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杉田水脈総務省政務次官、過去の差別発言撤回謝罪するも反省の色は見せず

杉田水脈・総務政務官は12月2日の参院予算委員会で、過去に同性カップルについて「生産性がない」と月刊誌に寄稿したことや、「チマ・チョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさん」などとブログに投稿したことをめぐり、謝罪と撤回をすると表明した。 
一方で、同性愛者らへの差別だと認識しているかについては明確に答えなかった。
 杉田氏は、「私の過去の発言などに対する厳しいご指摘、ご批判について重く受け止めている」と発言。
松本剛明・総務相から、謝罪と表現の撤回をするよう指示があったとして、「私としても内閣の一員として、それに従い傷つかれた方々に謝罪し、そうした表現を取り消します」と話した。 
一方で、福島氏の「差別だと認めて、撤回・謝罪するということか」との質問に、杉田氏は「それも含め、しっかり精査して対応してまいりたい」と述べるにとどめ、差別だとの認識は示さなかった。 
今回杉田氏が謝罪・撤回したのは、同性カップルや民族衣装をめぐる過去の2つの主張だ。 
一つ目は、2018年8月号の月刊誌「新潮45」で、同性カップルを念頭に「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がない」などと寄稿した内容。
 もう一つは、2016年2月にスイス・ジュネーブで開かれた国連の女性差別撤廃委員会に関するブログ記事の一部。一部の参加者について「チマ・チョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります」などと揶揄する表現を記載していた。
 杉田氏の答弁を受け、福島氏は「総理の資質が問われています。内閣の一員として不適格です。罷免すべきではないですか」と問うた。
岸田文雄首相は、「内閣の一員になった以上は政府の方針に従ってもらわなければなりません。過去の発言については政治家の責任で、説明責任を果たしてもらわなければいけない」と述べるにとどめ、更迭しない考えを示した。
今までの国会答弁では、「私の拙い表現で不愉快にさせたことを、お詫びしますが差別する意図はありませんでしたー」と薄笑いしながら答弁していた杉田政務次官だが、前日の北大アイヌ・先住民研究センター長加藤博文教授「発言の撤回がなく、この考え方のままであれば、アイヌ政策を担当する総務政務官にはふさわしくない。岸田文雄首相の任命責任は大きい」と指摘したことにより自らの立場が危うくなったことで、慌てて総務省長官に命令したことで、杉田政務次官の過去の発言撤回謝罪に繋がった。 
杉田政務官の差別発言問題は、いま開かれている臨時国会において何度も追及を受けてきたが、杉田政務官はそのたびに頑なに撤回・謝罪することを拒んできた。 
しかし、11月30日の参院予算委員会での答弁があまりにひどく、ネット上でも批判が殺到する事態になっていた。  
岸田政権は、大臣の辞任ドミノにはじまり、秋葉賢也復興相の「影武者」疑惑や岸田首相を筆頭とする「空白領収書」など問題が次から次に噴出して、対応に追われている。
杉田発言問題についても、当初は逃げ切れると高をくくっていたものの、30日の参院予算委員会答弁で批判が放置できないくらい広がったため、「謝っておけ」と指示するにいたったということだろう。  
実際、11月30日の参院予算委員会での杉田政務官の答弁はあまりに酷いものだった。
その筆頭というべきものが、アイヌ・在日コリアンへの侮蔑発言への弁明だった。  
杉田氏は、2016年2月にジュネーブで開催された国連女性差別撤廃条約に参加したアイヌ民族や在日コリアンの女性たちについて、杉田氏が当時、自身のブログで〈国連の会議室では小汚い格好に加え、チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります〉などと露骨な民族蔑視投稿をおこなっていた。 
この問題を立憲民主党の塩村文夏参院議員が追及したのだが、杉田議員は発言を訂正・謝罪することなく「事実ではございます。ただ、このときは私はまだ国会議員ではなく、一般人でございました」と、答弁をおこなったのだ。  
まるで一般人ならば、どんな民族差別をしてもなんの問題もないかのような物言い。
これだけでも大問題だが、加えて杉田氏は当時、一般人などという立場ではなかった。 
杉田氏は2012年に日本維新の会から衆院選に出馬し比例復活で初当選。
2014年に維新の分裂に伴って次世代の党に参加したが、その年の衆院選で落選。
