見出し画像

OneTempoを通してビジネスとテクノロジーの融合について考える

自己紹介

電通デジタル プラットフォームコンサルティング部口脇と申します。
本記事はDentsu Digital Advent Calendar 2021の16日目の記事です。
私はアパレル業界の事業者側で10年以上ECビジネスに携わり、デジタル関連業務を網羅的に経験してきています。またリアル店舗の販売員や店舗運営ビジネスも経験しており、オンライン、オフライン両方の目線を持ち、両チャネルが連携することの強みや、実現の難しさを経験してまいりました。これらの経験を活かして、現在電通デジタルにて、オンラインとオフランを繋ぐ役目を担う、店舗DXサービス開発に従事しています。

事業者側の目線をもちながら、ビジネスにテクノロジーは必要なのか?OneTempoを題材にビジネス×テクノロジーを考えていきます。

※OneTempoとは電通デジタルで提供している店舗ビジネス向けのDXソリューションサービスです。

旧店舗ビジネスの現場

一昔前は、店舗運営ビジネスを行なっている企業にとって、テクノロジーという言葉は縁遠い存在でした。スマホが普及しEコマースが旺盛になるまでは、全てがアナログ運用で「管理システム基盤」しか存在していませんでした。

店舗では顧客管理も手書きの台帳でしたし、商品の倉庫から店舗への出荷指示も1SKU単位(在庫管理上の単位)で入力しなければなりませんでした。販売状況の分析や店舗別の売れ筋や特徴など結果でしか判断できず、店舗スタッフの評価も結果でしか判断できない状況でした。

結果に至る過程には様々な原因があります。在庫の配分ミスによるロスや店舗スタッフのスキル不足やモチベーションの低下、商品力や店舗設計、VMD(店舗内ビジュアル)など様々な要素が重なった結果です。それらがどのように関与しているのか、結果に至った原因は何のか?これらが正にブラックボックスで分析するデータ自体が無いため、推測でしか判断出来ませんでした。商品が良ければ売れるという商品至上主義の中で、商品を作るMDと、営業、販促で衝突したものでした。

まさに、業務を遂行する上で必要最低限のシステムと人力を前提としたレポート類の作成や管理業務など、本業である「モノを作って販売する」ことに全社員がどれだけ集中できたかは疑問です。顧客を第一に考えるというよりも、どのようにもっと売上を上げるかを追求する風潮があり、システムとデータは「企業で利用する為だけ」に使われていました。

現在の店舗ビジネスの現場

テクノロジーが進化することで、今まで見えなかった要因が紐解かれ、一つ一つ知ることが出来るようになってきました。私の直近のアパレル企業での経験では、ストアカウンターを導入し、毎日の来店数を把握することが出来るようになりました。これだけで、接客数(自己申告)と売上件数と照らし合わせてCVRが算出され、ECのようにKPIをもって店舗ビジネスが運用されるようになりました。スタッフの人数の最適化や接客スキルが可視化され、運営に活かされ「改善」ができるようになりました。

また、MAを導入し、店舗とEコマースの会員データを統合し、シナリオメールを送ることも出来ていましたし、社内ではEコマースの商品画像を利用して、店舗の商品売上ランキングレポートを作成するなど、文字だけのレポートから画像付きのレポートへと変貌しました。

原因を特定するための材料が揃い始め、精度の高い予測を可能にしてきています。過去の属人的な「感覚に頼る判断」から、精度が高く再現性のある「数値を基にした判断」へと変化し、ビジネスにおける競争はより深い分析が出来る企業が勝つ時代へと変移してきています。

小売業においても、商品開発に力を入れるだけでは勝てない時代。併せてテクノロジーを活用し、商品開発の精度を高め、利用者の声や行動を分析することで、求められる体験を創出しビジネスに取り入れる、そんなブランド(商品)戦略+テクノロジーのハイブリッドな戦略が求められています。

テクノロジーやデータは顧客を中心に活用され、顧客との継続的な関係性創出やそれを測る指標である「LTV(ライフタイムバリュー)を上げる事」が目的として使われるようになってきています。

画像6

データ利活用の変化

ビジネスにおけるテクノロジー活用

事業者目線で求めるDXは、今までの非効率であった作業を効率化するという「デジタイゼーション」とデータを活用してより深く顧客を知り、顧客にとって便利で快適なサービスを開発するという「デジタライゼーション」の2種類があります。どちらも重要な施策で、企業のビジネスにおけるフェーズや規模感、企業風土によって選択肢は分かれます。

店舗ビジネスを行っている小売業では、効率化による省人化よりもテクノロジー競争が起きている現代においては、便利で良い体験を提供するデジタライゼーションにより早く取り組む必要性が増しているのではないでしょうか?早く取り組むほどに知見やデータが蓄積し、DXが前に進み、競合優位性を得ることになります。

しかしながら、DXやテクノロジーのビジネス活用フェーズはまだ入口、それを実施できる企業文化や組織、人材が整備されていないのが現状です。(一部の企業は進んでいますが)

これは当然の流れで、小売りビジネスを行ってきた企業(商売の専門家)にとって、システムやテクノロジーは畑違いで、DXが叫ばれる以前は人材として確保する必要もなく、今の現状を予知できる経営者は稀で、DXに遅れざるを得ない背景であったと言えます。要するに、近年急速にテクノロジーの進化が進み、「ビジネスへの存在感を高め」もはや「無視できない存在になった」という社会環境の変化だといえます。

