朗読脚本「春夏秋冬」

季節が巡り巡ってまた新しい季節がやってくる。
僕は新しい季節がやってくると思い出す・・・。

「桜が咲いたよ」
と、君はそうつぶやいた。
例年より早い開花予想の桜は見慣れた坂道をピンク色に染めていた。
少しでも長く君と一緒に居たくて
僕はわざと遠回りをして帰った。
桜が咲いているのが嬉しいのか
君はずっとはしゃいでいた。
君の笑顔がまぶしくて僕は顔を見れなかった。
この胸に抱えた想いをうまく伝えられなかった。
二人で桜並木を歩いたのは大切な思い出。

見慣れた桜の坂道を歩いていく。
思い出が色々降ってきた。
桜並木を一人で歩くと桜吹雪が悲しげに僕を包んでいた

「ひまわりこんなにたくさん咲いてるよ!!」
と、君ははしゃぎながらいった。
僕はひまわりを見るフリをして君を見ていた。
眩しくてキレイで真っすぐな君はひまわりのような人だった。
僕は君の太陽になりたいな。
でもこの想いはまだ伝えていない。
君の笑顔を見ていると
ずっとそばにいたいと思った。

僕はふと思う。
君がいる世界はどんな色をしていたのだろう。
大きいひまわりを見ながら僕は思い出した。

「ねぇ・・・・見て・・・紅葉すごいよ・・・。」
と、君は僕を見ながら言った。
僕は目をそらしながら紅葉を見た。
紅葉で紅く染まる道はまるでじゅうたんのようだった。
僕たちは二人でその道を歩いていた。
もう少しで君と一緒に入れなくなる・・・。
この気持ちを伝えようか迷っていた。
落ち葉のようにこの想いも・・・。

僕は紅葉を見ると少し寂しい気持ちになる。
もうすぐ冬が来るから。

「雪だね・・・。」
と、ボソッとつぶやいた。
白い息を吐きながら雪降る道を歩いていく。
君と僕の距離は少し離れていた。
手を繋ぎたかった。
君の温もりを知りたかった。
そしてまた新しい季節がくる。

春が来て、夏が来て、秋が来て、冬が来て
そしてまた春が来る。
僕は何回、何十回季節を巡っただろう。
此処にいない君を想う。
ありがとうもさようならも
会いたいも愛しいも
嬉しいも寂しいも
もうこの気持ちを想うことができない。
そしてこの想いも少しづつ消えていく。
思い出も薄れていく。
そしてまた季節が巡っていく。

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