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ハイブリッドなヨーロッパモデル②

今回は、前回の続きになります。ヨーロッパのモデルは、国有企業の繁栄と衰退、以前した豪族による支配のようなもので語ることができます。

1980年代の分水嶺

皮肉にもヨーロッパにおけるM型組織の一般的な採用は、アメリカ企業の競争戦略を再考し、多角化の制度を低くしようとした時期と一致します。多角化の見直しは、コングロマリット戦略を取った企業に当てはまりました。
多角化戦略と複数事業部制戦略はの使用は国によってかなり違いがあるのにもかかわらず、企業の中の優位を占め続けました。
イギリスでは、多角化の戦略は、1990年代に最も顕著に見られます。上位100社のうち三分の二近くの企業が関連分野に多角化しており、24%の企業が非関連分野に多角化していました。ドイツも多角化をしていましたが、U型組織を採用する傾向がありました。フランスでは、職能的な組織構造は使われなくなり、M型組織あるいは程度の低い持株型組織の採用をしていました。イタリアでは、1990年代の民営化の動きのなかで、M型組織が徐々に適応されていきました。

アクティビスト国家

ヨーロッパの主要な企業の所有パターンには、ある種の特徴があります。
それは、同族や金融機関と共に、国家も企業の所有者として直接介入しているという点です。
戦間期の介入主義政策は戦後も続きました。西ヨーロッパのアクティビスト国家は、復興期末に経済介入という大掛かりなプログラムを開始しました。国営金融機関による信用供与、他にも補助金、購入の発注、そして課税控除という政策がとられました。時には、これらの政策が外国資本を引き付け、その国に投資を行わせるように運用されることもありました。
国家の介入は、様々な形で正当化されました。政府の管理下に置かれていたこれらの企業は、近代経済にとって不可欠と見なされた産業ー鉄鋼、エネルギー、遠隔通信、輸送ーで重要な役割を果たしました。ヨーロッパの各政府は、各国の研究開発予算のほぼ50%で資金提供し、技術の進歩で重要な貢献をしました。
こうしたヨーロッパ諸国における国家所有の広がりは、明らかにヨーロッパの大企業はの戦略、行動、そして組織選択にインパクトを与えました。
景気循環対策を追求する手段として、国営企業は自社の競争戦略を社会的目的を折り合わせる方向に向かわなければなりませんでした。同じことが組織構造に関しても言えます。それは権力の集中と時に非常に巨大なコングロマリット経営とをバランスをとらせるよう設定することでした。
このことがほとんどの場合、H型組織の幅広い採用を促します。
ヨーロッパにおける「国家の企業家精神」の存在は、1950年代以降、30年にわたって広まりました。
最終的に国有企業は民営化されますが、この民営化のプロセスは国ごとに異なり、国営企業と他のヨーロッパ企業の戦略、とりわけ組織の所有の構造に異なるインパクトを与えました。いまでも、民営化のプロセスは続いています。
イギリスでは、民営化政策によって、アメリカ型の公開企業が生まれました。企業の支配は、非公式なチャネルと通じて、数十のファンドマネージャーによって行使され、株主総会に対する直接的な影響力を通じて完遂されました。所有と経営のイギリスモデルは、所有権の集中を、経営に対する厳格な支配とか株主価値の最大化の重視を組み合わせたものになりました。
フランスでは、民営化政策が保守政権下で行われる一方で所有と経営のモデルはわずかに変化したのみでした。フランスは「ソフトな」民営化プロセスを辿りました。フランスの狙いは、戦略的な産業と資本集約型産業における外国所有の回避でした。したがって、民営化のプロセスは、経営を安定させ、保護した上で戦略的な意思決定を行うために、金融と産業に精通している信頼できるフランス人投資家(中核株主)を選び、実行されました。
イタリアでは、同族支配を維持するためもとで民営化がすすめられました。

ほとんどのヨーロッパ諸国における民営化に向かう強い流れにもかかわらず、国家は多くの産業で需要な役割を保持しつづけ、会社資産の所有者あるいは管理者としてふるまいました。国家は「黄金株」ー特別扱いされた国家の持株ーで、企業経営に影響を与える時に利用できる特別な権利を付与されているーのような支配強化のメカニズムを使い続けました。

一つのヨーロッパ株式会社

所有と経営を理解することは、戦略と組織構造の動態を説明する上で重要です。株主と主な企業管理者は戦略、組織構造、そして企業の効率性に影響を与え、一国の経済システムにも影響を与えます。ビジネス組織に関する過去の理論は、多角化戦略とは対応しない3つの所有のタイプ、個人、同族、銀行、国家が存在すると主張しました。しかし、現在のヨーロッパはこの理論に異議を唱えているように思えます。
今日のヨーロッパで普及している企業の組織構造は、かなり中央集権的で、個人、銀行、国家による管理が混在しており、これはヨーロッパの多角化戦略と結びついています。
ヨーロッパの経験は二つの事柄を示しています。

・企業の「国籍」が重要な意味を持ち、国によって多角化と複数事業部制は、常に最も効率的な戦略と組織というわけではないということ。
:歴史はヨーロッパの多角化モデルとヨーロッパの経営モデルのはっきりした存在、したがってはっきりと成功した多様なタイプのヨーロッパ企業の存在を裏付けた。

多角化モデルとは、違う成功のモデルとして、小規模でアグレッシブな「企業家企業」の連邦が見られています。
企業の形態において、多くのヨーロッパ的変種が存在します。「ヨーロッパ型大企業」の特異性は、大量生産方式に代わるビジネスシステムが継続されたことにみられます。それは産業集積とローカルな生産システムであり、特定地域の相当多数の小企業が集中しており、それぞれの小企業は生産プロセスの一種の工程に特化しているという特徴があります。この例として、イタリアの衣類の産業集積です。
ヨーロッパのアメリカ化は、アメリカ企業と見た会社を確実に生み出しましたが、ヨーロッパの組織構造を特徴づけていたH型組織の消滅はおこりませんでした。

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