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研究レポートvol.11.0『ネット上の消費者情報探索とネット・口コミのマーケティング利用』まとめ

今回は、東北大学経済学研究科の澁谷覚さんの論文のまとめになります。ネット・クチコミと対象者となり得る要素が記載されていたので、共有します。

はじめに

近年、クチコミが注目されている大きな二つの理由

・マス広告の効果の低減が指摘され続けているため
・インターネットに膨大な量のクチコミ情報が存在しているため

すくに情報の検索ができる今の時代に、一方的にメッセージを送りつけ、購買を説得することは、難しくなってきている。
本稿では、ネット・クチコミに着目し、一般的なクチコミとネット・クチコミについて整理し、マーケターがどのようにネット・クチコミを利用すべきかを議論する。

従来のクチコミの影響力の源泉

消費者の購買意思決定プロセスにおいて、最終的な購買意思決定の段階が近づけば近づくほど、クチコミ情報が非常に重要な役割を果たしていることが指摘されてきた。(Engal et al.,1969;Day 1971:Bayus, 1985)
従来のクチコミは、発信者の信頼性に基づくものであり、その信頼性が製品に関する情報の信ぴょう性に起因していた。

ネット・クチコミの影響力と特徴

従来のクチコミは、購買者の知人や友人に起因するものであり、交友関係を前提としたパーソナル・コミュニケーション・チャネルによって伝達されるものだったため、重大な限界を伴っていた。➡社会的文脈依存性と呼ぶ。

従来のクチコミのマーケティングの効果は影響力はあるものの、極めて限定的だった。しかし、インターネットが台頭し、クチコミが社会的文脈依存性を克服。情報の信頼性という点が低いものの、網羅性と蓄積性という強みを持っている。

ネット・クチコミにおける発信者の属性情報への関心

ネット・クチコミが持つ匿名性という特徴から消費者は、クチコミの発信元を気にする特徴がある。そのため、企業やマーケターは、ただ単にクチコミ情報を蓄積させるだけではなく、発信者である個人がどのような特徴があるかに注意を図る必要がある。
では、どのような特徴(属性情報)を気にかけ、提供すべきなのか。

ネット・クチコミにおける発信者属性(類似性)

類似性とは、特定のクチコミ情報の発信者がどの程度自分と似ているのかという尺度である。
例えば、物件探しやコスメなどの製品カテゴリーでは、このようなことが顕著に現われる。

ネット・クチコミにおける発信者属性(専門性)

消費者は、自己との類似性を持つ発信者よりも、専門性を持つ者が発信したクチコミを信頼する場合がある。
➡専門性とは、クチコミの発信者がその商品に対して、どの程度の知識や経験を有しているかという尺度である。

複雑性の高い製品や専門性の高いサービスに対しては、類似性よりも専門性を重要視する。

ネット・クチコミにおける発信者属性(中立性)

中立性とは、クチコミの発信者が、製品・サービスの販売に対して利害関係を有していないかどうかということである。もし、発信者がクチコミの利害関係者であると、そのクチコミの効果は著しく低下する。
もし、偽装されていると気づいた場合、非常に厳しい非難にさらされる。

探索属性、経験属性、信頼属性

一般に消費者行動の観点からは、個々の製品やサービスは、複数の異なる属性から構成されると考えられており、それらの属性が、探索属性、経験属性、信頼属性に分類される。

探索属性

探索属性とは、いわゆるスペック情報である。これらは、比較的単純なものである限り、購買前に情報探索が可能であるため、クチコミ情報に頼る必要がない。

経験属性

経験属性とは、製品、サービスを実際に利用してみないと評価できない属性のことを指す。レストランであれば、サービスやお店の雰囲気、ノートパソコンだと、手に持ったときの重量バランスや使用感のようなもの。
これらの属性は、定量化しにくく、感性にかかわるものであるため、その判断には、クチコミ情報が影響力を持つ。
近年、ユーザー経験に訴求するサービスが増えているため、経験属性の重要性はますます高まっている。このようなタイプの製品は、専門性よりも類似性が重要視される。

信頼属性

専門性が高い製品属性のこと、医療や法律などはこの性質が高い。このような製品は、購入し経験しても判断が難しく、信頼するしかないため、「信頼属性」と呼ばれる。
このような製品は、専門性が最も重要であるが、クチコミ情報を蓄積させてもあまり効果は見込めない。このような製品カテゴリーは、経験や知識が豊富な消費者によって発信された情報が有益になる。

おわりに

ネット上にただ単にクチコミ情報を蓄積させるだけでは、効果が薄い。クチコミ情報の発信者のプロフィール情報と発信する製品カテゴリーの組み合わせを意識することでクチコミ情報の効果を増大させることができる。

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