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『理論と実践でわかる職場の教育』 読書メモ

この記事は先日開催された技術書典9で購入した、『理論と実践でわかる職場の教育』の読書メモになります。

第1章:指導者のハマりやすい失敗

「ネガティブなフィードバックをしてしまった話」といきなりハードな書き出しですが、自分の今の環境が恵まれているのかあまりこういったことがなくこの章に関してはあまり共感することができませんでした。

ただ逆に言うと自分は周りの人に対して無関心なところがあるため、何か熱意を持って他の人のあり方を変えようと思うことがほぼ無いのかも?と気づかされました。

あと面白いなと思ったのが「1.4 自分で勉強すべき」で「頑張っている自分だから価値がある」ではなく「すごい人じゃなくても価値があると考えられる、これで良いと思える気持ち」「ありのままであることが受け入れられる」といった、そこに個人としてあるだけで敬意を払う価値があるという視点に関して触れられていて、もうこの時点でこれはいい本だ、なんて思ってました。

どうしても専門職だとその専門性の有無や習熟度で価値観が構築されてしまうことが多々ありますが、それ以前に人間としてそこに生きているだけで本来リスペクトされるべき対象であるという前提を共有していると不要なディスコミュニケーションを生まずに済むんじゃないでしょうか。

第2章:教えるときのひと工夫(基礎能力編)

定型業務に対する上手な教え方は飲食店のバイトなどを思い浮かべながら読むと結構分かりやすかったです。

実際当時自分が学生の頃に受けた研修メニューはこの章に書かれていることと共通点がかなり多く、こういった形で文章化されているとその研修の背景などが見えてきて面白いですね。

あとは認知的徒弟性の6つの方法も興味深く、自分自身が学習する際にもこれを意識して当て嵌めれば効率アップできそうです。

認知的徒弟性
・モデリング
・コーチング
・足場かけ
・明確化
・振り返り
・探究

第3章:教えるときのひと工夫(応用能力編)

・学んだことを応用できない

・学んだことを自分の言葉で説明できるようになること。
・またそのためにできの良い成果物とできの悪い成果物を見せて、出来がいい理由を聞いてみる。

この二つは自分が学習する際にはよく意識していますが、いざ教える立場になると準備が大変そうです。

ハンズオンなどのまとまった時間で教えるならば問題ないですが、日頃の業務で取り入れようとするとコードレビューの際に良い設計を提示して考えさせるぐらいしか思いつかないですね…なにかうまい方法があれば良いのですが。

あと自分が学習する際にも特に設計周りにおいて良い成果物を用意するのが困難なことが多々あるのですが、世のエンジニアの方々はどうやってこの問題を乗り越えていらっしゃるのでしょうか?

体系的に学習できるコンテンツをご存知の方がいらっしゃれば是非ともご教授いただきたいです。

・自分で考えて成長してほしい

この章のテーマがある意味教える側にとってのゴールとも言える題材いうこともあり、この書籍のほぼ半分を使って解説されています。

学習者に立ち止まって、自分の行動を振り返って考えてもらうために、学習者が自分で学ぶための仕組みを整備することが必要と語られています。

具体的には学習者の時間を確保して、振り返りのフレームワークを提供して振り返りをしてもらうことが最も手軽にできる方法だそうです。

ここでもベースとなるのは自分の実践したことと習熟者との違いを比較することで、気づきや学びを記述し課題を抽出し、それを次回以降に取り組むループを作り上げることが重要になってきます。

これ、アジャイルとかスクラムの文脈でも似たようなことをよく聞きますね…?
最初はどうやって仕組み化すればいいんだなんて思ってましたが、そう考えると一気にとっつきやすくなりました。

これは本当に時間を確保することが一番重要そうです。
逆に言えばそれさえできてしまえば他に大きな制約はなさそう。

最初だけグループワークや1on1などでフォローしフレームワークを学習者に染みつかせて、最終的には自分のなりたい理想像を組み立て、そこからの差分を抽出して学習目標にし、勝手に成長していくみたいなことができるようになるといいですね。

言うのは易しなのかもしれませんが…

第4章:教えるときのひと工夫(内容編)

「何を身に付けるべきかわかっていない」というのがこの章のテーマなのですが、まさに今自分が悩んでいたことでした。

自分が今している仕事や組織に対してどんな貢献ができるだろうかというのは最近よく考えています。

その上で自分にできることを増やそうと現状の職位・視座からもう一歩上に上がろうと思ったとき、役割が大きく変わるので何をしたらいいのか見失いかけてしまいます。

理想としては自分でできることを見つけることなのですが、自分の場合はそれに時間をかけ過ぎる傾向があるので、やはり一番良いのは本書にも書いてある通りさらに上の視座を持つ人と「身につけて欲しいことの認識合わせをする」ことが重要なんだろうと気づかされました。

最後に

自分も教える立場になり、その勉強のためにと購入した書籍ですが、むしろ自分自身の学習のために役に立った点の方が多かったかもしれません。

ページ数はそこまで多くないながらも教える・教わることに関する大切なことがギュッと詰まっており、自分が教わる立場で行き詰まったらまた本書を開きたいと思えるようなとても良い本でした。

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