マガジンのカバー画像

好きな記事(詩)1

1,822
感じ入ったもの。 珠玉(主観)
運営しているクリエイター

#自由詩

[すこし詩的なものとして]0094 遠くで聞こえる

[すこし詩的なものとして]0094 遠くで聞こえる

妙に静かで
木の床をコツコツと鳴らしながら
人がひとりひとり吸い込まれていく

吐息と咳払いが響く
季節が到来するように
今年一番の寒気が訪れたらしい
誰もがため息まじるに少しの諦めをもってたたずんでいる

遠くで聞こえる
小気味よい行商の声
甲高い子どもの嘆き
すべては無関心に責任を食いつぶす

恥は忘れられ
恥は君らに追いつけない
そうやってあいまいに
ただ笑って不敵に生き続ける
他者を踏みつ

もっとみる
詩『獣』

詩『獣』

自分たちは知恵を持つ獣だから、と思い込み、
ほかの獣たちとは線引きをしているけれども、
そのあわいにあるのは思いあがりと哀しみだ。

廃棄をするほど殺している。
根絶やしにするほど殺している。
自死をするほど殺している。

繁栄の道を違えてきたわたしたちは、
もはや獣の風上にも置けない存在として、
人間という生きものでいるしかないんだろう。

肥大したり千切れたりするコミュニティで、
歌をうたうよ

もっとみる

恋慕

花の命は風が吹いた
満月に叢雲かかる頃
紺色の空の下にては
愛する人を呼ばうべき
白月色に照らされ君と桜は
こうも美しく咲くべきや
嗚呼、僕には干渉できない
花と命の円舞曲
愛したいこの心を赦しておくれ
可憐な踊りに胸を打たれて

終末

天使が海に墜ちて来る頃
僕らは空の水に落ちて行く
光に満たされて颯爽と空色
情緒の色、心色
その深さは留まることを知らず
こんなにも清々しく明るいのに
神の昏睡に貶められて
情緒の世界に溶かされていく
そのとき僕らは全てを分かり
論理の檻から解き放たれる

空想世界に生きている

空想世界に生きている

愛しい僕の心臓を、この手で握りつぶした
美しさとか何とか
僕に取り込まれる栄養でしかない

静寂に狂わされている
騒音に生かされている
そんな事実は知りたくなかった

全ては説明できてしまう
そのうち纏まって本屋に並ぶ

空白に耐えられないから
夢、ゆめ、夢

聞こえない声が聞こえる
誰かが僕を犯している
僕が罪を犯している音がする
ナイフを突き立てたくせに
被害者ヅラして血を見て泣いて吐いている

もっとみる
流砂

流砂

貴方が踏み行くこの地に吹くは
貴方を讃え煌めく 砂粒

王は行く 果てなき旅路
足跡は やがてかき消されても
忘れえぬ残像

風に流れゆく姿 麗しく

貴方が踏み行くこの地を這うは
貴方を運んでいく 流砂

王は行く 果てなき旅路
歌声は やがてかき消されても
忘れえぬ囁き

夜に霞みゆく姿 美しく

崇拝者は 跪き祈る
煌めく闇を持つ王の 永遠の栄華を
崇拝者は 跪き誓

もっとみる
【詩】 アイ

【詩】 アイ

アイ

愛でも
藍でもなく
合い

私に会うまで日本語を
知らなかった連れ合いの
一番好きな日本語のことば

私たちのつくる空間
私たちの子どもら
私たちの文化

ハーフでも
ミックスでも
いわんや あいのこでもなく

アイ

かけあわされて
まじりあって
両方あって

ほんとは誰でもアイなんだけど
どの子もアイなんだけど
メスのだれかとオスのだれかの

アイ

そんな言い方 だれもしない
日本語

もっとみる
ちからをかして

ちからをかして

あなたはいてくれるだけでいい

それだけで
ちからをかしてくれる

垣根越しにあなたと目があったとき
あなたの向こうに
大きな大きな世界がみえた

光にあふれたあたたかな世界

わたしはそこになじみたいと思った

あなたのなかに溶け込んで
大きな世界とひとつになろう

あなたはわたしの死でありいのち
かけがえのないひとつのひかり

いつかつよいちからにあなたが倒れ
なにもできなくなる日がくるとして

もっとみる
[すこし詩的なものとして]0077 時は風のようにはこびゆく

[すこし詩的なものとして]0077 時は風のようにはこびゆく

鼻をやさしくつつむ香り
人の心のなつかしさを
ふんわりと
ほこりの残像とともに
巡らせる

なつかしむ
なつかしむ

それは記憶の引き出しを引く動作
開けてもそこは空かも知れない
重みのない
カタカタとした
その芯中は
手ですくう光源の厚みを
秘めているような気がした

感情を細分化し
笑顔と悲顔のバランスが
うまく取れなかった
雨の夕べ

息を飲むと
そこはやさしさと厳しさの
はざまであった

もっとみる
[すこし詩的なものとして]0076 弱いと思った

[すこし詩的なものとして]0076 弱いと思った

自分は弱いと思った
それはいつものことだった
ただただ自分が弱いのだと
四六時中思っていた

自分は強いと思った
節々の場面において
案外自分は強いのだと
なんとなく思っていた

ある日
自分は弱いのか強いのか
争わせてみた

結果は当然
弱かった
弱いは
圧倒的に強かった

それを忘れてはいけない
弱さは圧倒的に強いのだ
弱さはことごとく
わたしを
あなたを
悲しませる

忘れてはいけない
弱さ

もっとみる
水平線の詩

水平線の詩

心の底に投げ込んだ

記憶が

好きだよ、だなんて

こだまして

残響がすっかり

消え去った後に

誰にも見えない

雫が

歪んだ

水平線から夏を呼ぶ

短文ー屑籠ー

短文ー屑籠ー

吐きそうになりながら
食べるご飯の味は最高に美味い
味噌汁いっぱいだって
極上のフルコース

豪華なディナーの時間だ
極上の不純物を召し上がれ
ナイフとフォークは外側から
予定調和の御膳
決まりきったことだろう

生きてるだけで金がかかるなら
なんのために生きているのか
そんなありきたりな文句
飲み込んでしまえよ

楽になんてさせないよ

Fish Tank

Fish Tank

ただれる日常 慈しむ
不幸せが 鋭く一条 射しこんで

全てを 歪めた匣に沈めて
眺めるしかない
ここしか知らないの 愛していると言い聞かせ
水面揺らす指先を見上げ

ただれた日常 撫でまわす
不幸せが 鋭く一条 影落とし

全てが 歪んだ鏡の現し世
愛するしかない
ここしか知らないの 逃げ出すことなど許されず
水面よぎる エナメルの光 追う

けがれた日常

もっとみる
ray

ray

あなたに会いたくて
生まれてきました

光に身体をまとって遥々

はじめて名前を名乗りあったとき
はじめて名前を呼んだとき
はじめて瞳で語りあったとき
はじめて手の温もりにふれたとき
はじめて限りある時間に泣いたとき

人間であることの恥ずかしさと悲しみ
そしてそのすばらしさを想った

あなたがいなくなってもわたしは
なにも変わらず生きていくでしょう

それでもわたしは
あなたに会いたくて

息を

もっとみる