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2021年6月の記事一覧

季重ね

季重ね

晩春のころと
初夏のころ

ふたつの季節が重なって

たんぽぽが
綿毛になったとき

初夏の風が吹き

綿毛と一緒に
春をさらっていくんだよ

れんげの花が咲く上を
綿毛が飛んでゆく空へと

来る夏は
みんな見てるけど

去る春は
誰も見ていない

それが悲しいから

私は綿毛のゆく空を
見ていようと思う

夢花びら

夢花びら

静かな月夜
川辺の花が

風に揺られて
散りました

花びらたちは
光る水面に浮かび

星空に見守られ
遠くの国へ

流れてゆきます

きれいな幸せのある
あの国へ

その向こうの
遥かな国へと導かれ

花びらたちは
無垢な命に清められ

静かな光になる

初夏の夜
月の夜に舞う

夢うつつな蛍は
いつかの花びらたち

谷の朝

谷の朝

渓谷の中
静かな石の上に
座って

森の声が来るのを
待っている

小さな喜びに
生きたい
生きていることを
感じたい

翔ける風
運んでくるその声に
命は喜ぶ

石の上の静かな私

いま森とともに
呼吸している

吼えろ

吼えろ

一方通行どん詰まり
ゴミの散乱腐敗臭
何度も擦れた縁石の
脇には黒い水溜り

ガードレールのカイサリオン
電信柱のランドルフ
道路標識スラワルディ
三羽のカラスが出迎える

汚れと放置の景観に
迎合しない美しさ
青味がかった手を広げ
先を急げと他人事

質疑応答省略し
各々景色に舞い戻り
動けぬ僕を睨みつけ
口も開けずにこう言った

吼えろ

詩)何処から産まれた

詩)何処から産まれた

誰にも見せずに抱きしめたもの
抱きしめているのか
へばりついているのか

黒い塊は
ドロドロとした何かを垂らしながら
そこに居座る
触れて欲しいような
触られたら弾けるような
優しく見守るように
撫でるようにそっと触れては
表情を曇らせる

失くしたいはずの塊
愛おしいわけではない
醜くい物だと思いつつも
常に私の中にある

私が産んだ塊なのか
塊から私が作られたのか
今となってはわからない

C

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詩 みちづれ

詩 みちづれ

みちづれ

古傷がずっと疼くように
心のうちに留まりつづける

高山の残雪のように
融けることなく

瞳の奥底に堆積したものが
太古の死骸の
圧し潰され石となるように
心に硬く床を敷く

重く足枷となったそれは
後戻りできぬと告げる

かくなる重荷を背負いて
私は何処へ行こう

旅は続く
古傷を抱えたまま
私は行く

自由に奔放には行けない
それでも行くべき処へ

過去の全てが今を今たらしめるのだ

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詩 うみがめ

詩 うみがめ

「うみがめ」

波にさらわれる予感に
確信を持った
私は手放して行かねばならない

淡い期待も
ここにしかない可能性も
愛するふるさとにある全て

持っていけるのは
この身一つ
染みついて落とせない
愛情と記憶

この海から生まれ
砂浜に抱かれ
ああ、うみがめの仔は
大海原に帰って行く

波にさらわれる予感に
確信を持った
私は空を飛ぶ鳥にはなれない

淡い後悔も
今手にできた可能性も
羨望や嫉妬

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変化

世界は
不思議に満ちている

立場の違いも
異なる感性も
意見の相違も
貴方とわたしの
歩む道のりにも

違う何かが
見つかるほどに

世界は
七色に煌めいて

歓喜の渦も
沁みる悲しみも
共振する怒りも
アイの発露も

心へ届き
奮い沁みるほど

世界は少しずつ
姿を変えていく

色も音も形も心も

異なる姿を
見つけるたびに
わたしの世界は
広がっていくの

違いが世界を
不思議に彩り
わたし

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感応

感応

大きな大きな
宇宙になって

その流れの中に
あなたを包む

ああ!
わたしはこんな風にして
愛したかったのだ

だから生まれてきた

大きな大きな
宇宙になって

その流れの中に
あなたを包む

ああ!

もっともっと
その心に感応したい

愛する力がほしい

言葉に添える写真を探してフォルダを眺めていたら、春先に出会った小花に目が留まりました。

あら。
これは、ヒメジョオンかしら。

昨日ご

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はるかな自由を 生きるために

はるかな自由を 生きるために

☆photopos-2486  2021.6.28

自然がまだ
かつての
自然だったころには
もう戻れはしない

だから自然は
自然を超えて
まだ見ぬはるかな姿へと
変容していかなければならない

ロゴスがまだ
ロゴスでない
ピュシスであったころには
もう戻れはしない

だからロゴスは
ロゴスを超えて
まだ見ぬはるかな時空を
生み出さなければならない

わたしがまだ
わたしでない
わたしだったこ

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「君の望む通りの光と闇」

「君の望む通りの光と闇」

君の望む通りの

光と闇

どこかに境界線

探してる

やわらかく

あいまいに

神は死んだと言ったニーチェは

精神錯乱のまま没した

ガリレオは地球は太陽の周囲を公転すると言って断罪された

ブルーノは天動説を主張して処刑された

コペルニクスはセーフだった

プラトンはイデア界(完全な真理の世界)に真理があると言った

現実世界はイデアの影であると言った

君の望む通りの

光と闇

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或る夏の記憶

或る夏の記憶

透明な風に吹かれ
少年はひとり丘の上に立っていた

たったひとつのものしか持たない 
孤独の飼育係
そのひとつさえ油断したらすぐに
風に連れ去られてしまう

空っぽになれない心を宿す
不均衡でちぐはぐな身体

持て余すほどの熱量だけが彼の意識に充満し
何事かを証明しようと浅い眠りの邪魔をする

真夜中と朝の間に広がる
確かな空の色さえ否定した日々
縁取りの無い少年の青春を 
妖しい色彩が明け暮れる

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真夏日

真夏日

風が止んだ世界で
獣になっている
その異質さが酷く美しい

記号や方程式じゃなく
君の心音が知りたい

心に染まった
奥の奥、そこにある
歪んだ音が聞きたい
滝のような情熱を

空気が太陽に吸い込まれ無色透明
それと僕は混じり合えなかった
零れ落ちる豊かさは
僕の体温を奪っていく
木々が鳴らす不可解は
弦楽器のようだ
吹き飛ばせた透明な無限を思い出す
こびりついて離れない夢の夢

外側

外側

ヘイヘイ
そいつは嘘っぱちだ
ヘイヘイ
そいつは信じない
奴らは獣に毛が生えたスポンジ
知覚が錆びついてやがるのさ
もう二度と会うことはない
だから見逃してくれよ
あんたは充分俺を抑制したんだ
来る日も来る日も
絶妙で緻密なフィロソフィー・デイズ
もう疲れちまったよ
周りと比較したくもなるよ
神様あなたはどこまで俺を試すのか
俺の資金石と神通力は本物なのに
早く重りを取り外してくれないか
幸せなん

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