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ここがバチボコ底であれ。

2020年2月26日 14時40分頃。
通勤カバンに入っているホログラム加工の厚紙が、ただの紙になってしまった。
それまでは夢の時間への招待状だったのに。

その夜行くはずだったPerfumeの東京ドームライブが中止になったことを知った時、
私は都内の某地下鉄の駅から地上に出たところにいた。
仕事で打ち合わせに向かう途中だった。
定時まで職場にいると開演に間に合わない見込みだったから、
打ち合わせ終了後直帰しても問題ないよう内外のスケジュールを調整していた。
けれどその努力も一瞬で意味を失くした。
同日京セラドームで開催予定だった別のライブが中止になったというニュースを、
地下鉄の車内で見た時から心に薄曇りが掛かっていたものの、
いざ現実になったその時、ショックはいとも簡単に予防線を飛び越えた。
駅から客先まで徒歩で向かう15分間、ずっと涙が止まらなかった。
涙の痕を隠した分到着予定時刻は少し過ぎてしまったが、打ち合わせは滞りなく終了し、
当初の予定よりずっと早く自由の身になってしまった。
駅まで向かいながらまた涙が出てきた。

その日ドームで連番する予定だった友達とヤケ酒を煽ることにした。
待ち合わせ場所に向かっている途中、
3月に行く予定だったabingdon boys schoolのライブツアーの日程未定の延期が発表された。
時間も早かったのでハッピーアワーがあるお店で、ジャンボグラスの梅酒を呑んだ。
開演予定時刻だった18時30分頃、3月1日のTETSUYAライブの延期が発表された。
甘いものでも食べようとお店を変えて、高さ20cmはあろう大きなパフェを食べている時、
L'Arc~en~Cielのツアー残り全公演の中止が発表になって、完全に心が死んだ。
横浜アリーナでのファンクラブ限定公演は、唯一自分がファンクラブで掴みとったチケットだった。
一緒にいた友達は元々ラルクで知り合った仲だった。ひたすら傷を舐め合った。
パフェは美味しかったはずだけど、グラスの下の方にあったキャラメリゼされた何かを崩すスプーンの感触しか思い出せない。

あの日からもう1週間が経つ。
けれど、半年以上待ち焦がれてきたいくつもの楽しみが、たった数時間で打ち砕かれた衝撃からは未だに立ち直れずにいる。
たかが趣味にここまで落ち込むなんて我ながら情けないとも思う。
されどそれがあったから仕事でどんな理不尽な目にあっても耐えられた。
それがなくなってしまった今、生きているだけでえらいと、心の中でコウペンちゃんに言わせている。

今回の件に関して絶対に全員が納得できる決断は、多分誰も出せない。
文字通り人命もかかっている。
だから延期や中止という決定を下した人たちを責める気はない。
だからといって、どうしようもなく寂しい、悲しい、虚しい気持ちは消せない。
特にラルクは8年ぶりのツアー、
absはツアーどころかワンマンライブですら10年ぶりだった。
なんで今なんだろうな。

新型コロナウイルスは、私からいくつもの大切な時間を奪って、大きなトラウマを残した。
それは、どんなに自分の体調を整えて、休みや早退に支障が出ないよう仕事を調整して、天気がよくて、アーティストのコンディションも良くて、会場が設営されていても、
そのライブが行われるとは限らないというトラウマ。
多分これは向こう数年残り続けるキズだと思う。

延期を発表したところはもちろん、中止を選んだアーティストでさえ、
次があると言ってくれている。
けれど今はまだ「次」を信じることすら難しい。
新しい公演が発表されても、また今回のようなことが起こったら、良くも悪くも自分や周囲の環境が変わっていたら、「次」は迎えられない。
そんな悲観から逃れられない。

ただし悲劇のヒロインになるつもりなんて毛頭ない。
今いるのが底の底だと信じて、這い上がれるようになりたい。
早く次の希望を信じられるようになりたい。
1週間ずっと同じところで思考がぐるぐる廻っているけれど、文字にしたことで一旦切り離したい。

心がついてこないなら、身体を動かすしかないと決めて、
昨日5月のJAPAN JAMのチケット先行申し込みに応募した。
今回見られなくなったアーティストが見られるわけではないけど、
掴んだチケットがライブでの喜びや感動に替わる体験を一刻も早く取り戻すために。

5分以上考えたけど〆にうまいこととか言えそうにないから終わり。
半券が切られていないチケットを持ってるうちは死なないとだけは決めた。

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