現代ならば、仕事のほかに趣味を持つとよい、というのでしょうが、本節では「趣味を持って事物を処するというのは、わが心から持ち出して、この仕事はかくしてみたい、こうやってみたい、こうなったから、これをこうやったならば、こうなるであろうというように、種々(いろいろ)の理想欲望をそこに加えてやって行く」とある。
要は、全くロボットのようにマニュアルに従ってのみ仕事をするのではなんの発展もありえないし、仕事を自分ごととして行わないならば仕事の達成に責任も工夫も成長もなく、よい仕事は行えないだろう、といった意味合いかと思われます。
最近知り合いになった先輩に、昔料理の修行をして板前をやっていたのだけど、料理があまりにも好きなので嫌な客に食事を出すのが嫌なので板前をやめたという方がいる。
この方の言い分もよくわかるし、趣味を仕事にすると趣味が嫌いになってしまうのでよくない、とよく言います。ただ、この先輩は大好きな趣味を仕事にできなかったけれど、楽しく今の仕事をされている。個人事業で客商売なので、コロナで厳しい情勢の中、工夫しながら事業継続をされていて、とても柔軟な経営をなされている。
ここでいう仕事にも趣味が大切というのは、いままでのやり方に固執することなく、自分ごととして常に自由な発想で工夫するようにしようというような意味で、まったくそのとおりだと思います。