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幸せになりたい理由が我儘すぎて

 いったいどうすれば私は幸せになれるのだろうか。
 結婚?出産?担当した作品の大ヒット?
 そんなもの一過性に過ぎないじゃないか。成功した後にはまた苦難と葛藤が待っている。そんなこと誰でも知ってるじゃないか。何なら今だって、幸福と受難の繰り返しを生きているじゃないか、何がそんなに不満なんだ。

 でも、幸せですか?と聞かれればyesに丸は付けないし、だからと言って不幸ですとも言い難いし、欲張りと言われればそれまでだし、とはいえひとつの夢をかなえてしまって宙ぶらりんの状態である事には違いないし、ひとまず幸せでも不幸せでもないのだろう、普通だ。
 普通という言葉が嫌いだけど、普通としか言いようがない。正直未来ある若者であるうちに死にたい気持ちは消えないし、そんなささやかな絶望が私の日常に幸せを見つける感度を高めているのは事実だし、やっぱり30歳くらいで死にたいのが本音だけど、そんなこと言って人に心配されたい気持ちもゼロじゃない。
 ただどうしても孤独と劣等感と社会に耐える努力をあと60年も続ける気力がない。そんなに長生きしたくない。

 大人になるほど感受性はさび付くらしいし、ただでさえ認知症初期みたいな症状が日常みたいな生活を送ってるのに、これが年取っちゃったらどうなるんだろうとか、最近キレ易くなってきた自分への恐怖とか、年を取ることにネガティブな事しか言わない両親を見てると将来に希望なんて抱けない。
 そんな中を共に生き抜く伴侶は今のところできる可能性は微レ存、苦しいなあと思う。このままきっと私は好きな人に好きになってもらえないだろうし、好きになってもらうための努力も実らず、好きになってくれた人を好きになる努力も空回り、寂しい寂しいと言いながら生きていくのかな。友達にすがってしまうのかなあ。
 みっともないなあ、そんな自分にはなりたくないなあ。子供の泣き声にクレームつける血も涙もない大人になっちゃうのかな。育休申請した後輩に心の中で毒づくお局になっちゃうのかな。だからと言ってそう思う自分を仕方がない、と諦められるだけの決断力もないんだよね。

 私は、人に優しい自分でいるために、優しく在れるための条件をそろえたいんだなあ。伴侶がいる人に嫉妬したくないから伴侶が欲しい。子供にイライラしたくないから子供が欲しい。

 当事者にならないと、優しく在れないくらいには自己中心的なので、自己中でも人に優しくできる、自分が許せる人間でありたい、ただそれだけなんだよな。誰かに必要とされたいんだよな。家族という盲目的に評価を下しがちな関係性ではない、私という人間性だけでつながってる関係各所に、必要とされたい、いて欲しい、そう思われたいだけなんですね。気づいてしまった、私ってクソだなぁ。

 こう思う原因の一つに、どんなに深い悲しみもいつか癒えるし、家族になれない限り忌引にはならない、友人は家族に勝てない、という考え方が根底にある。
 どんなに仲が良かろうと、失ってしまった時に忌引はできない。そして悲しみは一時的で、きっと、どうにか生きることはできるし、いくらでも代わりはいるんだろうと思っている。人間関係が移り変わるのと同じように悲しみは少しずつ薄れて、家族でもない限りいつか忘れてしまうんだろうな。それがむしろ人間の強さなんだろな。
 多分、人間が一人いなくなったところで、家族以外は10年もすれば忘れてしまうんだろう。それは嫌だなあ、でも世の中そんなもんだろうな、と切なくなる。

 私は祖父母のなかで死別した人とはそこまで深くかかわることができなかったから、大事な人を喪うという経験がないのだけど、それでも誰かの死というのはショックで悲しいもので、ニュースで聞くだけで胸の奥が重く暗く渦を巻くものだ。だから、少なくとも私がその暗雲を人に与えないように、私は生きるしかないんだ。頑張るしかないんだ、それだけのために、私は今日も死なないという選択をしてるんだよ。偉いなあ。暗いね。

 油断するとそんなことばかり考えてしまうせいか睡眠時間が一日の半分を占めているし、どうにか助かりたくて友達と話をする事で息ができている。なんだかんだ私の体は生きたがっている。

 この世に、誰かひとり、この作品に救われたんです。っていう一言がもらえるまでは死ねない。あなたが生きててよかった、って言ってもらえるまで、私の命はまだ役に立てていないから、頑張らなくちゃ。
 そうじゃないと、見つけてもらえないから、見てもらえないから、認めてもらえないから。認められたきゃ認められるまでやるしかない。ほめてくれない人ばっかりだ世の中。そんなもんだ、私だってあんまりひとを褒めない。みんなそうなんだろう。
 だけど時々、褒めてくれる人が存在して、そんな時にきっと生きててよかったって思うんだろうな。その瞬間に出会うまでは、強く在ろうと思う。頑張ろうね。

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