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ポスト・チャンドラー主義

経営学という分野は今日において、とても身近な学問になりました。マーケティング、テイラーの科学的管理法や、マズローの5大欲求は皆さんは一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
しかし、経営学は他の学問と比べて、かなり歴史が浅い学問です。哲学は、古代ギリシャ時代には存在していた学問ですから、始まりは紀元前400年ぐらいです。また、数学も同じ時代にもう存在しています。それに比べて、経営が論じられるようになったのは、第2次産業革命がはじまった後ぐらいですから、19世紀以降です。企業という単位が誕生し経営学がはじまったのも、人類の歴史から考えたら、目と鼻の先です。
そんな経営学ですが、現在の経営学の型を作ったと言われている人がいます。それはアルフレッド・チャンドラーというアメリカ人です。今回は経営学の父、アルフレッド・チャンドラーについての知識を少しお裾分け。

アルフレッド・チャンドラーの略歴

アルフレッド・デュポン・チャンドラー(Alfred DuPont Chandler)は1918年にアメリカで生まれました。彼は1936年にハーバード大学に入学し、歴史学を専攻してします。その後、1950年マサチューセッツ工科大学の研究助手を勤め、同大学の教授に就任。マサチューセッツ工科大学を退職後、ジョブ・ホンキンス大学の歴史学教授に就任しましたが、1971年にジョブ・ホンキンス大学を退学し、ハーバード・ビジネス・スクールの経営史学教授に就任します。1989年、彼の学問への業績が認められ。同大学の名誉教授に就任します。そして、2007年に他界しております。

アルフレッド・チャンドラーの業績

彼のやってのけた業績は、一言でいうと、経営学(とりわけ経営史)に学問としての地位をあたえたことです。チャンドラー以前、経営史なんてものは、歴史学からも経済学からも、注目されることがなく。孤立してました。彼が研究職についていたのは1950年代でありますから、20世紀半ばまでは経営学なんて学問は、人気のない学問だったのです。しかし、そんな彼の経営史へ向き合い方(研究方法)がすごかったんです。彼の研究方法には、大きく二つの特徴があります。

①大企業を生み出した企業家的活動にはっきりと焦点を当てたこと
②何百という企業における構造変革を比較したこと

彼の研究方法は、他の学問分野の方々にも注目されました。彼の著書である『経営戦略と組織』(企業比較)は、マネジメントを学ぶ学生にとってほとんど「バイブル」となり、『経営者の時代』(産業比較)は反トラストに興味のある法律家にとって有効なものになり、『スケール・アンド・スコープ』(国際比較)は国富を大きくするための組織能力の重要性を強調し、ケイパビリティなどを提唱していた経済学者に自信を持たせました。彼のおかげで、経営学は他の学問とのつながりを持つことができ、学問的地位を確立することができました。

実は身近なチャンドラー

実は、彼は私たちの身近な概念を作りあげています。それは、”規模の経済性”と”範囲の経済性”です。彼は『スケール・アンド・スコープ』にて、この二つの概念について論じています。”規模の経済性”と”範囲の経済性”をまとめると以下のようになります。

規模の経済性:規模を拡大することによって、単位当たりの生産コストが低下すること
範囲の経済性:複数の活動を行うことによって総コストが低下すること

この二つの概念を企業としての戦略として用いた企業は、第2次産業革命の時代において、市場を支配するような大企業となっていったということを彼は主張しています。この二つの概念は、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?実は現在の大企業は、この二つの戦略を取った経緯があって現在に至っているということが言えるのです。


いかがだったでしょうか?経営学というとドラッカーが有名だとおもいますが、チャンドラーにも注目してほしいということでこういった記事を書きました。もっと知りたい方はチャンドラー著の『組織は戦略に従う』をお勧めします。ちょっとお高いですが、経営学の古典に位置しているものになりますので、手に取ってみてください。


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