その後は「前衆院議員」という肩書きで活動し、産経系メディアなどで歴史修正主義発言を連発する前衆院議員の論客として持て囃されていた。 つまり、「前衆院議員」として差別を垂れ流していたのに、それをネグって、「私はまだ国会議員ではなく、一般人でございました」などと開き直っていたのである。 
 だが、酷い答弁はこれだけではなかった。
同委員会では、杉田氏が2014年10月31日に本会議において「男女平等は絶対に実現しない反道徳の妄想」と発言した件についても追及されたのだが、杉田政務官、今度は「当時、現在とは異なる政党に所属をしていた」などと答弁したのだ。
維新や次世代の党にいたら、差別発言や陰謀論が許されるとでもいうのか。  
さらに、同じ2014年10月の内閣委員会で杉田氏が「日本に女性差別というものは存在しない」と発言した件を追及されると、杉田政務官はこう答えた。 
「日本には命にかかわる酷い女性差別は存在しないという、そういう趣旨でございます」  
この国にはDVをはじめとして「直接的に命にかかわる女性差別」が存在するし、SNS上では権利を訴える女性たちに対する誹謗中傷などの攻撃や、経済的格差による女性の貧困問題など、命の問題にかかわりかねない女性差別も存在する。 
ところが杉田政務官は、この期に及んでも「日本には命にかかわる酷い女性差別は存在しない」などと口にしたのである。 
そして、極め付きは、杉田氏がおこなった伊藤詩織氏に対する攻撃についての答弁だ。
伊藤氏が受けた性暴力について、英・BBCの取材のなかで杉田氏が「あきらかに女としても落ち度がある」と発言したことについて追及を受けると、杉田政務官はこう言い放ったのだ。 
「BBCのインタビューを受けたのはいまから4年前でございまして、当時は刑事裁判におきまして不起訴ということになっております。そしてまた、検察のほうも不起訴相当ということになっておりまして、当時は性暴力というのはございませんで、性被害者というのも存在していないというふうに思っております」  
周知のとおり、伊藤氏が山口敬之氏に性暴力を受けた事件では、安倍官邸の圧力によって刑事事件化されなかったものの、民事訴訟では東京高裁が「合意なく山口氏が性行為に及んだ」と認定している。 
また、杉田政務官に対しても、当時、伊藤氏に対する誹謗中傷ツイートに25も「いいね」を押したことが伊藤氏の名誉感情を傷つけたとして、今年10月、東京高裁が賠償命令の判決を下している(杉田氏はその後、最高裁に上告)。  
だが、こうした事実を杉田政務官は無視し、「当時は性暴力はない」「性被害というのも存在していない」と強弁。いまだに伊藤氏答弁をおこなったのだ。  
つまり、こうしたあまりに酷い答弁に、ネット上などで厳しい批判が広がったため、岸田政権が杉田政務官に謝罪を命じ、杉田氏も昨日2日の参院予算委員会でしぶしぶ形だけの撤回・謝罪に応じたのである。  
しかも、杉田政務官が撤回・謝罪をしたのは、在日コリアンやアイヌの女性たちに対する発言と、「LGBTには生産性がない」発言の2つだけ。そのほかの発言については2日の予算員会でも「反省している」と口にしつつも一切撤回しようとせず、開き直り答弁を続けた。  
たとえば、「男女平等は絶対に実現しない反道徳の妄想」という発言について、あらためて民社党の福島瑞穂党首が発言の意味について問いただしたのだが、杉田政務官は「(当時の)党を代表しての発言」などと答弁し、11月30日と同じような主張を繰り返した。
これには福島党首が「党は変わっても、あなたはあなたでしょ」と突っ込んでいたが、まさしくそのとおりだろう。  
また、「日本に女性差別というものは存在しない」「日本には命にかかわる酷い女性差別は存在しない」という答弁についても、杉田政務官はまたも「世界各国には日本にくらべて女性が厳しい立場に置かれている国々があるという趣旨だった」「女性差別がより深刻な国があることを強調したいための表現だった」などと何の説明にもなっていないゴマカシを続けた。  
しかも、撤回・謝罪するとした発言についても、「差別発言だと認めるか」と福島党首に問われると、杉田政務官は「しっかり精査して対応していく」と答弁。「差別発言だった」とは認めなかった。 
 だが、問題なのは、いまだに反省の色もない杉田政務官だけではない。最大の問題は、このような差別主義者を、適当に撤回・謝罪させて罷免することもなく、総務大臣政務官を続投させている岸田首相にある。  
実際、昨日2日の参院予算委員会では、「男女平等は絶対に実現しない反道徳の妄想」という発言の意味を問われた杉田政務官が「(当時の)党を代表しての発言」だったと言い張ったが、岸田首相も一緒になって「内閣の一員になる前の発言。別の党にいたときの発言」などと答弁。 
挙げ句、杉田政務官について、岸田首相は「職責を果たすだけの能力を持った人物と判断した。政府の方針に従って職務に専念してもらう」などと言い、更迭を拒否したのだ。  
