夜
いつもと同じ夜だった。
じめじめとした梅雨特有の暑さが僕を襲う。
ベッドが湿っているように感じる。
横を見ると、窓が開いていた。
昼間の雨がベッドに降り注いでいたようだった。いつもと同じ夜は、少しだけ憂鬱な夜に変わった。
ふと、ケータイの音が静寂の時を止めた。
誰だろう、こんな時間に。
少しの憂鬱と少しの期待を抱いて、ケータイを開いた。
「なにしとる?」
僕の淡い期待は裏切られた。仲が良かった友達からのLINEだった。正確に言えば仲が良いのだが、最近少し距離を置きたくなってしまっていた。
しかし、夜に予定があるわけでもない。
「暇しとるよー」
そう返すと、すぐに準備を始めた。
「遊ぼうよ、俺酒飲んどるで車出せんけど。」
こういうところだ、彼のたまに出るこういうところが気になりがちなのだ。
だが、ちょっと楽しいかなと思ってしまう自分もいるため、程なくして準備を終える。
「今から行くわー」
そう言って僕は家を出た。
「うぃー」
「あざーす」
中身のない感謝と共にコーヒーを渡される。
まあ。さっきまでのことは無礼講だ。
許そう。
彼はもう一人の仲のいい友達に連絡してあるようで、迎えに行こうという。
そのまま5分ほど車を走らせると、ケータイが光った。
「新着メッセージあり」
ケータイを横目で見つつ信号で止まらんかなあと思う。
また少し走ったところで、赤信号に捕まる。
急いでケータイを見る。
「今暇?」
今度は仲のいい女の子からだった。
よく男2人とその子で遊ぶ仲だ。
やっぱりな。心の中で思う。いつもそうだ。仲の良かったやつと出かけると、すぐにそれよりも楽しそうな誘いが来る。
ここまでが、いつもと同じ夜だ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?