しかし、何もしなければデジタルディスラプター(新たなテクノロジーを活用し、既存のビジネスモデルを破壊するプレイヤー)や競合に勝てなくなりビジネスが衰退するのは明白。DXを一歩ずつ前に進め、全社をまとめ上げ「DXへの合意形成を成す」事が、今企業には求められています。

テクノロジーのビジネス活用をまとめると、大きく4つに分類されます。

1. 分析するためのデータ取得技術
2. 効率化のためのシステム化・自動化
3. 新たなサービス・体験を創るため既存ビジネスにテクノロジーを組込み
4. 今までにないサービス・体験を創るためテクノロジーを創造的に活用

例えば、AIはこれら全てに活用できる技術であり、テクノロジーをどのように使うかはビジネス課題とアイデア次第という事になります。

このようにビジネスにおけるテクノロジーの活用範囲は広く存在しますが、「その技術をどの場面でどのように活用するか」というビジネスとテクノロジーを繋ぐ役割を担う人が必要になります。DXが叫ばれる昨今においてはこの役割を担う人がどこまでビジネスを理解しているか?によってマーケットフィットの深度に違いが出て来ます。テクノロジーを扱う人とビジネス課題を探求する人が両輪となりアイデアを創る事がDXでは必要な要素です。

これらの背景を踏まえて、ソリューションベンダーではなく、DXコンサルでもないDX推進機能を提供するために、これらの得意領域を持つメンバーが集まり、ビジネス課題を設定し体験を創り、ソリューションに落とし込む事が出来るOneTempo(店舗DX)を立ち上げました。

OneTempo(店舗DX)とは

本当に店舗で必要とされるソリューションは何か?どのような数値を必要とするのか?どのようなシチュエーションで顧客に使ってもらえるのか?店舗スタッフや顧客の行動や利便性を想定したシナリオ設計を行ない、さらにデータ利活用を可能にするソリューション開発を行なっています。

画像2

オンラインとオフラインを繋ぐOneTempo(店舗DX)のポジション

私はAIをはじめとするテクノロジーに精通しているわけではありませんが、ビジネスにおける需要の在り処は分かります。このビジネス目線とテクノロジーの知見が融合して初めて価値のあるソリューションが見出せると考えています。OneTempoチームではそんな違う領域のメンバーが実運用レベルで活躍する仕組みに落とし込み魅力的なソリューション開発を進めています。

OneTempoソリューション例

一例を挙げると、OneTempoソリューションの一つである「オンライン接客ソリューション」は、店舗の販売員を対象としています。本社のスタッフも会議室などで対応は可能ですが、商品知識だけではなく、商品の説明の仕方(売り方)を知っていてコミュニケーションスキルを保有する店舗スタッフが最適だと考えるからです。

店舗スタッフはいつもの接客力をオンラインのユーザーに提供でき、さらにデジタル武装として、顧客の情報を見ながら接客することが出来ます。例えば、属性はもちろん、購入履歴や問い合わせ履歴、行動経緯など、顧客の情報が1画面に集められたダッシュボードを見ながら接客することで感覚や経験ではなく、確かな情報を基にした精度の高いアドバイスや提案が出来るのです。

画像3

オンライン接客とダッシュボードの仕組み

そして、オンライン接客終了時、常に顧客からの評価を受ける機能を付けることでサービス水準の可視化や顧客満足度の把握、高い評価の店舗スタッフの接客分析によるトレーニング活用など様々な効果が期待できます。

オンライン接客では、どの店舗のどのスタッフがどれくらい売上に貢献したか、接客回数や接客時間をどれくらいの時間を費やしているかなど、貢献度や管理においても判断できるようになります。企業側では、この店舗スタッフの貢献度を対価や評価で還元することで、店舗スタッフのデジタルへのネガティブな意識を壊し、モチベーションを上げ、上質な対応を接客時に提供することで顧客体験の向上に繋がります。

画像4

ダッシュボードのイメージ

顧客はファン化し継続的に企業やブランドのファンであり続けてくれるため、収益にも反映するといったループを創り出すことで新たな収益の柱になり得ます。

テクノロジーを応用すれば、画像分析では顔の表情でネガティブかポジティブか判定出来ますし、AIで最適な商品を提案することも可能になります。顧客満足度に重きを置いている企業や商品点数が膨大で様々な組み合わせがあり人間では処理しきれない場合に、AIが代わりに分析し結果を返し選択の道標を提供するという活用法です。

画像5

テクノロジー活用のイメージ

まとめ

この例のように、テクノロジーを活用する上でまず考えなければならないのが顧客体験です。テクノロジーをただのツールとして導入するのではなく、そのサービスを通じてどのような価値を出来るか?を考え、それが実現できるソリューションや機能へ落としていき、顧客の課題を解決できるか?という発想から生まれます。テクノロジーとUXは、表裏一体で存在し、ビジネス視点で提供する顧客体験を創造することが店舗DXでは必要なプロセスだと考えています。

以上のように、ビジネスにおけるテクノロジーの活用は、ソリューションが先行するのではなく、人(使う側、受ける側)が中心となり、手段としてテクノロジーを活用し、サービスを受ける顧客へより良い顧客体験を提供する事をゴールに定めて、繰り返し改善していく、そのようなDX推進が正しいプロセスでありOneTempoではそれを実践しています。

画像6

OneTempo全体像

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!