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ジャン=リュック・ナンシー(1940/7/26 - 2021/8/23)

 ブランショに導かれて「無為の共同体」を読みました。明かしえぬ共同体を読んでいたからこそやっと歯がたった気がしました。多岐にわたる仕事に多数の著書、共著も多いのも特徴的だと思います。
 「他」人と共にあろうとする姿勢が一貫しているイメージです。あまりの仕事量の多さにとても全部にはとてもとても。手が届くところだけ。
 映画出演しています。2002年クレール・ドニ監督“Ver Nancy “、10ミニッツ・オールダーの一編です。地名のナンシーに向かう列車の車中外国人留学生と対話する。対話中フランス社会に「侵入」という言葉が使われる。「異邦人」に対する寛容について、またただ同化するのではなく、その独自性を残してという様な言葉が交わされる。最後もう一人の「異邦人」が「侵入」して終わる。
 実は1991年にナンシーは心臓移植手術を受けている。それを踏まえ2000年に“L’intrus”(邦訳あり「侵入者」)
という論考を上梓しており、それを踏まえた作品です。自分の中心に「他」者が居る状況を考え抜こうとしている。
 晩年にはCOVID-19についての論考もあり、常に同時代に対応しようとする誠実さ。

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