先人の偉大さ感じて、喜びや感動に繋がる勉強体験ができると信じています。

「いま、ここで、考える力」を養いたい

 私たちDear Hopeは、「本わかり」を通じてどのような教育を行いたいと考えているかというと、「『いま、ここで、考える力』を養う教育」です。
 基本的・本質的な事項を「本わかり」することにより、初めて見る問題に対して根本的なところから多角的に分析できるようになり、問題解決の力が高まります。これが「応用力」がある状態です。この応用力は「いま、ここで、考える力」と言い換えることができると思います。

 人生や仕事、特に知的生産などクリエイティブな活動を行う中で出くわすさまざまな問題は、「これが正解です」という正解が与えられる性質のものではありません。自分の頭を使って、もちろん他人の助けもいただきながら、その場で自分なりに考えて、最善と思える答えや選択肢を選ぶことによって、人生が進んでいくものだと思います。
 人生の問題は、入試問題とは中身が異なりますが、ものごとの本質を理解したうえで問題の根本に立ち返り、「いま、ここで、考える」ことによって解決していくという点で共通していると言って差し支えないと思います。
 「本わかり」を意識した勉強を通して学習内容を自在に応用できるようになり、結果として受験で望ましい成果を得る、という経験は、人生や仕事の問題に出くわしたときに応用力を発揮する上で有用な経験だと思います。そのためにも、「本わかり」の喜びや感動を、ぜひ高校時代のうちに体得して欲しいと願っています。

 今日は、私たちDear Hopeが「いま、ここで、考える力」を養うことを狙いとして、「本わかり」を大切にした学習指導を行っている、という当塾の指導方針についてご紹介させていただきました。

 なお、「本わかり」については、塾長(妻)がYouTubeでもお話しています。こちらか、ページ下部のサムネイルから動画にアクセスできますので、よろしければごぜひ覧ください。

 今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。


 このnoteでは、教育家夫婦が開いた大学受験の小さな塾「Dear Hope」のスタッフが、大切にしていることや、日々考えていることなどを書き記していきたいと思います。

 今後とも、よろしくお願いいたします。

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塾長のYouTubeチャンネル「東大卒講師・伊藤智子の心が軽くなる勉強法」はこちら


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