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研究レポートvol.7.0『マーケティングにおける 中心価値の変化』まとめメモ

今回は、専修大学教授の石川和男さんの論文をまとめたメモになります。この論文は2015年の『専修ビジネス・レビュー』に掲載されたもので、誰でも閲覧可能なので、興味をもったら是非原文に目を通してみてください。

私が簡単にまとめると、マーケティングにおけるパラダイムの変化には

・価値創造から価値共創へ
・製品・サービスの提供だけでなく利用・使用までの管理が必要
・顧客からステークホルダーへ
・受動的な顧客ではなく積極的な顧客を想定すること

が起こったそうです。全体的にマーケティングに付随する概念の解釈拡大が起こったということが言えると思います。

はじめに

4Pというマーケティング概念が誕生して、20年以上になるが、新しいマーケティングの発想が誕生している。
➡VargoとLuschが提唱したService Dominant Logic(SDL)

本稿では、これまでの製品を中心としたGoods Dominant Logic(GDL)から SDLの流れを簡単に整理した後、当該過程における価値把握の変化を取り上げる。

Goods Dominant Logic(GDL)からService Dominant Logic(SDL)へ

Vargo and Lusch(2004)は、製品(商品)交換 を中心としたモデルをGDLと呼んだ。
➡これまでのマーケティング概念は、GDLを前提としており、GDLは古典派経済学と関連がある。GDL の世界では、製品が中心を担っている。

一方で、Vargo and Luschは、サービスを中心としたモデルをSDLと呼んだ。
➡SDLは、製品(商品)の交換から得られる効用を解釈するマーケティング・マネジメント に代わる価値創造過程で、新たなマーケティング・モデルを描くことを意図していた。

SDLにおける顧客価値は、供給者と需要者との相互作用によって創造される。
➡SDLは、最終顧客が商品を入手した時点までを想定するのではなく、入手した後の世界も想定している。

GDLとSDLの根本的相違

SDLとGDLの根本的相違は、「サービス」の概念化にある。GDLでは、servicesは生産単位であるが、SDLは別集団の利益のためにcompetence(知識やスキル)を適用することである。

また、SDLは、サービスを協調過程として捉えており、この捉え方をすると、生産者と消費者の区別を超越することになる。さらに、SDLは、すべての社会的経済的な参加者を「資源統合者」と捉えている。
➡これが「価値共創」という概念に繋がる。

「物々交換➡生産者(貨幣)消費者➡生産者〈中間者)消費者」と経済社会が複雑化していくなかで、交換という概念があいまいになっていることがSDLの台頭から見て取れる。

価値把握の変化

これまでの価値は、製品そのものに起因していた。そのため、マーケティング概念は、批判の的になることがしばしばあった。しかし、マーケティング活動を価値の創造活動と捉え直すことで、マーケティング概念の地位が確立されるようになった。

GDLとSDLの価値創造の相違
・価値ドライバー
GDL:交換価値
SDL:利用価値あるいは文脈価値
・価値創造者
GDL:企業
SDL:企業・関係パートナー・顧客
・価値創造過程
GDL:企業は価値を「商品」あるいは「サービス」に記憶させる。価値は属性を強化するか、増やすことに よって「加えられる」
SDL:企業は市場提供物を通じて価値を提案する。顧客は使用を通じて価値創造過程を継続する
・価値の目的
GDL:企業のための財産の増加
SDL:他のサービス(実用的な知識や技術)を通して、適応性、生存性、安寧へのシステムを確立する
・価値の測定
GDL:額面価格(交換において受け取られる価格)の量
SDL:受益システムの適応性と生存性

マーケティング概念はDrucker(1954)において、創始されたといわれる。
➡顧客視点から企業を見始めた第一人者

価値共創概念の台頭

SDLにおける共創価値

SDL が示す価値は、相互作用的過程に おいて、供給者と需要者が共に創造するものである。
➡SDLは過程に注目する。

・SDL のマーケティング研究への貢献
①マーケティングの包括概念の提示を志向
➡製品とサービスを対峙させず、過 程としてサービスを捉え、サービス概念をサービス・マーケティングだけでなく、すべてのマーケティングに適応可能であることを示した
②価値共創における価値を顧客価値と断言したこと
➡価値の創造は、メーカーのみが行うのではなく、顧客との相互作用により、形成されるもの

価値共創を顧客と企業で実現するためには、対話(dialogue)、利用(access)、リスク評価(risk assessment)、 透明性(transparency)の主な要素を通した共創過程に注目する必要が指摘される。

共創経験と消費経験論

・共創経験
価値の基盤は、製品やサービスにない。企業が消費者と経験環境を築き、経験を共創する過程で生成される。
➡企業の管理者は、経験環境と共創経験を促進するために構築したネットワークを管理する必要がある。しかし、顧客の共創経験の深化までは管理することができない。

・消費経験論
消費における経験論は,1980年にACR(Advances in Consumer Research)に掲載されたHolbrook による消費経験論にその萌芽があるとされる。
消費が経験と同意であると指摘されるようになり、消費者の一時の消費(場面)だけではなく、幅広い時間や内容を含んだ経験へと研究対象を拡大したといえる。

結び

交換価値から使用価値への変化がSDLの台頭から見られる。
新しいパラダイムでは、「消費者の集合体」あるいは「製品やサービスを売る場」という市場観を捨てるように迫られるだろう。

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