これだけの差別言辞を垂れ流してきた杉田氏を、「職責を果たすだけの能力を持った人物」などと評価する岸田首相──。
しかし、それも当然なのかもしれない。というのも、岸田首相の“ブレーン”だと囁かれているのが、杉田政務官と近い小川榮太郎氏だからだ。 
 小川氏といえば、熱心な安倍応援団のひとりであり、杉田氏の「LGBTには生産性がない」発言を“性的マイノリティを認めるなら痴漢の触る権利も保障せよ”なるヘイトの上塗りで擁護した人物だが、「週刊文春」(文藝春秋)は今年9月、「岸田氏にとって小川氏は、安倍氏を支持してきた右派の中では、ほぼ唯一と言っていい“ブレーン”」だと伝えている。 
そして、この小川氏は、11月25日に自身のFacebookで、12月15日に開催されるという「衆議院議員杉田水脈さんを育てる会」の告知を投稿。そこでは、このような杉田政務官への応援メッセージを寄せている。 
〈みんなで杉田水脈議員の応援の輪を広げよう!選挙のたびに安倍晋三先生が死守した杉田さん。他の自民党重鎮たちは、杉田さんが目障りで仕方がない。イデオロギーで叩かれる存在は自民党の大概の連中にとっては邪魔なんです。公認を渋る執行部を叱責して杉田さんの議席を守ったのは安倍氏その人でした。私はその実態を詳細に知っている。イデオロギーと本気で戦う政治家は、安倍さんと杉田さんしかいなかった。巨木である安倍さんが倒れたあと、杉田さんの議席と社会的名誉を死守するのは、私たち保守の責務だと信じます。〉  
平然と歴史修正主義と差別を振りまく杉田氏を、自ら自民党に引き入れ、中国ブロック比例名簿実質1位で当選させた安倍晋三・元首相。
そして、熱烈な安倍応援団を自身のブレーンに重用し、安倍元首相亡き後、よりにもよって杉田氏を総務大臣政務官に抜擢した岸田首相。 
つまり、政治が差別を是認するという異常な状況を生み出した「安倍的なるもの」は、こうして脈々と岸田政権にも根を張っているのだ。 
差別主義者をのさばらせ政務官に据えつづける、岸田首相の判断を看過することはできない。即刻、杉田氏を政務官から更迭するのはもちろん、いまだ安倍氏の極右差別主義思想に縛られ続けているこんな総理大臣は一刻も早く、権力の座から引きずり降ろさなければならない。
『杉田水脈議員の差別言動はマイノリティ女性にも向けられてきました。2016年2月、ジュネーブで開催された女性差別撤廃委員会による日本審査に出向いた杉田水脈氏(当時は議員ではなかった)は、審査に参加していたマイノリティ女性たちに悪意に満ちた差別言動をとり、それを自身のブログで公表しました。その言動が6年後の今、参議院予算委員会における塩村あやか議員の厳しい追及で明らかにされました。杉田水脈氏の差別言動の標的にされたマイノリティ女性たちは、上記予算委員会での杉田氏の不誠実な回答にあらためて憤りを感じています。女性たちとともに人種・民族およびジェンダーに基づく複合的な差別と闘ってきたIMADRは、杉田氏にその言動への謝罪を直接行うよう求め、杉田氏を政府要職に任命した岸田首相に即刻解任するよう促し、また、その言動をヘイトスピーチとして認めることを避けた法務省に対して、その真意の説明と再考を求める公開要請文を送付しました。』と12月2日に国際人権NGO反差別国際運動が公開要請文を出した。杉田総務政務官は、平成28年、みずからのブログに、国連の会議に参加した時のことについて「チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。同じ空気を吸っているだけでも気分が悪くなる」などと掲載し、先週2日の参議院予算委員会で謝罪し、撤回した。 
杉田政務官は6日の衆議院総務委員会で「過去の私の発言などに関する厳しい指摘について非常に重く受け止め、配慮を欠いた表現を反省している。ブログの記事はすでに削除した」と説明した。 
また、杉田政務官は同じ時期に、待機児童問題をめぐって、インターネットのニュースサイトに「旧ソ連崩壊後、コミンテルンは息を吹き返しつつある。子どもを家庭から引き離し、保育所などの施設で洗脳教育をするという失敗したモデルを日本で実践しようとしている」などと投稿した。 
これについても「記事をウェブに掲載する会社に対して、削除を依頼した」と述べた。 
そして「ほかの過去の発言についても、傷ついている方々がいる可能性があるものや、明らかに内閣の方針に反しているものなどはできるだけしっかりと精査を行い、適切に対応していきたい」と述べた。
安倍晋三が残した負の遺産を払拭するためにも、過去の差別ツイートを削除せず放置しているような反省の色が見えない杉田水脈総務省政務次官を辞職させなければならない。

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