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論文レビュー「両手利き組織研究のミクロ基礎(以下省略)」1−1

今回は、明治大学からの論文です。タイトルは『両手利き組織研究のミクロ基礎-認知の二重処理,実践理論,組織の記憶-』です。noteのタイトルに収まりませんでした。ご了承ください。小林一教授、滝本(金井)優枝教授です。です。

1.はじめに

本稿の目的は,マーチ 0.March)によって示唆された組織学習の探求と活用のジレンマが実際にどのように処理されているのかを,日本の大手スーパーマーケットの事例に依拠しながら明らかにすること。

組織学習の探究と活用のジレンマの事例に依拠しながら明らかにすることである。組織学習の探求と活用のジレンマとは,新しい未知の技術やニーズの探求 Cexploration) と既存の技術やニーズを深掘りする活用 Cexploitation) との聞に, トレードオフ関係が存在すると言うこと。

→探究と活用には、トレードオフがある。対立するわな。そりゃ。

近年の研究では,活用と探求の両立が企業の事業成果にプラスの影響を与えうることが明らかになりつつある。この活用と探求の双方を追求できる組織能力を両手利きCambidexterity) と呼んでいる。

両手利きについては以下のようなことが指摘されている。

・逐次的両立(時間的分離)
そもそも探求と活用を同時に追求することはできないのであるから,探求の時と活用の時とを分離していくというもの。
これは継起的な切り換え(断続的平衡)という見方に基づいている。インクリメンタル・イノベーションとラディカル・イノベーションが交互に登場するといった議論などは,この継起的な切り換え(断続的平衡)の見方に近い。
・同時的両立
何らかの工夫をして,活用と探求を同時点で達成しようというもの。その工夫の一つは,構造の分化。構造の分化とは,別個の組織単位に活用活動と探求活動を分割するというもの。
もう一つは,組織が同じ組織単位の中で活用と探求を両立できるようなメカニズム(コンテクスト)を整備するというもの

以上のように,活用と探求のパラドクスはそもそも解消されうるのか,解消可能であるとすれば,どのように解消されうるのかについては様々な知見が提示されている。しかし,この間いに対する回答を一律に出すことはできない。

→作者たちの問題意識は、活用と探求のパラドクスを一律な答えを出したいってことだ

その理由の一つに、組織におけるどのような活動を探求(あるいは活用〉と見なすのかという学習概念の操作化の問題がある。

→その答えはこれ。

本稿では,探求と活用とを認知心理学の二重処理過程 (dual-processing)の枠組みとハイデガ一流の実践理論(Heideggerianpractice view)の世界観を援用して概念化する。

・二重処理過程の枠組み
人の認知処理を Xシステム(システム 1,自動的処理)と Cシステム(システム 2,制御的処理)の 2つからなるものと理解する見方
・ハイデガー流の実践理論の世界観
実践行為を居住モード (dwe1lingmode)と建築モード (bui1ding mode)の 2つに分けて理解する立場

これらの見方を援用して,組織学習における活用 (Xシステム,居住モードに対応)と探求 (Cシステム,建築モードに対応)の 2つの概念を操作化する。

→操作化とはなんだ?活用は認知科学で、探求を哲学で考える感じか。

II. 認知のニ重処理の枠組みとハイデガ一流実践理論の世界観

認知の二重処理の枠組みとは,個人の認知処理には,自動的処理(システム1)と制御的処理(システム 2) という, 2つのクラスターが存在するという見方のこと。

Xシステム
モジュール的認知
・モジュール的認知
・自動的処理
・経験的
・ヒューリステイクス的
・潜伏的/暗黙的
・連想的
・システム 1(直感的)
・無意識的
・臨機応変/衝動的
・刺激反応的
・ファースト
Yシステム
Cシステム
・高次の認知
・制御的処理
・合理的
・系統的(分析的〕
・明示的
・ルール参照的
・システム 2(分析的)
・意識的
・反省的
・高次の次元
・スロー
出所:Evans (2008), Dual-Proccssing Accounts of Reasoning, Judgment, and Social Cognition, Annual Review 01 Psychology, Vol.59, p. 257 (一部加筆修正)

→ファストアンドスローだ。

組織学習の活用は前者に関わり,探求は後者に関わっていると想定している。

他方,ハイデガ一流実践の理論によれば,人は日常の実践行為にあたって多くの認知資源を投入することはしない。我々の日常の実践活動を支配しているのは没入的/非熟慮、的な対処(absorbedjnondeliberate coping) である。これを実践の理論では,居住モード (dwellingmode) と呼んでいる。これに対して,時として,人は完全なブレークダウン(障害)に遭遇する。この時、日常世界は客観視され,プラクティショナーは日常世界から一歩身を離して,多くの認知資源を投入してその障害に対処することを迫られる。これが脱離的対処 (detachedcoping)である。この状況は建築モード (buildingmode) と呼ばれる。

日常では解決できない障害が起こると、人は建築モードに入る。建築モードを特徴づけるのは,脱離的対処(自分が住み込んでいる世界からの離脱による分析)である。

システム1ー居住モード
システム2ー建築モードの図式で成り立つね。


今日はここまで!

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