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内内助の功

 史上稀に見る短い夏休み。子どもたちはどのように過ごしているのだろうか。こう見えて私は某野球部の顧問の末席に名を連ねている。ただし、いちおう女性なので、ノックやキャッチボールはしない。マネージャーの子たちとお喋りするのがもっぱらの仕事である。
 万年文化部に所属し、太陽に背を向けて日陰でゆるゆる過ごしていた自分のリアル女子高生時代を思い出せば、今、目の前にいるマネージャーの子たちから、「こういう青春もあったのか」と勉強させてもらっている。
 しかし彼女らはまず休まない。寸暇を惜しんでドリンクを作り、道具のメンテナンスをし、ノックの球出しのサポートをし、氷を作り、とにかく選手のサポートとなることはすべてやる。寸暇があれば喜んで休憩したい派の私とは、信じがたい。顔は日焼けでもう真っ黒。休日でも朝から夕方まで何の疑問も持たずに働く。「疲れない?」と聞いたら怒られそうだから聞かないが、いつも疑問に思っている。だってサポート役は表には出ない。たとえ甲子園に出場できたとして、マネージャーの存在が球児より先に取り沙汰されるのを見たことがない。「やってくれて当たり前」の仕事である。たとえていうなら主婦の家事労働のようなイメージ。内助の功の素晴らしさは「利家とまつ」ですでにお腹いっぱいなのだが、疑問に思うのは、彼女らは進んでその役割を買って出ているということ。部活動加入は任意である。そして他にも自分が「主役」になれる部活動は存在する。そのなかで彼女らは敢えて野球部マネージャーを選び、今日も夏休みを返上し、球児にノックする監督にひたすら球出しを続ける。
 野球が好きとか嫌いとかいう前に、そんなことばかりずっと疑問に思っているのだが、思っている間に、短すぎる夏も終焉を迎えようとしている。せめて来年の彼女らの見る夏景色が、今年のような酷暑でなければいい。そして彼女らができるだけ笑顔で毎日過ごせるよう、サポートする。それが私の「内内助の功」である。



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