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独学で大学受験 39 サクラチル

2022年3月9日、神戸大学の合格発表の日が来た。第一子の感触では五分五分ではないかと思われた。第一子が報告に来た。「あかんかった」

前年、京大を落ちたときは、試験当日にすでに合格不可能であることを確信していたので、合格発表を見ても、感情が動かされなかったようだ。

今年は違う。合格しようと頑張り、合格を期待した分、ショックがある。不合格なら、3日後には三重大学後期試験を受けることになるので、すぐに気持ちを切り替えなければならない。でも、第一子は落ち込んだ。

「三重大学を受けるの、やめるか?」と聞くと、「そんなわけはない」と言う。「なら、気持ちを切り替えよう」

難関国立大学はおおむね競争率が2倍を超えるので、合格者より不合格者の方が多い。不合格はふつうのできごとだ。受験は受験でしかない。人生の有り様は無限に多様だ。1つの道がうまくいかなくても、別の道をいくらでも選びうる。

第一子もその辺は理解できるので、三重大学後期試験受験に向き合った。もともと三重大学についてもじっくり調べて、素晴らしい大学だと了解していたので、切替はすぐにできたようだ。

翌、3月10日は京都大学の合格発表だ。高校の勉強を始めて1年半の第二子が通るはずなどないのだが、本人は通るつもりでいる。第二子が報告してきた。「ダメでした」と悔しくて泣いている。合格するはずないと親が達観していても、本人は心底がんばったんだ。来年につながるぞ。

その日の夜、第二子はここから1年間のスケジュールを考えて、私に見せに来た。高校生の勉強は1年半でだいたい習得できたが、基礎の足りない部分を今後半年で徹底して補い、夏以降は受験対策へもっていく。なすべきことをよく考えている。ごくささいな微調整を提案したが、おおむねこれでよいだろう。すぐに気持ちを切り替えて1年後をめざし再スタートを切ったのは、とても良い。

翌、3月11日、近くの駅まで第一子を車で送り、1人で電車でホテルへ移動した。予定していた電車が線路沿いの火災のため不通となっていたが、別の路線をつかってあまり遅れずにホテルに到着した。大きく遅れると試験会場の下見ができなくなってしまう。ぶじに下見ができた。トラブルにも迅速な対応ができた。

受験の宿泊は5回目となる。いよいよ今度こそ、これで最後となる(なってほしい)。

翌、12日、三重大学人文学部後期試験。落ち着いて、普段通りのことができたようだ。とはいっても、ものすごく志願者が増えて倍率があがったし、当日、会場にも多くの受験生がいたそうだ。前期日程で合格した人は後期日程を受験しないのだが、後期日程の受験生がとても多かったと第一子は言う。

配点は、共通テストが個別試験より大きいので、共通テストでやらかした第一子は不利になる。競争率が上がれば、共通テストも個別試験も合格ラインが上がるだろう。合格は危ないかも知れない。

合格発表は3月22日。10日後だ。合格していれば、その後の手続きが忙しい。発表までの間、合格後の手続きについて調べた。アパートや寮についても調べた。三重大学は津市の海岸付近にあり、東南海地震が起きればまともに影響を受けるだろう。ハザードマップを見ると、大学付近が真っ赤だ。大学のWebサイトにも、防災に関する情報が詳しい。ハザードマップの白いエリアでアパートを探したいが、学生用の物件がほとんどない。そのなかで、アパートを2件、みつけた。大学まで1kmあまりで、自転車があれば問題なさそう。それにしても、大阪や京都と比べると津市は家賃が安い。びっくりするぐらい。

もし不合格だったら、どうするか。これも考えておかないといけない。

第一子の考えを聞いた。「ここまで頑張ってきて、大学に行かない道はない。もう1年がんばりたい」とのこと。そうだろう。

わが家は、小中高に1日も通わず、塾も家庭教師もなく、誰からも勉強を教えてもらうことなく、完全独学でやってきた。インターネット上のツールも勉強では使っていない。参考書をつかって、地道に独学をしてきた。そして、国立大学に手が届こうとしている。未知の世界だろう。さらにその後の就職となると、さらに未知の世界だろう。就職を考えると年齢がネックになると思う。第一子は高卒2年目で初受験。今年は1浪だが、3浪相当の年齢だ。もう一年となると、4浪相当の年齢となり、卒業時に26歳だ。

私の知人数人に相談すると、みな、同じ意見だった。年齢は関係ない。何歳で卒業してもふつうに就職できる。何年浪人しても良いではないか。それよりも受験に全力を尽くした方が良い、とのこと。

それ、本人もしんどいけど、親もしんどいんだよなあ。言ってることはわかるんだけど。

第一子は前年、1回目の共通テストをうけたとき、もう二度と受けたくないって言っていた。でも、今年2回目を受けた。これで最後だって言っていた。もう1年やるなんて、気力が持たないとも。

本人がさらにもう1年と覚悟するなら、親も覚悟せねばなるまい。あーしんど。通ってほしいなあ。第二子、第三子、第四子と、あとが3人つかえているしなあ。

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